遊楽塾バンクーバー主催で、9月22日リッチモンドのJTBオフィスで開催された『胎内記憶ー子供たちの記憶から考える生まれてきた意味』と題された講演会に約80人が参加。 産婦人科医池川明氏は胎内記憶を持つ子供たちの統計データを紹介後、子供たちが語る、子供や人生の仕組みの理解に役立つ情報を楽しくわかりやすく解説した。

 

 

「子供はお母さんがまるごと自分を受け止めてくれさえすれば生きていけます」と語る池川氏

  

保育園・幼稚園の協力を得て子供の記憶を調査

 「赤ちゃんにはお腹の中にいた時の記憶があるらしい」。池川明医師が職場のクリニックでこう話すきっかけになったのは、胎内記憶に触れていた本との出会いにあった(飯田史彦著『生きがいの創造』)。「本の話をしていたら、看護助手さんが『うちの孫にも記憶があります』とその子の作文を持ってきてくれましてね」。小学1年生のその作文には「僕はお母さんのお腹の中にいるときに、包丁が刺さってきて、白い服を着た人に足をつかまれておしりをたたかれました。お母さんに言うと『夢でしょう』と言われたけど僕は違うと思います」と書かれていた。帝王切開でも普通は頭から取り上げる。しかしこの子は逆子だったと看護助手が語った。「お腹の中での記憶は本当にあるのだ」と知った池川医師は、来院する子連れの母親に胎内記憶について尋ねるようになった。

 「お腹の中は温かかった」「お腹の中で泳いでいた」等、次々と集まる声を受けて、幼児・児童を持つ親へのアンケート調査に乗り出したのは2000年のこと。2003年までには1620人からアンケートを回収。そのうち胎内での記憶があった子供は3割以上、出生時の記憶を持つ子供は2割だった。しかも子供たちの記憶は胎内にいた時、出生時だけにとどまらなかった。「『お空の上からママを選んだ』、『笑い声が聞こえてきたからここに決めた』など、子供たちはママのお腹に入る前の記憶も語るのです。しかしながら『そんなことはあり得ない』と否定する科学者もいます。赤ちゃんは脳が未発達で記憶力も五感も乏しいと言われていますし、ましてや胎内に入る前の魂の記憶など科学では想定外。しかし子供が同じことをしゃべりますからね…」

 池川氏はアンケート調査の後、聞き取り調査も行い、そこからわかった事をこれまで20数冊の本として出版。胎内記憶そして胎内に入る以前の記憶が日本の映画の題材にもなったことから、現在では育児雑誌『ひよこクラブ』読者の7割がこうした記憶の存在を認知するまでになっている。それは積極的に子供の声を聞こうとする親の増加にもつながっている。「僕、ガラスの中にいたんだよ」「お腹にいる時、拍手がたくさん聞こえてきた」—子供たちの言葉が、出産後保育器に入っていたこと、妊娠中に結婚式を挙げた、といった事実と符合して親たちは驚く。そして多くの子供たちが共通に語る「ママを助けるために生まれてきたんだ」「ママがいいと思ったから」という声を聞いて子供をより愛おしく感じ、育児の姿勢に好影響を与えている事例が数多くある。

 講演会で池川氏は、子供たちが実際に記憶を語る映像や子供が描いた絵も紹介しながら、メッセージから読み取れる流産・死産の意味から生きる目的、人生の仕組みに至る内容をユーモアを交えて語った。

講演会参加者からも語られた子供の記憶

 参加者のMさんは講演を聞いて子供が話したことを思い出したという。「子供がお腹にいた頃に、おなかをポンと1回叩くと子供から(キックで)1回返ってきて、2回ポンポンとすると2回返ってくるのを楽しんでいたんですが、生まれてきた後にそんな話をすることはなかったんですね。そうしたら子供が3歳になった頃、お腹の中にいた時に『トントンゲームをやっていた』と話してくれたんです」。同じく講演参加者のみおさんも「娘が胎内記憶の映画を観た後で、『生まれて来る前に私、光だった気がする』って突然話し出して」と語ってくれた。

 

池川医師への インタビュー

子供が親を選ぶと言いますが、暴力的な親の元に生まれる子供もそうでしょうか。

 子供たちは「自分で選んだ」と言います。そして「暴力ふるわれることは嫌じゃないの?」と聞いたら「嫌じゃない」と答えるんですね。命が大事なことや、暴力はいけないと教えるためにわざわざそうした母のところに来たと言うのです。これは虐待をする側の人から聞いた話なのですが、自分が5歳の子供に暴力をふるっていて「こんなことをしてはいけない」と気が付いた時に息子さんがこう言ったそうです。「僕はね、お母さんがこんなことをしちゃいけないって気が付く日がくると信じていたよ。でもこれからはやっちゃだめだよ」と。

