High Tea Sushi with Mayor Derek Corrigan
「姉妹都市関係は人と人とのつながり」
バーナビー市長デレク・コリガン氏 講演会
バーナビー商工会議所主催 「デレク・コリガン市長とハイ・ティー・スシ」が8月19日、バーナビー市の日系文化センター・博物館で行われた。今年がバーナビー市と釧路市の姉妹都市提携50周年となることを記念して、バーナビー市長デレク・コリガン氏が講演。「姉妹都市という政治的な関係で最も大事なのは人と人とのつながり」と釧路との良好な関係の秘訣を語った。 また、コリガン市長の後には、在バンクーバー日本国総領事・岡田誠司氏も短く講演をした。
講演後には寿司や日本酒が用意され、参加した約60人は、舌鼓を打ちながらビジネスネットワーキングに花を咲かせていた。
同商工会議所会長ポール・ホールデン氏によると、会員数は約1万1000人でブリティッシュ・コロンビア州ではバンクーバーやサレーと並び最も規模の大きな商工会の一つ。日本やアジアをはじめ各国とのビジネスをつなぐなどの役割を果たしている。 以下、コリガン市長、岡田総領事の講演内容を要約する。
会場の様子。日系文化センター・博物館の玄関ホールで行われた
デレク・コリガン市長
カギとなる3分野、教育、スポーツ、アート
姉妹都市関係というのは我々のような多文化、多様性を重視するバーナビー市にとって重要な意味を持っている。
今日のこの会場、日系文化センター・博物館もバーナビー市の多文化主義を象徴するもののひとつ。日本の文化的遺産を、バーナビー市で子供、孫の世代へと引き継いでいく重要な役目を果たしている。こうした活動はこの町で文化的相互理解を深める役割も果たしている。
姉妹都市関係を強化する最も重要なカギは、「個人レベルでつながること」。人々がお互いの理解を深め、つながることで、姉妹都市という市政レベルの関係は強化されていくと信じている。
そのためのカギは3つの分野。教育、スポーツ、アート。この3つの分野での交流が大きな役割を果たしてくれると思っている。
釧路市との関係
バーナビー市と釧路市が姉妹都市となったのは1965年。同時期にバンクーバー市が横浜市と姉妹都市となり、今年同時に50周年記念を迎えた。 1965年といえば、戦争が終わって20年目。まだまだ戦争の傷跡が多くの人々の記憶に残っていた時代。それから50年。世代を超えて、姉妹都市関係が続いていることは非常にうれしく思う。
この50年間の関係を続けてきたのは、政治的な交流だけでなく、交換留学生やアーティスト、スポーツ選手の交流など、市民レベルでの交流。
スポーツ交流と言えば、バーナビー市からはホッケーチームを派遣した。釧路は日本では知られたホッケータウンで、良いチームがあり、良いスポーツ交流となっている。アートでの交流では、バーナビー・マウンテンにその関係を見ることができる。釧路から贈られた素晴らしいアートがディスプレーされている。もちろん、バーナビー市からもアートを釧路に贈っている。
今年の夏には釧路市から蝦名市長を含めた市民訪問団がバーナビー市を訪れた。バーナビー市からは今年8月末から釧路を訪れる予定。こうした公式な相互訪問は、経済的、政治的な関係を強化するだけでなく、彼らがどういう町からやって来たのか、文化、くらしなどをより深く理解するために有効だし、彼らの需要を知ることができ、この町の多様性により効果的に活かすことができると思っている。
今回の釧路訪問では、姉妹都市の韓国華城市とソウルや東京を訪問する予定で、経済的な強化も図ることを目的としている。ただ、こうした公式訪問がすぐにビジネスの契約に結び付くわけではない。友好関係を築き、将来に実を結ぶ関係づくりを続けていくことが大事なことだと思っている。
姉妹都市関係は市を豊かにする
28年間の政治家生活の中で、我々のコミュニティを発展させるために、姉妹都市との友好関係というのは非常に有効な役割を果たすということを確信している。特にグローバル化を熱望する我々のような町にとっては有効だと思う。
バーナビー市は世界で最も特別な町、住みやすい町、人々が集い、将来へと希望を抱く町だと思う。それは、物質的な豊かさだけでなく、人々の理解と協力によって成り立っているからである。これは、個人レベルでの交流と理解があればこそ。
そういう意味で、この場を借りて、皆さんに感謝の意を述べたいと思う。毎日の生活の中で一人ひとりの市民が果たす役割が、このコミュニティを素晴らしいものにしている。
在バンクーバー日本国総領事・岡田誠司氏
「人と人とのつながりの重要性」に共感
人と人とのつながりの重要性という市長の思いに共感している。外交官として個人的な経験から話をすると、外交の重要な役割は人と人との理解を促すことだと思う。人々の理解がなければ国同士がいい関係を築くのは難しい。
バンクーバーに赴任する前には、アフガニスタンに赴任していた。アフガニスタンでの役割は、今のバンクーバーでの役割とは全然違うものだった。
アフガニスタンの日本大使館で働いていた時は、アフガニスタン政府を支援することが主な役割だった。それは、日本だけでなく他の国々も同じ役割を負っていた。国際社会の支援がなければ、アフガニスタン政府も、人々の生活も成り立たなかった。
そうした政府や国民を支援する中で難しかったのは、人と人との関係がそこに存在していなかったこと。日本人はアフガニスタンについてよく知らないが、アフガニスタンの人々も日本を知らない。仕事でアフガニスタンの人と話をしても、日本がどこにあるのかすら知らない人も多い。そういう人々に自分の役割を説明するには、非常に時間も、労力もかかるということを実感した。
人と人とのつながりを我々は「Perfect Diplomacy」と呼んでいる。二国間関係で最も重要な関係だと考えている。
コリガン市長が促している姉妹都市での人々のつながりを非常にうれしく思っている。
日本、韓国の姉妹都市を訪問
バーナビー市は北海道釧路市の他に、アメリカのアリゾナ州メサ市、韓国華城市、中国中山市と姉妹都市関係を結んでいる。釧路市との関係が最も古い。
今年、釧路との姉妹都市50周年を記念して、8月28日から9月8日まで、釧路市と華城市を訪問、ソウルや東京にも立ち寄る。
コリガン市長は、講演後のインタビューで、釧路訪問を楽しみにしていると語った。訪問団参加者の多くが釧路を訪れるのは初めて。「9月初めは季節もいいと聞いているし、観光が主な目的だ」と語った。
東京では、デジタルコンテンツ制作会社グミを訪問する予定。同社はバーナビー市に事務所を構えている。同社がなぜバーナビー市を選んだのか知りたいと語った。
コリガン市長はまた「日本からバーナビー市へのビジネス招致については、カナダにとって日本は非常に重要なビジネスパートナーである。またバーナビー市には日系文化センター・博物館があり、日系コミュニティとの良好な関係が強調できる。従業員の居住環境の快適さや町のウェルカムな雰囲気が会社設置の立地条件となるなら、バーナビー市が最適な環境を提供できることを強調したい」と語った。
(取材 三島直美)
コリガン市長。姉妹都市関係の強化はバーナビーの 多様性に重要な役割を果たしていると語った
岡田総領事。釧路訪問団が来た時に、バーナビーでのセレモニーに感動したエピソードも紹介した
司会進行役を務めたホールデン会長。アジアに住んでいた経験があり、日本も何度か訪問していると語った