2019年3月14日 第11号

3月2日、ブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)のアジアンセンターで、31回目となるBC州日本語弁論大会が開催された。高校生16人、大学生20人が自分の経験や社会的な問題などさまざまなトピックを日本語で堂々と発表した。(メディアスポンサー:バンクーバー新報)

 

羽鳥隆在バンクーバー日本国総領事(前列右から4人目)および大学生部門の出場者(後列)と審査員の方々

 

高校生部門

 UBC日本語プログラムディレクターであり、日本語弁論大会実行委員長でもあるレベッカ・チャウ博士が開会の挨拶で、大会開催にあたってUBC等の日本語教授・講師、多くのボランティアスタッフの尽力に感謝すると共に、在バンクーバー日本国総領事館や国際交流基金などの協力に対しても謝意を述べた。

 午前の部は高校生の発表。カナダにおける日本語弁論大会で高校生部門を設けているのはBC州だけだという。それだけ日本語を学ぶすそ野が広いといえるだろう。初級で8人、中級で6人がそれぞれ3分間の持ち時間で発表、オープンでは3人が4分間の持ち時間で発表した。自分自身の経験やそこから学んだこと、将来の夢、社会問題と自身との関わりなど、高校生らしいトピックが並んだ。

 初級1位のレイチェル・タンさんは、人にどう思われるかを気にしてばかりではなく、ありのままの自分を大切にしようと身振り手振りを加えて明るく表現した。中級1位のビッキー・ヤンさんは、高校生のドラッグ問題を取り上げ、中毒になってしまった人には周りに助けを求めてほしいと話し、家族など周りの人の理解とサポートも大切と説いた。オープン1位のソラ・デュパンさんは、体験入学した日本の中学校の校訓である「美、礼、時」を説明。日加の学校は違うところも多いが、それぞれの良い点を取り入れていけたらいいのではないかと話した。 それぞれの部門の入賞者は以下の通り。

初級:1位 レイチェル・タンさん(スティーブストン‐ロンドン・セカンダリースクール)「ちょうどいい自分」

2位 メイガン・ヤングさん(ヒューボイド・セカンダリースクール)「私のベビーフェース」

3位 ティナ・ライさん(ヒューボイド・セカンダリースクール)「スピーチと人生」

特別賞:シェリー・カングさん(リッチモンド・セカンダリースクール)「テクノロジーは人々の創造性を低下させます」

中級:1位 ビッキー・ヤンさん(エルジンパーク・セカンダリースクール)「マリファナ合法化—カナダの高校生は今」

2位 ビッキー・チェンさん(バーナビーノース・セカンダリースクール)「無償の愛とは」

3位 ジョシュア・デイビッドさん(メープルリッジ・セカンダリースクール)「言葉の壁を超える」

オープン:1位 ソラ・デュパンさん(エコール・ビクター・ブロダー)「美、礼、時—私の冒険」

2位 マシュー・アームストロングさん(バーンクリーク・コミュニティー・セカンダリースクール)「分岐点」

3位 サシャ・ソウダさん「初めての仕事」

 

 5人の審査員を代表してUBC講師の風間美鈴先生が総評を述べた。どの出場者も高い能力を示していたと総括。加えてスピーチにおいて大切なことは、原稿にばかり目を落とさずに聴衆に目を向けてメッセージを伝えることだとし、その観点から原稿内容を記憶して聴衆の目を見て発表する努力をしていた出場者に特別賞が贈られたと話した。

 

大学生部門

 午後は大学生の発表。初級7人が4分間の持ち時間で、中級7人、上級6人は5分間の持ち時間で発表した。子供と大人のはざまにいる大学生ならではの、自身の在り方や将来の選択と、周りの期待や社会の風潮などと、どうすり合わせていくかを模索する姿を表現する人が目立った。

 初級1位のリアン・イーさんは、瞑想をすることでリラックスし、自分の心の動きが見えてくるといい、一人でいる時間は決して寂しい時間ではないと話した。中級1位のペイフェン・シェーさんは、「レイン」という曲の中で、悲しみを乗り越えて喜びにたどりつくという歌詞に感動したという。雨が降っているなら傘をさそう、人生においても自分にとっての傘を探そうと話した。上級1位のエリン・ウーさんは、「色即是空・空即是色」という難しい言葉を題材に、目に見えるものの背後にはそれを形作っている本質があると話した。詩のような味わいのあるスピーチだった。

それぞれの部門の受賞者は下記の通り。1位となった3人は、3月24日にオタワで行われるカナダ全国日本語弁論大会に出場予定。

初級:1位 リアン・イーさん(UBC)「寂しくない一人」

2位 イーヤン・グさん(UBC)「私とちびまるこちゃんの物語」

3位 アレックス・シアさん(UBC)「美しいゲーム」

中級:1位 ペイフェン・シェーさん(UBC)「レイン」

2位 ニコラス・チュウさん(ランガラカレッジ)「過程にある自由の意義」

3位 リチャード・ウーさん(UBC)「母の絶対的な支配の中で」

特別賞:ジャーハオ・ニウさん(UBC)「心を輝かせよう」

上級:1位 エリン・ウーさん(UBC)「空、色」

2位 ノア・インさん(UBC)「地球寒冷化」

3位 シンディー・ハーさん(UBC)「嘘の必要性」

 

 6人の審査員を代表して、UBC教育学部の久保田竜子博士が総評を述べた。日本語を話す能力の高さに加えてスピーチ内容も充実しており、審査には苦労したと話した。今後のアドバイスとして、難解なことや抽象的な内容のトピックは、どの聴衆にもすんなり理解してもらえるとは限らないので、表現方法や言葉をよく考えてスピーチに生かすことを心がけてほしいと述べた。

 授賞式ではまず、羽鳥隆在バンクーバー日本国総領事が挨拶、出場者の素晴らしいスピーチに感銘を受け、出場者および指導に当たる教師陣のたゆみなき努力に敬意を表すると述べた。その後、各部門の受賞者発表と審査員講評が続いた。閉会の挨拶をしたUBCアジアン・スタディー学部長ロス・キング博士は、昨今日本語を学ぶ学生が減少傾向にあることに憂慮を示す一方、日本のポップカルチャーへの関心が高まり、日本語や日本文化へ興味を持つきっかけとなっていることにも注目していると述べた。大学部門の出場者はUBCの学生が大半を占めていたことからも、日本語を学ぶ機関が先細りしている傾向が見られたのは確か。今後どのように日本語学習の場を広げていけるかが課題といえるかもしれない。

(取材 大島多紀子)

 

羽鳥隆在バンクーバー日本国総領事(前列右から4人目)および高校生部門の出場者(後列)と審査員の方々

 

高校生中級部門1位となったビッキー・ヤンさん

 

大学生部門で1位になった皆さん。左から、リアン・イーさん(初級)、エリン・ウーさん(上級)、ペイフェン・シェーさん(中級)

 

UBCアジアン・スタディー学部長のロス・キング教授から賞状と記念品を授与された、高校生オープン部門で1位となったソラ・デュパンさん

 

高校生部門の審査員総評を述べる風間美鈴先生

 

開会の挨拶をするレベッカ・チャウ博士

 

大学生部門の審査員総評を述べる久保田竜子博士

 

羽鳥隆在バンクーバー日本国総領事

 

閉会の挨拶を述べるロス・キング博士

 

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