第3位となった日本
1968年、日本のGDPは西ドイツを抜き、米国に続く第2位を達成した。世界大戦で焦土と化した、そして天然資源に恵まれない、そして震災や津波などの自然災害に襲われることが多い日本が、見事な復興を遂げたというのは、素晴らしいことだ。特に、日本の面積は、ブリティッシュ・コロンビア州の3分の1と、国土の小さい国であること、人口も第1位の米国の4割ほどしかないことなどを考えると、驚くべき偉業と言えるだろう。

以来、40年以上にわたり、日本は世界第2位の経済大国としての座を、「幸福感」の中で楽しんできた。1979年にはヴォーゲルが、『ジャパン・アズ・ナンバーワン(Japan as Number One)』を書いている。『ジャパン・アズ・ナンバーワン』は、日本でも広く読まれ、一世を風靡した。

1991年には小坂井(敏晶)が、『Les Japonais sont-ils des Occidentaux? 』を発表。その中で、「日本人は認めたがらないが、自分たちを、comme membres du monde des blancs(白人社会の一員)と捉えている」という考えを述べている。『白人』を高く評価して、真似ようとする一方で、ほかのアジア人より優れていると考えているというものだ。1885年に福沢諭吉が「脱亜入欧」を発表していることを知る人にとって、小坂井氏の考えは新しいものではない。

一方、2008年に西村(吉正)は中央公論で『脱・脱亜入欧のすすめ』で、「2000年にわたり日本にとってのグローバル・スタンダードだった中国文明と決別したことについて、明治時代の日本人の思い切りに感嘆する」一方で、「周辺諸国民に深い屈辱感を与えることが将来自らの厳しい足かせとなるとの想像力を欠いたことは残念というほかない」と述べている。

さて、その日本をとうとう中国が追い抜いたことで、日本はナンバー3となってしまった。40年もの長きに渡り、世界第2位の地位を守ってきたことで、米国に続く経済大国であるということは、国のアイデンティティでもあったが、世界第3位となったことについて、日本の反応はどのようなものだったろう。

2010年に『China Daily (中国日報) 』と日本のシンクタンク、『言論NPO』 が行った調査で、日本人の対中イメージは、中国人の対日イメージより悪かった。また、中国人のほうが日本人より、日中関係について楽観的に考えていた。

 

日米中を巡る軍事問題
軍事脅威についてだが、中国と日本でどの国が、自国にとっての軍事脅威と考えるかという質問に対して、中国は米国、続いて日本と答えている。一方、日本は北朝鮮そして中国だ。両国にとって、在日米軍の存在は、ジレンマを生んでいる。世界で最も強力な国、3国の外交関係の問題となっている。

鳩山元総理が辞任に追い込まれた理由の一つは、沖縄の米軍基地問題だ。領土に米軍が今も留まっていることについて、日本では意見が分かれている。たとえば、白石(隆)は、日米同盟は地域の安定の礎として、地域の安全保障の要となっているとの考えを示している。在日米軍をグアムやハワイまで撤退させると、日本は国防にもっと力を入れるようになる。その結果、中国や韓国、ベトナムも軍事力強化に動き、最悪のシナリオとなりうるという。( 「外交迷走を招いた国家の 『見取り図』 の喪失」 )

白石と対極の考えを持つのは、寺島(実郎)で、文藝春秋の「米中二極化『日本外交』のとるべき道」で、一独立国家が他国の軍を無期限に滞在させているのは「正常ではない」と自覚すべきだという意見を示している。さらに異常なのは、その駐屯費を日本が70%も負担していることだ。寺島は、日米同盟の見直しを図るべきだと主張する。

多くの日本人は寺島に賛成している。米軍司令官が野田首相に基地問題について、「これは動かせない」云々と話をしているが、それではダメだ。米国に強く依存する現状を変えようという日本政府の確固たる決意と、米国側の日本に駐留している軍を米領まで撤退させようという意思が必要だ。

 

米中との経済関係と日本の課題
次に日本と中国、そして米国との経済関係だ。日本は中国が巨大市場であると理解していて、2007年には中国は日本にとって、最大の貿易のパートナーとなった。多くの日本企業が中国に支社を持っている。

日本の大きな課題といえば、出生率の低下と高齢化社会だ。出生率低下の対策として、子育て支援のために育児休暇もあるが、「職場の状況が、育児休暇を取るのを許さない」などの理由で、ほとんどの男性は利用していない。子育てに金がかかるのも問題だ。さらに結婚しない女性も増えている。これらの理由から、職場のメンタリティを変え、出生率低下をストップするには、まだまだ時間がかかると考えられる。そこで、問題解決のための、オプションとなるのが移民受け入れだ。

近年、外国人移民が増えたものの、日本はまだまだ単一民族国家だ。現在、約200万人の登録した外国人が日本で暮らしていて、最も多いのが中国人だ。以前は韓国人が最多だったが、4年前に順位が入れ替わった。一方、日本はある種の労働力をロボットで補ってきたが、ロボットは労働力不足を補うものの、税金は払わない。進む高齢化社会に対する、若い世代への負担を軽減することはできないのだ。

GDPで世界第3位となった日本が今後どうすべきかだが、2020年、中国経済が米国を抜き、世界一になると考えられている。さらに2040年には、今度はインド経済が世界第3位となり、日本は4位に転落する見通しだ(日本経済研究センター)。すなわち、日本は第3位ですらなくなる。

これについて、英国のブレア元首相が1997年の労働党年次大会で言った、『我々は最大にはなりえない。最強ともなりえない。しかし、最高になることはできる。暮らすのに最高の国、子どもを育てるのに最高の国、充実した生活を送るのに最高の国、年を重ねるのに最高の国だ』と言う言葉を送りたいとして、締めくくった。


(取材 西川桂子)

 

バーナード・サンジャック(Bernard Saint-Jacques)博士
(ブリティッシュ・コロンビア大学名誉教授
1988 –2003年愛知淑徳大学大学院教授 異文化コミュニケーション主任)


木曜会
バンクーバー木曜会は、日本に興味を持つ人々のための団体で、各種イベントを通じ、 日本とブリティッシュ・コロンビア州との交流を促進するため、ビジネスなどで日本に滞在経験のあるカナダ人グループにより、1982年9月13日、バンクーバーで創設された。スピーカープログラムや各種スペシャルイベントを開催している。

 

今週の主な紙面
7月11日号 第28号

バンクーバー新報は毎週木曜日発行です。

あなたにぴったりの学校がきっと見つかる! School Information…V-3
Hello Community「マーポールチャリティーガレージセール最終報告」…V-3
地震注意喚起情報…V-6
MOVIES TIME OUT…V-11
世界各国からミュージシャンが集まる バンクーバー・フォーク・ミュージック・フェスティバル…V-14
TIME OUT(イベント情報)…V-16~17
CLASSIFIED…V-19~22
求人情報…V-4~5

詳しくは7月11日号 第28号
バンクーバー新報をご覧下さい。

配布リストはコチラ