 こう話す子供もいます。生まれてきたくても生まれられない子がいっぱいいるので、生まれてきたということだけでもうれしいんだと。「でもお母さんに怒られるんなら嫌じゃないの」と聞いたら「生まれてこなければ怒られもしないんだよ」って。そうした声は、お腹に宿るだけでも幸せなんだと教えてくれる子供たちの話とも通じます。しかしながら、親にはそんな思いで親を助けに来る子供を虐待できますかと言いたいですね。この事を知っても行動を変えられない人もいるのですが、心の中に変化が生まれればと願います。

未熟な親をあえて選ぶ子供もいると。

 子供が親を選ぶときに人気ランキングってあるんですよ。今は少し変わっているかもしれないですけど、昔は優しそうな親に人気がありました。それとほぼ同等の人気だったのが辛そうな親、泣いているお母さん。すごく子供たちに魅力があるんです。自分が行って助けるぞという思いで自信を持ってやってくるんですね。そのお母さんの役に立ちたくて来るという子が圧倒的に多いんですよ。

子供を授からない女性に伝えたい情報はありますか。

 退行催眠(催眠によって記憶をさかのぼる)の本の中で紹介されていたのですが、子供が好きなのに授からないと悩む女性が退行をしていったところ、前世で6人の子供をすごく貧しい中で育ててとても大変だった記憶を持っていた。そしてもう子育てはこりごりだから、今度は子供のない人生を選ぶと自分で決めたことを思い出したんです。だけど自分で積極的に選んだということをすっかり忘れていたんですね。幼児では2割の子供にそうした記憶がありますが、5歳を過ぎるとほとんど忘れてしまいますからね。   

 

 そしてもう一つ、生まれたい子供にとって時期はとても大切のようです。子供がお母さんのところに生まれると決めているのに、お母さんが産む気配がないようだと次の候補のお母さんのところに行ってしまうこともあるらしい。赤ちゃんの人生にとって生まれるタイミングは大事なようです。それぞれの人によって理由は違うと思いますが、そのような考え方で、生まれる前の赤ちゃんに相談する気持ちを推し測ってみてもいいと思いますね。

祈りに応えて生まれてくる子供もいるそうですね。

 知人の女性が1度流産をした後に女の子を授かって、その女の子が少し大きくなった時に「どうしてママのところに来たの?」と聞いたそうです。そしたら「おばあちゃんの祈っている声が聞こえた」と答えた。その女性は流産した時に、母親がすごく悲しんでお百度参りを行っていたんですね。「うちの娘にいい子を授けてくれ」って言っていたのを、どうやらお孫さんが聞いたようなんです。ほかにもそういう話はあるんですよ。それは偶然かもしれません。でも子供たちの中に「祈りが聞こえた」という声があるので、お母さんからのアピールが聞き届けられる子供もいるのかもしれないですね。   

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池川氏は次のようなメッセージも伝えてくれた。

 「子供は長い年月をかけて親の願いをかなえようとします。『お前は立派な子だね』と言えばそのように、その逆に言うとその通りになろうとするのです」「陣痛の強弱は親がどれだけ痛みに耐えられるかを察した子供が決めています」「子供が愛を感じるのは、『愛しているよ』と言われるよりも、親自身が愛を感じて幸せな気持ちでいる時。あなたのためにこんな苦労をしてと眉間にシワを寄せている親の子供は子供自身も眉間にシワを寄せています。育児に大事なことは『笑顔』です」

 日頃から産科医として母子に接し、彼らのメッセージに耳を傾け、理解しようと努める池川氏。朗らかでありながらも、とてもソフトに語る姿が印象的だった。

(取材 平野香利)

池川明氏プロフィール

1989年横浜市で産婦人科の池川クリニックを開設。胎内記憶に関して研究し、研究で得た知見を医療の現場で、また出産、育児に当たる人々へのアドバイスに生かすとともに、数多くの著書、講演活動で日本における胎内記憶の認知を広めている。 『おなかの赤ちゃんと話せる本』 ほか著書多数。

http://ikegawaakira.com

 

自分が生まれる前の記憶を語る子供の作文を紹介

産婦人科医で日本での 胎内記憶研究第一人者の池川明氏

 

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