2019年9月12日 第37号

近年、テレビや雑誌をはじめ、メディアでも取り上げられることが増えている、実家の片づけ問題。新報読者も日本に帰国して、実家の「モノ」の多さに辟易しているという人、あるいは、両親が亡くなって、実家を整理しなければならなくなり、「モノ」の多さに困ったという人が多いのではないだろうか。

記者の経験もふまえて、実家の片づけについてまとめてみた。

 

押入れの中と格闘中

 

片づけをめぐる親子バトル

 特に戦争やオイルショックを体験した高齢者は、モノがなくて困った記憶がトラウマのようになっていて、「もったいないので取っておく」という状況に陥りがちだ。実家のあふれるモノに辟易して、「こんなに取っておいてどうするの?」などと発言して、親子げんかに発展してしまったという話もよく聞く。

 記者も片づけ問題から、何度か親子げんかに発展。せっかくの帰国なのに、お互いに嫌な思いをしたことがある。

言ってはいけない、NGワード
一般的にNGワードは
・「どうせ使わないでしょ」
・「結局、捨てることになるのに」
・「捨ててしまったら?」
・「やってあげているのに」
・「通帳どこ?」
などだといわれている。

 「どうせ使わないでしょ」や「結局、捨てることになるのに」については、親の気分を害して、意固地にさせてしまいがちだ。「いつかは使うかもしれない」という思いがあるから取ってあるのだ。

 記者も
「そんなこと言っても、これだけあれば、あと30年以上もつよ」
「お前のものではなく、お父さんのものなんだから、放っておいてくれ」
「結局、捨てることになるのに」
 とけんかをしたこともある。「結局、捨てることになるのに」は言い過ぎたかと後で思っても、後悔先に立たずだ。

 「捨てる」という言葉はそれだけでNGなので、「リサイクルに出したら」や「××さんにあげたら?」と言ってみたらどうだろう。「やってあげている」についても「頼んでもいないのに」と親の態度を硬化させる可能性があるので、気を付けたい。

 通帳をはじめ権利書ほか、金銭がらみの会話も気を遣いたい。親が高齢になると、認知症の心配もある。しっかりしている間に、通帳の場所を聞いておきたいという気持ちがあるかもしれないが、会話の進め方によっては「遺産を狙っている?」と思われかねない。

 我が家の場合、「震災もあったし、もしものときの備えとして、簡易金庫を購入しないか?」と勧めた。以前は銀行の貸金庫を使用していたのだが、認知症が進んだときに、利用カードを何度も紛失したため、契約を解約して、暗証番号で開閉できる簡易金庫にした。「××さんが、簡易金庫を買ってからは通帳とか大切なものを近くに保管できる、便利だって言ってたよ」と、他人の成功例を出すのもいいだろう。

 金庫でなくても、耐火カバンなどもあるので、火事に備えて、大切なものはここに入れておいたら?と提案するのもお勧めだ。

 

不用品の処分

   さて、片づけをすることにしよう。次に最も頭が痛いのは、不用品の処分方法だ。

 親が一軒家からマンションに引っ越した、あるいは介護施設に入ったといった場合、引っ越し業者に不用品の処分を一緒に頼むと楽だ。

・大量のモノを一括で処分

 大量のモノを一括で処分する場合、不用品処分を請け負っている業者に頼むのが手っ取り早いだろう。

 インターネットで住まいの場所(例 東京都足立区、大阪市南区など)、「不用品処分」、「粗大ごみ」を検索ワードにして調べてみよう。いくつか業者が出てくる。

 会社によって異なるが、軽トラ一台でいくら、あるいは所要時間あたりなど値段設定が違う。2階からの搬出やピアノなど特定のゴミの場合は追加料金がかかることもあるので、料金体系について、細かく質問してみよう。

・少しずつ処分

 少しずつモノを減らしていく場合は、まず自治体で相談することを勧める。

 記者も、まずは市役所を訪れて聞いてみたところ、処分するモノの数量、内容により、粗大ごみとして市に収集してもらうか、あるいは大量なら、処理センター(清掃工場)に持ち込むとの説明を受けた。

 実家のある自治体では処理センター持ち込みだと、「100キロまで一律1700円」だった。処分する大物をざっと挙げたところ、「布団1枚400円」「ファクシミリ400円」「ベッド800円」と1700円は超えることは確実だったし、大きなモノ以外にも片づけたいものが大量に出そうだったので、持ち込むことにした。

