日本代表、4年連続優勝

女子ソフトボール

カナディアン・オープン・ファーストピッチ

 

日本代表の4年連続優勝で、今年も幕を閉じた。サレー市のソフトボールシティで、7月15日から21日まで開催された女子ソフトボール・カナディアン・オープン・ファーストピッチ。日本代表は、予選から全勝で勝ち上がり、一度も負けることなく頂点に上り詰めた。

 

 

表彰式で優勝トロフィーを受け取るキャプテン大久保選手(右)と坂元選手。左は大会主催団体ティム代表(7月21日)Photo by Sam Maruyama

  

アメリカとの決勝戦は5回コールドゲーム

 決勝は21日、アメリカとの対戦となった。1回表。日本は5番、峰の安打で2点を先制。その後、4回裏まで両チームとも無得点だった。3回裏には、1死2、3塁の場面で、先発の山根が1ボール、2ストライクとしたところで左腕の尾と交代。この打者をアウトに仕留めると、再び山根を戻し、この回を無得点に抑えた。この場面を振り返って、宇津木監督は、「左打者だったからね」とにっこり。この時点で2―0とリードしていたため、ここを抑えればいけると思ったと語った。

 

 

優勝が決まって飛び跳ねて喜ぶ山根投手(中央)と日本代表選手たち(7月21日)Photo by Sam Maruyama

 

 

 この後、5回表に日本が一挙5点をあげ、その裏、山根が無得点に抑え、5回を終了し7―0。5回を終了し7点差がついた場合はコールドゲームの規定に従い、これで、日本の優勝が決定した。今大会は、予選から全勝の7連勝で優勝を飾った。

 

 

優勝が決まった後、選手をねぎらい笑顔を見せる宇津木監督(7月21日)Photo by Sam Maruyama

 

「チームがひとつになった」今大会の日本代表  

 最優秀選手賞には、峰幸代捕手が輝いた。「この大会、みんなすごい、いい調子で、チーム作りということで、最後までいい結果を残せて、世界選手権へ向けて、チームとしていい経験ができた大会でした」と振り返った。

 

 

ネット際のボールを追いかけてきた峰捕手。右は次打者のアメリカ選手(7月21日決勝戦、対アメリカ)Photo by Sam Maruyama

 

 

 決勝では2つの大ファインプレーと大会を通して5割を超える打率でチームの優勝に貢献した山本優三塁手は最優秀ディフェンス賞を受賞。前のめりに倒れこむように3塁ゴロをアウトにした大ファインプレーに、会場は大拍手に包まれた。「昨日、同じようなやつでヒットにさせてしまったので、今日は、しっかり守れて良かったなって思います」。この大会2回目の参加。「相変わらず楽しく(ソフトボールを)できる環境だなって思います」と笑った。試合後は地元のファンに取り囲まれサイン攻めにあっていた。

 

 

大ファインプレーを2度も見せた山本三塁手。打率も5割6分と大活躍だった(7月21日決勝戦、対アメリカ)Photo by Sam Maruyama

 

 

 宇津木麗華監督は試合後、「よくやった」と選手たちをねぎらった。「自分たちのいいプレーをするんだ」と言って臨んだ試合。日本代表はカナダ入りする前に、アメリカ・カリフォルニア州アーバインで第9回USAワールドカップに出場し4位に終わった。日本代表として合宿をしないままぶっつけ本番で戦ったため、チームがまとまりきれなかった。宇津木監督は「この大会の優勝は自信になったと思います」と嬉しそうに話した。特に名前をあげたのが、先発の山根投手と山本選手。山本選手のファインプレーに「すごくいい選手。ああいうプレーをされると相手も嫌だろうなと思う」と絶賛した。山根投手は、自身が先発しての優勝経験がこれまで一度もなかったという。「今回は本人が嬉しかったでしょう」と喜んだ。

