2016年7月28日 第31号

ヒロシマ・カナダ文化親善交流ツアーバンクーバー公演が8月9日、日系文化センター・博物館で開催される。公演を行うのは広島カナダ親善訪問団。広島市の姉妹都市ケベック州モントリオール市で毎年行われる平和祈念式典に参列し、文化活動を通じてモントリオール市民と交流している。 今年も8月3日にモントリオール入り、同市でさまざまな文化交流イベントに参加したあと、今回はバンクーバーにも立ち寄る。同訪問団のバンクーバー公演は初めて。

一行のカナダ訪問を前に、同訪問団の活動を支援する広島カナダ協会で理事を務める田中勝邦氏に広島カナダの関係などについて話を聞いた。

 

 

人心身統一合氣道会 聖心館道場、引地 盛道さんと橋口 高大さん

 

広島とカナダの関係

 広島とカナダとの縁は深い。古くは戦前まで遡る。明治から第2次世界大戦前にかけては広島からバンクーバーへの移民が盛んで、統計では9万6千人と全国断然トップ。現在のバンクーバー広島県人会(バンクーバー広島クラブ)は、1902年8月芸備同志会として発足し、戦後活動休止期間はあるが、カナダで最も歴史が古い県人会として活動している。

 戦後は経済活動を通じた交流が盛んになり、1976年には製鉄関係で広島県福山市とオンタリオ州ハミルトン市が姉妹都市となった。

 さらに、平和問題などを含めた学術交流や留学など文化的な交流も盛んになり、1978年、1982年にはニューヨークで開催された国連軍縮特別総会に出席した当時の広島市長荒木武氏が、その帰路にトロント、モントリオール、オタワ、バンクーバーを訪問。同市長はカナダに非常に親しみを感じていたという。

 1984年にはオンタリオ州トロント市が市制150周年を記念して平和公園を建設、この時には広島平和記念公園から「平和の灯」が送られた。

 こうした流れの中、1988年広島カナダ協会が発足。「市民レベルの相互交流を推進したいとの考えがあり、広島県や経済界など各方面に働きかけた」と田中氏。現在は、法人・個人を合わせて会員は400にのぼり、広島とカナダの相互理解と友好親善の促進を目的にさまざまな活動を行っている。

 今回の訪問団支援もその一つ。市民レベルの文化交流を中心に、カナダ政府関係機関とも連絡を取りながら交流の幅を広げている。

モントリオールに魅了され

 田中氏自身も個人的にカナダとの縁は深い。戦前から大叔母がバンクーバーに移住していたこともあり、アメリカ留学中の夏休みにバンクーバーを訪問。結婚のため広島からカナダに渡った大叔母を通じて知った排斥・強制収容など、日系人の苦難の歴史を含め、カナダのことをもっと知りたいと1970年アメリカ留学から帰国後、日本カナダ学会会員となり、カナダとのネットワークを広げていった。

 広島カナダ協会設立時には事務局長に就任し、現在も理事としてさまざまな活動を支援している。

 そんな田中氏が1987年9月に初めて訪れて魅了されたのがモントリオール。北米の都市でありながら、ヨーロッパの雰囲気を色濃く漂わせる美しい街。事務局長として広島市とモントリオール市との姉妹都市提携に尽力したこともあって、訪問回数は公私にわたりすでに50回以上。本人いわく「一目ぼれだった」というこの街と生涯関係を持つこととなった。

モントリオールと バンクーバー

 広島市がカナダの中でも姉妹都市としてモントリオール市を選んだのは「平和都市広島」に関係する。モントリオールは1986年にカナダで初めて非核宣言した都市。同年には「平和と安全に関係する国際会議」が、88年には「核戦争防止国際医師会議(IPPNW)世界大会」が開催され、当時の荒木市長が招待されている。

 文化的平和の祭典といわれる万国博覧会を1967年に、夏季オリンピックを76年に開催し、平和都市広島にとって、姉妹都市として最適な候補都市だった。当時、モントリオール市も日本との姉妹都市提携を模索していたという。

 こうして1988年発足の広島カナダ協会が尽力し、98年5月に姉妹都市提携が結ばれた。田中氏によれば、当時の荒木市長は「バンクーバーもどうだろうか?」と候補に挙げていたという。しかしバンクーバーは、1965年にすでに横浜市と姉妹都市で、昨年には50周年を迎えている。バンクーバーとの提携はあきらめざるを得なかったようだ。

 モントリオール市との姉妹都市提携後、両市の関係はますます深くなっていく。広島市は2001年から毎年7月10日を「モントリオールの日」と制定し、モントリオールやカナダを紹介するさまざまなイベントを行っている。

 そしてモントリオール市では姉妹都市提携以来、毎年8月5日午後6時半(日本時間8月6日午前7時半)から、オリンピック公園近くの市立植物園内日本庭園でヒロシマ平和祈念式典を行っている。

 この記念式典に広島カナダ親善訪問団が参加。今年はモントリオール市長デニス・コデール氏や、在カナダ日本国大使館特命全権大使門司健次郎氏をはじめ、日系人、モントリオール市民ら約300人が参加する。式典では、広島市から贈られた「平和の鐘」を打ち、3カ国語で広島平和宣言を読み上げ、原爆犠牲者の冥福を祈ると共に世界の恒久平和を訴える。また共同コンサートの開催や地元イベントへの参加で文化交流を図る。

 そしてバンクーバーでは、日系文化センター・博物館で交流コンサートが行われる。田中氏は「バンクーバーでの公演は初めてで、これからこういう市民レベルの交流を増やしていければ」と話している。

 コンサートでは、広島在住の雅楽・筝の演奏家とオペラ歌手のコンサート、日本舞踊(花柳流)と合気道を披露する。「これを機会に、広島にゆかりの深い人たちを中心にバンクーバーの人たちとの友好親善の輪が大きく広がり、市民レベルのさまざまな交流が深まればと参加者全員が夢を膨らませています」とバンクーバー訪問への期待を語った。

 公演は8月9日(火)午後7時から、バーナビー市の日系文化センター・博物館で開催。入場料は無料となっている。

(取材 三島直美 / 写真提供 広島カナダ協会)

 

 

ソプラノ歌手、北小路旬子さん

 

 

日舞花柳流師範花柳寿魁俚、林 香津子さん

 

 

箏生田流宮城社師範、立川 淑恵さん

 

 

雅楽大和主宰、木本いず美さん

 

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