2019年10月10日 第41号

10月4日、バンクーバー市のピンク・パール・チャイニーズ・レストランで、隣組の設立45周年を祝う祝賀会が開催された。会員やその家族ら約170人が出席、おいしい食事を囲みながら歓談し、大いに盛り上がった。シニアから小さな子供までさまざまな世代が集い、隣組という大きな家に集まった家族のパーティーのような会となった。

 

みんなの健康と幸せを祈って乾杯!

 

活気あふれる祝賀会

 会場内では、久しぶりに会う人同士が懐かしそうにあいさつを交わしたり、サイレントオークションの賞品をじっくりと眺める人たちがいる中、隣組のボランティアが、はつらつと動き回っていた。やがてちび太鼓が演奏する和太鼓の音が響きわたり祝賀会が始まった。司会を務めたのは脚本家、俳優、コラムニスト、司会者などマルチに活躍するテツロウ・シゲマツさん。シゲマツさんの作品「1 Hour Photo」は2019年のカナダ総督文学賞演劇部門にノミネートされている。ユーモアたっぷりの軽快な司会進行で、会場からはしばしば笑い声があがっていた。

 まず、隣組を創始した人たちを紹介し、彼らの長期にわたる献身的な貢献に敬意を払った。そして隣組についてのショートビデオが流された。そこには日系コミュニティーのニーズに対応し、日系シニアやその家族など、幅広い世代が健康的で楽しい自立した生活を送るためのサポートを続けてきた隣組の在り方が詰まっていた。

 来賓の多田雅代在バンクーバー日本国首席領事は、バンクーバーに赴任以来、日本人及び日系カナダ人の団体が多数あることに驚いたという。その中で最も活発な活動をしている団体はどこかと聞くと、多くの人が「隣組!」と答えたと話した。隣組では日系シニアのニーズをくみ取った多様なサービスを提供しているが、これは隣組の理事、スタッフ、ボランティアの人たちの情熱と献身的な働きなくしては成し得なかっただろうと語った。そして隣組のますますの発展を祈念して乾杯の音頭を取った。

 

隣組の今後の取り組み

 隣組の今後の取り組みについて理事長のデビッド岩浅さん、コミュニティー・サービス・マネジャーの有馬正子さん、アウトリーチ・コーディネーターの船橋敬子さんが説明した。

 隣組では英語、タブレット教室、各種エクササイズ、クラフトなど多種多様なプログラムを提供している。近年、バンクーバー郊外に住む日系シニアも増えてきており、バンクーバーの隣組オフィスまで出ていくことが困難だという人も多いと聞く。そこでバンクーバー以外でのプログラム提供を進めているという。現在、ロイヤルアーチ、スティーブストン、サレーでは週1回または月2回、エクササイズやクラフトなどをおこなうプログラムを実施、それぞれ好評を得ているとのこと。また、コキットラムで10月から5回シリーズのシニアライフセミナーを開催し、遺言書、年金、住宅、アドバンスケアプラニング、シニアの運転などについて講師を招いて説明する。

 また、2020年1月から段階的に提供を開始したり、内容の充実を図る予定のサービスについても説明された。その一部を紹介する。

  • シニアの自宅や介護施設訪問、電話友達サービスの回数を増やす
  • 対象地域を拡大する
  • 日英両語によるシニアライフセミナーやワークショップを他の地域でも実施
  • 地域の諸機関や団体と連携してシニアに役立つ情報を紹介する
  • 食料品の買い物サービスを増やす
  • 日本の食料品の配達サービス(隣組周辺30キロ以内)
  • シニアの自宅での家事サポート(隣組周辺30キロ以内)

 デビッド岩浅さんによると、日系コミュニティー内にはシニア夫婦だけ、またはシニアの一人暮らしも多いという。住み慣れた自宅でできるだけ長く過ごしたいと考えるのは自然なこと。ちょっとした家事を手伝ってくれる人がいれば、より長く自宅で過ごせるのではという考えから、家事サポートの提供を考えているそうだ。

 

隣組の歴史

 祝賀会ではランディ・エノモトさんによる基調講演がおこなわれた。エノモトさんは、グレーターバンクーバー日系カナダ市民協会(JCCA)や全カナダ日系人協会(NAJC)の会長を務めた経験があり、隣組の歴史を著した「Spirit of Issei」の編集の他、著作や共著が多数ある。エノモトさんは講演のはじめに、隣組の活動でのシニアとの触れ合いを情感あふれる言葉で表現した。楽しい思い出もたくさんある中、隣組がつくられた頃は苦労も多かったという。第2次世界大戦後、強制収容先からバンクーバーに戻り始めた日系1世たち。戦争によって日系コミュニティーは崩壊し、多くの日系1世にとって生活を立て直すことは困難であった。そうした人たちをサポートするために、1974年、浜田淳さんや山城猛夫さんなどが隣組の基礎を築いた。中心となったのは、日系2世や3世、そして新移民としてカナダに移住してきた日本人だった。エノモトさんはたくさんの人たちの名前を挙げて、その功績を語った。そして、真のコミュニティーとは身内以外の人をも受け入れることであり、それはまさしく、隣組の「ストレンジャーを歓迎する」という姿勢に表れていると締めくくった。

 隣組は1975年、イースト・ヘイスティングス・ストリートにドロップインセンターを開設した。1977年、日本人がカナダに移住し始めてから100周年を迎えたことで、さまざまな記念行事がおこなわれた。これを機に隣組の活動も発展していく。1980年代初頭からのリドレス運動では、1988年の合意に至るまで、その活動をバックアップしてきた。1986年にパウエルストリートにオフィスを移転、2000年にはイーストブロードウェイに移転した。そして2013年、ウェスト8アベニューに土地と建物を購入して改築した新しいオフィスを開設、現在に至る。隣組のオフィスは、パウエル祭協会やその他の日系団体のミーティングの場所としても利用されており、まさにコミュニティーに根ざした存在であるといえる。たくさんのボランティアが支えてきた隣組の活動は45周年を迎え、日系コミュニティーへの貢献、ボランティア精神、日本文化を守る姿勢を持ち続けながら今後も発展していくだろう。

(取材 大島多紀子)

 

ちび太鼓による和太鼓演奏で景気よくスタート

 

隣組理事長、デビッド岩浅さん

 

軽快な司会進行で盛り上げたテツロウ・シゲマツさん

 

船橋敬子さん

 

多田雅代在バンクーバー日本国首席領事

 

有馬正子さん

 

隣組のこれまでの道のりを語るランディ・エノモトさん

 

隣組創始メンバーの山城猛夫さん(左から3人目)など、初期メンバーや他日系団体の代表者のみなさん

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。