多様な文化を誇るカナダ
カナダデー・パレードには毎年、幅広いグループが参加している。日頃から歌やダンスの練習に励んでいる地域の若者たちにとってはその成果を発表するチャンスであり、バンクーバーの社会に共存する多様な国々のコミュニティにとっては、その文化を広く伝える機会でもある。ミュージカルやチアリーティングから、日本のソーラン節や中国の獅子舞まで、エネルギー溢れるパフォーマンスの数々が、沿道の観客を湧かせた。消防署や警察、スタンレーパークやバンクーバー水族館なども参加しており、バンクーバーになくてはならないさまざまな存在を再認識することができた。

 

バラエティ豊かな音楽を堪能
パレードといえば、賑やかな音楽が楽しみだ。今年も、さまざまな団体の演奏がパレードを盛り上げた。ブラスバンドのグループの数々に加えて、カナダではおなじみのバグパイプの一団も登場。インドの音楽の軽快なリズムと、それに合わせた踊りも楽しい。多くの家族連れがカナダの国旗を振りながら声援を送っていた。

 

日本を支援してきたカナダの人たちへの感謝の気持ち
パレードの終盤に現れた浴衣姿のグループは、阿波踊りを披露した。この阿波踊りには、東日本大震災で大きな被害を受けた日本へのカナダの人たちの温かい支援に対する感謝の気持ちが込められていた。
今年5月、ヤヨイ・シアター・ムーブメント代表の平野弥生さんにパレードのオーガナイザーから参加の誘いがあり、昨年の様子を調べたところ、日本のチームの参加が見られなかった。それならば、と参加を決めたという平野さんは、「メンバーや友人らと相談するうちに、今年は震災でカナダの人たちに随分お世話になっているのだから、そのお礼も兼ね、日本人一緒にがんばろう、との気持ちを込めてやろうということになりました」と語る。阿波踊りは、パレード全体の中でほぼ最後のグループだったため、パレードを見終えた観衆がその後ろをついて行くことが可能になった。踊り手と観衆が一体となってバラード通りを下る様子は、日本とカナダが助け合って生きていることを連想させ、感動的だった。

阿波踊りを終えて
阿波踊りを精一杯踊りきった浴衣姿の若者たちは、「二の腕が疲れました」と笑いながら、充実の笑顔を見せた。ワーキングホリデーでカナダに滞在中の横手周子さんは、「浴衣を来て、お祭りを楽しみながら日本をアピールできる機会ということで参加しました。楽しかったです」と話した。
踊り手たちを車で先導したのは、パンパシフィック日産リッチモンド社の赤堀正明社長と社員たちだ。赤堀氏は「日本人コミュニティのプレゼンスを示すのに良い機会だったと思います。震災の時の感謝の気持ちを込めて参加しました」と笑顔で語った。

 

カナダの良さを再確認
先月はスタンレー・カップ終了後に暴動が起こったこともあり、警察はセキュリティー対策に余念がなかったが、一日を通して大きな問題は起こらず、治安の良い、もとのバンクーバーが戻って来たようだった。
野外コンサートなど、さまざまな催し物があったカナダデーだが、その中でも特に、何万人もの観衆のエネルギーと踊り手のエネルギーが合わさったパレードの躍動感は、通常なかなか経験することのできない貴重なものだった。多様な文化が共存するカナダの良さを再確認し、多くの人たちとの一体感を味わうことができた一日だった。

(取材 船山祐衣)

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