 知人は処理センターへの持ち込みについては、レンタカーをして兄弟や男友達に手伝ってもらったという。しかし、記者は頼む対象がいなかったため、便利屋をインターネットで検索して依頼。二人のスタッフに出張してもらって、軽トラで2往復して処理センターに搬入したため、合計2時間で消費税を合わせて1万8千円ほどかかった。タンス2棹、シングルベッド、マットレス、カーペット、エレクトーン、布団数枚、米櫃など大物のほか、大量にとってあった紙袋、包装紙といった小物を処分して、家の中がすっきりした。

 

寄付、買取

 お歳暮やお中元でもらった品物などは新品だと、粗大ごみで出すのも気が引ける。

 カナダだと、ビッグブラザーほか寄付する場所も多いし、電話をして集荷に来てもらうこともできるが、日本だとそうはいかない。あるいは高額だったものだと、売れるかな?と思うこともあるのではないだろうか。

a)自治体に寄付、自治体でリサイクリング

寄付を受け付けている自治体もある。ゴミの相談に役所を訪れたときに問い合わせてみよう。

 静岡市の場合
 http://www.city.shizuoka.jp/790_000128.html  (ホームページより)

 名古屋市の場合
 http://www.city.nagoya.jp/kankyo/cmsfiles/contents/0000067/67201/kohu.pdf  (ホームページより)

b) 古着をNPOなどで回収してもらう

回収した古着を発展途上国などで再利用する、あるいは障がい者の自立支援に利用するといった団体もある。通常、会員になる必要があったり、送料ほか費用がかかったりするが、ゴミとして処分したくないという人は利用を考えてみてはどうだろう。

例)  
・古着deワクチン
 不要な衣類やバッグ・靴・服飾雑貨を送って世界の子どもにワクチンを贈る
 https://furugidevaccine.etsl.jp/

・セカンドライフ
 回収したものは、国内で需要がある場合は、国内でリユースや寄付を行う。 リユース・リサイクルの難しい場合は、海外リサイクルに回したり、国内の希望施設に寄付。古着のみでなく人形やおもちゃも回収。
 https://www.ehaiki.jp/second/  

・NPO法人 ブリッジエーシアジャパン(BAJ)
 集まった古着をリサイクル業者に販売。
 https://www.baj-npo.org/furukuru.html  

・もったいないボランティアプロジェクト
 寄付された品物をリサイクル、リユースすることで、世界中の恵まれない子供たちへの寄付活動に役立てる。
 http://mottainai-vp.jp/  

・ワールドギフト(World Gift)
 回収したものを世界中で再利用して、途上国支援に役立てる。
 http://world--gift.com/  

・NPO法人 日本救援衣料センター
 タンスやクローゼットの中で眠っている「いたみ」や「よごれ」がなく十分着用できる服を、世界の衣料を必要とする人たちに「愛の救援衣料」として配布。1982年から活動。

c)古本を買取サービスに出す

本を捨ててしまうのに躊躇するという場合は、古本業者をあたってみよう。インターネットで検索すると、ブックオフや古本市場といったチェーン店以外の買取サービスも見つかる。

d)古着、着物、アクセサリー、ブランド品の買取

古着や着物、アクセサリー、ブランド品などは、昔だと価値のあるものを質屋にというイメージがあるかもしれないが、買取業者も増えている。大手では全国600店舗以上を展開するセカンドストリート(https://www.2ndstreet.jp)、関東、関西を中心に約200店舗を持つトレジャーファクトリー(https://www.treasure-f.com)、ウェブサイトから宅配買取を申し込むことができるフクウロ(http://www.vector-kaitori.jp)など。

 時間があり、手間をかけるのを厭わない場合は、メルカリ、ヤフオクを利用してもいいだろう。メルカリはスマホから誰でも簡単に売り買いが楽しめるフリマアプリで、2013年にサービス開始。会員登録、月会費、クレジットカード手数料などはなし。かかるのは商品が売れたときの販売手数料10%だけという気軽さで利用者が増えている。対して、ヤフオクはネットオークションだ。

 どれぐらい時間をかけることができるかによって、処分の仕方も変わってくるだろうが、モノが減ると整理もしやすくなるので気持ちがよい。少しずつでいいから、次回の里帰りから始めてみてはどうだろうか。

(取材 西川桂子)

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。