2019年9月26日 第39号
9月18日、ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市にあるロバート新見日系ホーム(以下、日系ホーム)の健康ウエルネスラウンジで、日系シニアズヘルスケア&住宅協会(以下、日系シニアズ)と日加ヘルスケア協会の共催による「健康トーク〜介護を続けていくために〜」が開催された(メディアスポンサー:バンクーバー新報)。クリニカル・ナース・スペシャリストのマーシャ・カーさんや、日系シニアズ理事の田中朝絵医師、栄養士のプージャ・シャーマさん、フレイザーヘルス保健局のシャイアン・ベインズさんら4名の専門家と高齢者サービス・サプライヤーが、介護との向き合い方について説明した。また、翻訳は日系シニアズ理事の船橋敬子さんが務めた。
会場の様子。約30人が集まり、満席となった
まずは、BC PharmaCareへ登録を!(マーシャ・カーさん)
医療を受けたり薬を使ったりする前にBC PharmaCare(以下、ファーマケア)へ登録をしましょう。ファーマケアとはBC州の政府が一部の薬の料金をカバーするプログラムのことであり、BC居住者であれば登録することが可能です。2年前の収入をもとに、その年のカバー上限料金が割り当てられます。
必ず自分で登録することが必要です。専属の薬剤師が入ってくれるわけではなく、また、医療保険のMSPに入れば自動的に登録されるわけではありません。また、個人で保険に入っていてもファーマケアへ登録することをお勧めします。 ※詳しくは、ブリティッシュ・コロンビア州政府のウェブサイトでご確認ください。
薬のリスト化をしましょう!(マーシャ・カーさん)
自分がどの薬を取っているかを把握することは非常に大事です。処方薬だけでなく、市販薬、薬草、サプリメント等を含むすべての薬をリスト化し、薬剤師に把握してもらいましょう。また、薬局は一つのところに行くことがベストです。使用期間の過ぎた薬は使わないでくださいね。
転倒防止について4つのポイント(シャイアン・ベインズさん)
◆視覚
目の検査は年に1回受けてください。現在、眼鏡をかけていなくても、検査は必要です。
眼鏡はバイフォーカル・レンズ(二重焦点レンズ)でなく、一つのレンズからなる眼鏡を普段から使うようにしてください。
◆家の中の安全
できるだけ、家の中のものを対照的な色で合わせる工夫をしてください。例えば、階段の各段の端に、階段の色と対照的な色のテープを張ったり、家中の手すりを壁と対照的な色で塗ったりすると、すごく見えやすくなるため、転倒防止に繋がります。
◆メディケーション
薬の副作用で、めまいや低血圧等を引き起こし、転倒しやすくなることがあります。薬剤師に、自分の飲んでいる薬の副作用についてしっかり聞いて、把握しておくことが大事です。
転倒防止のために必要な栄養素はビタミンDとカルシウムです。まずは食事でそれらを摂取し、足りない分はサプリで補うようにしてください。
◆運動
毎日の運動は、転倒防止に最も効果的です。毎日、脚力やバランス感覚を鍛えるエクササイズをするように心掛けてください。
タンパク質を積極的に摂取しましょう! (マーシャ・カーさん、田中朝絵医師、プージャ・シャーマさん)
一日に必要なタンパク質の量は、体重1kgに対して1gです。高齢者の方は、食事量が減ると、タンパク質の摂取量も減り、積極的に摂取することが必要です。お肉やお魚の他、タンパク質を多く含む食品としては、豆類、キヌアやアマランサスなど穀類、色の濃い野菜、ナッツ類、パンプキンシードやチアシードなどタネ類、ウィートグルテン「セイタン(生麩)」等がお勧めです。特にチアシードは高タンパク質である他、さまざまな栄養素が豊富であるためお勧めします。ヨーグルトやサラダにかけて食べてください。また、プディングやジャムにとろみをつけるためにチアシードを使うこともできます。
カルシウムのサプリについて(田中朝絵医師)
カルシウムのサプリには水に入れると溶けるクエン酸カルシウム(Calcium Citrate)と牡蠣の殻などから作られる水に溶けない炭酸カルシウム(Calcium Carbonate)があります。お持ちのサプリを水に入れて確認してみてください。後者はお酢やレモンなど酸と一緒にとらなければ体内に吸収されないので注意が必要です。ただし、カルシウムの取りすぎによって心臓などの血管にカルシウムが沈着し石灰化を起こし、糖尿病、高血圧、動脈硬化につながることがあります。最近ではカルシウムよりビタミンDを取ることが勧められています。
(取材 わしのえりか)
プレゼンテーションをするマーシャ・カーさん(左)とその通訳を務めた船橋敬子さん(右)
椅子を使ったエクササイズを参加者に教えるシャイアン・べインズさん(中央)