クラゲがバンクーバー水族館に大集合
水族館の広報を担当するダニエール・フィニーさんがこの新しい展示について「クラゲは非常に魅惑的な生物です。海の中をゆったりと漂う姿に癒される人は多いと思います。また脳、骨、心臓がないクラゲの生態についてや、クラゲが大量に集まるとどんな弊害が起きるかなどクラゲについての知識を学ぶ機会となると思います」と挨拶した。
続いて、水族館スタッフによる展示物のツアーがあった。ゆらゆらと水の中で漂っているクラゲを眺めていると確かにゆったりした気持ちになれそうだ。ひときわ大きい水槽にはSpotted Jellyfish(タコクラゲ)の大群が。このクラゲはインド太平洋など暖かい水域に生息する。また、Upside-down Jellyfish(サカサクラゲ)は、海の浅い部分に大抵ひっくり返った形で生息している。プランクトンなどを食す他、自分の体の組織の中で藻を育て、そこから酸素や栄養分を得ているという。北大西洋や北太平洋などに生息するLion's mane Jellyfish(キタユウレイクラゲ)は、触手の長さが最大60m近くまで成長するものもいるとか。バンクーバー水族館にはその模型が飾られている。
展示物には他にもクラゲについて様々な知識が説明されている。
例えば、
●クラゲの体の約95%は水でできている。
●クラゲが大量発生すると漁網にからまって網が破 れるなどの被害がでることもある。
●クラゲはポリプという無性の状態と、通常私たちが目にしている有性のクラゲとの2つの形態に分かれる。多くのクラゲのポリプの状態がどんな見た目なのか分かっていないそうだ。
●Leatherback Sea Turtle(オサガメ)というカメは食 料としてクラゲを大量に食べる。ビニール袋などをクラゲと間違えて飲み込んでしまうカメも増えている。ビーチで遊ぶ時にはこうしたゴミを海に流さ ないように気をつけたい。
クラゲ料理に目覚めるカナダ人?
中国や日本などクラゲを食する人たちは多いが、ここカナダではあまりなじみがない。だが、バンクーバー周辺でも主に中国系スーパーなどクラゲを扱っている店はある。この日のメディアイベントでは、クラゲを使った料理の試食があった。
バンクーバー水族館ではOcean Wiseという自然保護プログラムを実施している。魚など海産物が大量捕獲などで減少することを防ぐことに賛同するレストランや店が加盟し、消費者にはこうした店での食事、買い物を奨励するというもの。このOcean Wiseのメンバーである2つのレストランからシェフが招かれ、クラゲ料理が披露された。
まず、Cレストランのリー・ハンフリーさんによるクラゲの “チキン”スープとクラゲサラダ。スープの中にクラゲ、サーモン、ねぎ、ハーブが入ったお洒落な一品は、チキンスープのシーフード版というところ。また、サラダはクラゲの上にきゅうりのソースをかけセロリやサラダ菜、チャイブなどが飾られたさわやかな味わい。言われないとクラゲが入っているとは気がつきにくい。下ごしらえとしてクラゲを8~10分ほど煮てから水の中に3~4時間、時折水を替えながら浸しておいたという。茹で時間が長めなのでクラゲが非常に柔らかくなり、コリコリした歯ごたえはまったくなくまさにジェリーのような状態になっている。つるつるとした食感は夏場の食事にあいそうだ。
次に重慶海鮮大飯店のロブ・ウォンさんがクラゲと鶏肉を炒めた一品と、クラゲの中華風サラダを調理した。クラゲの上にクレソンをたっぷりのせ、ごま油、しょうゆ、わさび、オレンジやレモンの汁などを混ぜ合わせたドレッシングをかけたサラダも、チキンと合わせた炒め物もコリコリとしたクラゲの歯ごたえが美味しい。中華風クラゲ料理の下ごしらえは、煮る時間が1分以内と短いためか先ほどのものよりしっかりとした歯ごたえが残っている。ただしどちらも煮た後は水に長時間浸すという点においては共通している。海水の塩分を抜くためには相当な時間が必要ということだ。
クラゲを食べるのに抵抗がない中国系の人はともかく、カナダ人にはとろとろと柔らかくなったクラゲの料理のほうが食べやすいように見受けられた。ちなみにCレストランでは近いうちにクラゲ料理もメニューにくわえる予定でいるとのこと。どれくらい受け入れられるか楽しみである。
様々な海洋生物に会いに行こう!
バンクーバー水族館ではこの特別展示のほかにも様々な見どころがある。4Dシネマ、ベルーガやイルカのショーなどは時間をチェックして見に行きたい。8月末までは開館時間が午前9時半~午後6時まで。海の中を漂うように泳ぐ不思議なクラゲの世界に浸ってみよう。
web:www.vanaqua.org
info:604-659-3474
(取材 大島多紀子)