北欧のお祭り
夏の期間が短い北欧で夏を祝うミッドサマー・フェスティバル(夏至祭)。ポールを草花で飾り、自然の恵みに感謝しながらその周りを音楽に合わせて踊ったり余興やご馳走を楽しみ、夜はキャンプファイアーで締めくくるというものだ。
バンクーバーで最初に行われた夏至祭は1986年、バニエ・パークだった。1996年にノルウェー、スエーデン、デンマーク、フィンランドの4か国が共同出資でバーナビーにスカンジナビアン・コミュニティーセンターを創立してからは、隣国アイスランドも加わり、北欧5か国が団結を高めるために、毎年共同で夏至祭を行っている。
開会式は、各国の国歌斉唱と国旗啓上からスタート。ゲスト国日本から伊藤秀樹総領事が挨拶し、NAVコーラス(国歌合唱団)が『君が代』を斉唱した。小雨がぱらついたものの、強い雨に降られることもなく、日曜の夕方には一部晴れ間も広がった。
野外ステージで演奏やパフォーマンスが行われる中、広場では民族衣装を着た人やバイキングを見かける。オープンフェイス・サンドイッチやスエーディッシュ・ミートボールにカルルスバーグ・ビールといった北欧の食を求めてやってくるカナダ人も多い。
北欧のポップグループといえば『ABBA(アバ)』。土曜の夜には『ABRA CADABRA』がアバのメドレーを歌い、会場を盛り上げた。
ゲスト国、日本
アジア圏で最初のゲスト国となった日本。北欧4か国のテントの隣で総領事館が日本紹介、JCCA、隣組が民芸品や料理本の販売、カナダ指圧カレッジによる指圧が行われた。
磯野哲也領事から日本案内のパンフレットを受け取ったメイさんは「日本は戦争から復帰した国。今回の地震でもみんなで協力する姿が印象的だった」と、話してくれた。
「北欧のものに興味があるので来ました」と話すある日本人主婦は、民芸品やクラフトを見て回った。合気道のデモンストレーションを見ていたリクくん(4)とお父さん。お母さんが指圧をしてもらいたくてやってきたという。
隣組のデビッド岩浅事務局長によると、このイベントに設置した募金箱、チャリティーTシャツ販売による合計金額853.17ドルがBCJERF(BC-日本地震支援基金)に寄付されたとのこと。
日系パフォーマーが
多数参加
ゲスト国の日本からは、多くのパフォーマーやボランティアが参加。野外のメインステージほか、館内の食堂でも多彩な企画で、お客さんの食事をいっそう楽しませてくれた。
『北欧』を意識した選曲も多かった。NAVコーラスがフィンランド民謡、アレクサンダー恵子さんがシベリウスの『Spruce』(樅の木)と『フィンランディア』をピアノ独奏。パシフィック・ノース・トリオとヘンリーかおるさん(ソプラノ)のグリーグ特集も、ノルウェーのお国柄を盛り上げて好評だった。また、さくらシンガースによる『フィンランディア』もゆったりと幻想的で、涙を流した人もいたという。
今年はあいにくの天気により、例年の半分の約4000人が参加。夏至祭実行委員のひとり、石村安志さんは「悪天候にもめげず、お客さまや北欧系開催国の皆さまに心から楽しんでもらえるフェスティバルになったのも、ゲスト国日本のパフォーマーと多くのボランティアの皆さまのおかげと感謝いたしております。ミッドサマー協会の各位も感謝の意を何度も告げておられました」と感想を語った。
日本の代表曲『さくら』。いくつかの合唱団により、いく様にも演奏されたことから、メロディーを覚えた参加者もいたという。ゲスト国日本の協力で盛り上げた北欧夏至祭は、北欧5か国と日本との距離が身近になった2日間でもあった。
(取材 ルイーズ阿久沢 / 取材協力 石村安志)