2019年10月17日 第42号

 日系コミュニティに貢献した人々や団体に贈られる日系プレース・コミュニティアワードの授賞式が10月12日、ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市の日系文化センター・博物館で開催された。

 

日系人強制収容75周年記念表示プロジェクトに尽力した実行委員会メンバー

 

 第9回となる今年は、ジャパニーズ・カナディアン・ヒストリー&プリザベーション・アワードに日系人強制収容75周年記念表示プロジェクト実行委員会、アウトスタンディング・コミュニティ・サービス・アワードにフランク・カミヤさん、ジャパニーズ・カルチャー・アワードに日系ブックセール委員会が輝いた。

 日系文化センター・博物館ハーブ・オノ理事長は、「ファンファーレや役割への評価を期待することなくコミュニティのために尽力してくれた人々にここで改めて感謝したいと思います」とあいさつ。日系のレガシーを後世へとつないでいくために、派手ではないが、しっかりと未来を見据えた地道な努力をしてくれたことに感謝の言葉を述べた。

 また今年がバンクーバー朝日の初優勝から100周年の記念の年となることから「バンクーバー朝日の強さと復活の精神を称えて」を今年のテーマとし、改めてバンクーバー朝日の功績と貢献を称えた。この日は元朝日選手の上西ケイさんも出席した。

 その他にも羽鳥隆在バンクーバー日本国総領事、バーナビー市マイク・ハーレー市長、地元ブリティッシュ・コロンビア州議会議員ほか250人が出席し、受賞者を祝福した。

 会の始めには長く日系社会に貢献し今年他界したゴードン門田さん、元日系文化センター林光夫会長夫人の恵美子さんを偲んで黙とうをささげた。また会の後半にはチャリティオークションが行われた。

 

◆日系コミュニティ一大プロジェクト「日系人強制収容75周年記念表示プロジェクト」を成功に導いた実行委員会が受賞

 日系人強制収容75周年記念表示プロジェクトは、2017年が日系人強制移動から75周年だったことを機に、強制収容の事実を伝える記念表示板を元収容所6カ所とロードキャンプ3カ所に設置。2017年10月27日タシメ(現サンシャインバレー)での設置を第1回とし、2018年9月28日、ロードキャンプ跡地のレベルストーク・シカモスに設置して完結した。

 この一大プロジェクトを成功に導いたのが実行委員会。ローラ・サイモト委員長の下、日系コミュニティ各団体、設置場所の現地コミュニティ、BC州政府運輸・インフラ省などが協力して実現した。

 始まりは2016年。当時のBC州自由党政権による日系人歴史遺産登録事業をきっかけに実行委員会が記念表示板設置プロジェクトへと発展させ、政権が新民主党(NDP)に交代しても引き継がれ完結した。

 あいさつしたサイモトさんは、「ウェブサイトでの登録だけではなく、この場所に間違いなく収容所があったという形のあるものを後世に残したかった」と語った。それは日系の人々が理不尽に受けた差別により苦労を強いられた日系一世、二世の歴史だと言う。彼らの苦労と努力がなければ今の日系社会はなく、そうした努力に報い、自分たちが将来同じような過ちを起こさないためにも、それを示す記念になるものを残す必要があったと強調した。

 プロジェクトが終わって1年が経った。表示板を見た人々からは「かなりいい反応を得ています」と笑顔を見せる。

 日系コミュニティからはこれを機に強制収容時代の話ができるようになったという声も聞くし、設置場所となったコミュニティからは表示板を積極的に利用しているという話も聞くと話す。「それこそが私たちの願い。二度と同じようなことがどのコミュニティにも起こってはならないという教訓として語り継いでいってもらいたい」と語った。

 プロジェクトで紹介された各収容所の物語は1冊の本になっている。日系博物館売店で販売されている。今後は、リルエットに増設した庭園を日本庭園らしくする計画やタシメ博物館の充実など、日系の遺産を伝えるためのプロジェクトはまだまだ各地で続いていると笑った。

 

◆日系博物館創設当初から尽力する建築家フランク・カミヤさん 〜アウトスタンディング・コミュニティ・サービス・アワード〜

 カミヤさんは、受賞について「すごく光栄です」と語った。1986年にバンクーバーで開催されたエキスポ86での日本パビリオンをはじめ、ロバート・ニイミ・日系ホーム、日系博物館、日系ワーメモリアルなど、日系社会の中でその時代に必要とされる活動に関わり、委員長や理事を務め貢献してきた功績に対して賞が贈られた。

 特に日系博物館には思い入れが深いという。関わったのは1980年代、日系歴史保存委員会の時から。場所も現在と違い、狭いスペースしかなかった頃から日系の歴史的に貴重な資料などを保存する活動にたずさわってきた。そして今年6月、博物館はスペースを拡大しリニューアルオープン。「この博物館は、誰のものでもないコミュニティみんなの博物館。それがすごく重要で誇らしい」と語る。

 まだまだ大きくしたいというビジョンもアイデアもあるという。そして、この博物館を訪れた自分の子供や孫たちが、「私が1953年の日本語学校の写真に自分を見つけて喜んだように、自分たちの歴史を見つけてほしいと願っています」と語った。

 

◆日本文化を継承するジャパニーズ・カルチャー・アワードに、日本語古本市を支える日系ブックセール委員会

 日本語の書籍を販売する店舗がバンクーバーからどんどん姿を消す中、古本市・古本屋の役割はますます大きくなっている。

 日系センターで定期的に開催されている日本語古本市は約2万5千冊を扱うバンクーバーで最大規模を誇る。その古本市をボランティアで支えているのが日系ブックセール委員会。

 授賞式に参加した小笠原行秀さんは「びっくりしたね」と感想を語った。元船乗りで体に染みついた整理整頓が好きなだけなのだと笑う。きっかけは2015年4月の古本市で、もう少し本を整理してもらえないかと掛け合ったことだったと振り返った。しかし「人手がない。だれかやってくれませんか」という返事。そこで自分がすることになった。同年の4月29日。もう4年半が経つ。「やってみると気持ちがよくてね」と笑った。それから仲間に声を掛けた。

 それに応じたのが一緒に表彰式に参加した猪腰洋三さん。「小笠原さんに頼まれたから」と始めて約3年になるという。「先輩がやっているのに若い自分が何にもしないのは」というのが理由。猪腰さんは日系プレースで毎月1回「名のない歌声喫茶」を開催している。こちらはバンクーバーのシニアのためだが、「本の整理は自分のため」と言う。

 次回の古本市は10月25日(金)、26日(土)。小笠原さんは、古本市のためのボランティアを募集中で、10月17日(木)から18日(金)、22日(火)から24日(木)の午後1時から5時まで、興味がある人はぜひ連絡してほしいと呼び掛けた。連絡先は 604-298-9181。

 本が好きで整理していると一番に読みたい本が見つけられるのが特権だと笑う小笠原さん。良質な書物が安く購入できるこの古本市をぜひ利用してほしいと語った。

(取材 三島直美)

 

あいさつのあと記念の盾を手に、実行委員長サイモトさん(左)とリードさん

 

アウトスタンディング・コミュニティ・サービス・アワードを受賞したカミヤさん

 

左から、盾を手渡したオノ理事長、日系ブックセール委員会の小笠原さん、猪腰さん、エリ・コヤマさん

 

開会に華を添えたチビ太鼓

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。