 今回主将として臨んだ大久保美紗選手。「この前の遠征の時に、チームとして一つになれなかったんですけど、このカナダカップの予選決勝と戦っていくうちにチームがどんどん一つになって勝つことができたと思います」と語った。この大会は4回連続出場。「みなさん温かくて、日本人の方も多くて。いろいろおにぎりとか作ってくれたりして、ほんとに助かりました」。来月の世界選手権は2連覇を目指して頑張りたいと語った。

  

 

決勝で先発、4回2/3を投げ優勝投手となった山根投手。7月17日予選の対カナダ戦にも先発。勝ち投手となった。最優秀投手賞にも輝いたPhoto by Sam Maruyama

 

2016年世界選手権に向けて

 トーナメントは地元チームなどが参加し8チームで戦ったが、実は今大会には国際代表チームが4チームしか参加しなかった。日本以外では、大会2位のアメリカ、3位になったカナダ、それにメキシコだ。

 

 

2塁打の河野外野手。試合中にはいつも彼女の大きな声がグランドにこだましている(7月21日決勝戦、対アメリカ)Photo by Sam Maruyama

 

 

 ソフトボール女子は8月に世界選手権が控えている。開催地はオランダ。その調整のため、今大会を見合わせたチームが多かったと大会主催者代表グレッグ・ティム氏が説明した。

 日本代表も不参加の可能性もあったという。それでも、「カナダのファンに会いたかったから」と宇津木監督。監督が現役時代から長年出場している今大会は日本にとりとても重要と出場を決めた。

 

 

イニングの合間に円陣を組む日本代表。この日は、カナダ相手に4ー2と競った試合だった(7月17日カナダ戦)Photo by Sam Maruyama

 

 

 大会関係者は「カナダのソフトボールファンは日本代表が好きだ」と日本代表の参加を歓迎する。表彰式が終わったあと、遅くまで残っていたカナダのファンは、ボールやサインペンを手に選手や監督のサインをもらうためにいつまでも待っていた。選手たちもカナダファンの暖かい声援は励みになると決勝での大声援に感謝した。

 今年は参加チームが少なかったものの、来年はきっと様相が変わる。というのも、2016年の世界選手権は同会場で開催されるからだ。

 そのため、ソフトボールシティのグランドは世界選手権仕様にアップグレードされるという。お披露目はおそらく来年のこの大会。

 2016年といえば、ブラジルでオリンピックが開催される年。残念ながら、ソフトボールは正式種目から外されたままだが、まだ望みはあるという。2020年東京五輪でのソフトボール・野球の参加に向けて、国際オリンピック委員会が再検討していると聞いているとティム代表。「そのためにも日本が優勝するのは大事なこと」と言う。

 

 

三本塁間に挟まれる市口選手(7月17日カナダ戦)Photo by Sam Maruyama

 

 

 ソフトボールが五輪種目から外れたのはアメリカだけが長年勝ち続けていたというのが理由のひとつ。そのアメリカを破って初優勝したのが北京五輪の日本。その大会を現地で観戦したというティム代表は今でもその興奮を覚えているという。現在日本は世界1位。そのすぐ下にアメリカ、オーストラリアが続く。カナダは第4位。カナダも今大会では若い選手が活躍し、いいチームになっていた。勢力図は変りつつある。ソフトボールが再び五輪へ。ファンのみならず、カナダのソフトボール関係者の願いでもある。カナダ代表の中には日本のリーグでプレーする選手もいる。カナダ国内では学生リーグ以外にプレーする組織がないからだ。日本はそうした世界の女子ソフトボール選手の受け皿にもなっている。「日本の選手のためにもなるし」と宇津木監督。17日のカナダ戦では、うっかり日本語で指示を出したら相手の選手に通じてしまったと笑っていた。

 五輪種目に決まれば、カナダソフトボール界も再び活気を帯びる。カギは日本選手の活躍と競技普及に貢献している日本リーグの存在。2016年、ソフトボールシティで開催される世界選手権までには朗報を期待したい。

   

(取材 三島直美)

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