2019年7月11日 第28号

6月29日、ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー市のロブソンスクエアーで長野県観光プロモーションイベントが開催された。長野県からは北佐久郡軽井沢町、上田市、長野市、松本市より、藤巻進軽井沢町長や各市観光協会の職員ら総勢11名が参加し、会場を盛り上げた。また、羽鳥隆在バンクーバー日本国総領事もかけつけ、イベントの様子を見守った。イベント会場では、浴衣や甲冑(侍や武士が身に着ける日本の伝統的な防具)を身に着けての写真撮影や、折り紙で作られた手裏剣を段ボールのくり抜かれた部分(的)へ投げる「手裏剣ゲーム」、回転式抽選器による抽選会等が行われ、参加者を楽しませた。北佐久郡軽井沢町は、ブリティッシュ・コロンビア州ウィスラー市と姉妹都市提携を結び、今年で20周年となる。これを記念して、北佐久郡軽井沢町が上田市、長野市、松本市を引き入れ、欧米では第一弾となる長野県観光プロモーションイベントの開催が実現したという。また、このイベントは翌日、ウィスラーオリンピックプラザでも開催された。

 

手裏剣ゲームを楽しむ参加者。子どもから大人まで楽しんだ。景品には、長野名物の葡萄やそばが描かれたトートバッグ、組紐キーホルダー、長野県をアピールするクリアファイル等が用意された

 

手裏剣ゲームで長野県をアピール

 「手裏剣ゲーム」を考案したメンバーの一人、公益財団法人ながの観光コンベンションビューローの中澤さんに話を聞いた。中澤さんは長野市からの参加。長野市のひとつの区域、戸隠といえば、忍者の里で有名だ。近年、外国人にも人気である「忍者」にまつわるゲームであれば、参加者も楽しみながら長野のことを知ってもらえるのではないかと、手裏剣ゲームを考案した。ゲームの景品はすべて長野県にゆかりのある商品を用意。「“長野市”のことを知ってもらうというよりは、“長野県”がどのような観光地かを知ってもらえればうれしいです」と語った。

 

戸隠流忍者、現る!

 戸隠そば山口屋専務取締役、山口寿文さんは、800年続いている戸隠流忍術を道場で学び、継承している忍者のひとりだ。忍者といえば、甲賀流、伊賀流、戸隠流が有名であるが、古武道として忍術が継承されているのは戸隠流だけであるという。山口さんは忍術の修行のほかに、観光プロモーション等のイベント参加や体験型忍者のアミューズメントパーク「忍者村」での活動などを行っている。「手裏剣ゲーム」の参加者には、山口さんよりプロ直伝の手裏剣の投げ方が伝えられ、会場を沸かせた。

 

侍も、現る?!

 信州上田観光協会に勤務し2年目という龍野尚子さんは、普段、長野県の他市やその他観光都市の取り組みなどを調査しながら、上田市にはどのようなアプローチがインバウンドの増加に最も効果的であるかを思案するといった業務を担当する。今回、上田市の甲冑隊から紙甲冑(紙でできた甲冑)を拝借し、侍コスチュームを参加者に体験してもらうプロモートを考えた。紙甲冑は、金属でできた甲冑と見た目はほとんど変わらないものの、1/7ほどの軽さであるため、体験型や持ち運びには便利である一方で、強い衝撃などには弱いという。大事な甲冑が壊れないように梱包の仕方を熟考したと話した。

 

夏の長野を訪れたい

 アルバータ州エドモントン市出身で、現在バンクーバー在住のDanielle Markewiczさんは、回転抽選器を回したところ、2等の長野県の「純米大吟醸 西之門」が当選し、とてもうれしそうな表情を見せた。Danielleさんは、2011年〜2016年の5年間、JETプログラム(日本の総務省、外務省、文部科学省、自治体国際化協会等の協力のもと発足した、外国青年を招致して地方自治体等で任用し、外国語教育の充実と国際交流の推進を図る事業)で外国語指導助手として福島県で働いていた。長野県の北安曇郡白馬村には、毎冬、スキーをしに訪れていたという。現在は、日系企業で働いており、研修で日本に1カ月だけ滞在する機会があった際も、日帰りで長野を訪れたというほど、長野が大好きだ。この日、アルバータ州エドモントン市に住む父親がバンクーバー市に遊びに来ており、親子でイベントに訪れた。「このイベントは知人から教えてもらいました。私は冬の長野しか知らなかったので、夏の長野も勉強したいと思って参加しました。父親も大好きな日本酒が当選して、すごくラッキーです。今日いただいた、長野県各都市のパンフレットで勉強して、今度は夏の長野を訪れたいです」と語った。

 

甲冑を身に着け侍体験

 シンガポール出身で、現在バンクーバー在住のMana Haleemさんは、SNSで本イベントを知り、友人のAbrar Al-obaidiさんたちを誘って参加した。Mana HaleemさんはJETプログラムで3年間、熊本県で外国語指導助手として働いた経験がある。長野県には行ったことはないが、日本のイベントがあると楽しみにして来たそうだ。Mana Haleemさんは特に侍コスチュームに興味を持ち、甲冑を身に着け、写真撮影を楽しんだ。

 イベント自体は大規模ではなかったものの、イベント情報を事前に知り参加した人だけでなく、通りすがりの人たちも次々に足を止め、長野についての質問をしながらイベントを楽しむ姿が印象的であった。また、記者が現役の忍者にお目にかかったのは初めてであったのだが、忍術が今でも継承されており、山口さんの師範が連邦捜査局(FBI)や中央情報局(CIA)といった組織にも教えた経験があるという話は大変興味深い話であった。日本国外で、日本のことを学べるという経験はとても貴重であると感じた。

(取材 わしのえりか)

 

忍者の山口寿文さん。大人気であった手裏剣ゲームでは、参加者に手裏剣の投げ方の指導をした

 

藤巻進軽井沢町長(右)と紙甲冑を試着した日本からの参加者(左)。紙甲冑の他に、浴衣や忍者衣装の試着体験が行われた

 

長野県観光プロモーションイベント会場で握手を交わす、羽鳥隆在バンクーバー日本国総領事(左)と藤巻進軽井沢町長(右)

 

抽選で2等「純米大吟醸 西之門」が当選したDanielle Markewiczさん(中央)。Danielleさんの父親(右)と、ながの観光コンベンションビューロー観光部の中澤氏拓也さんとの記念撮影を楽しんだ

 

長野県観光プロモーションイベントの様子。参加者は無料で回転抽選器による抽選を楽しんだ。1等に1000ドル分の旅行券、2等に長野県で造られたお酒等の商品が用意された

 

紙甲冑を試着したMana Haleemさん(右)。紙甲冑を上田市より持参した上田市商工観光部の青木卓郎さん(左)と写真撮影を楽しんだ

 

手裏剣ゲームを楽しんだMana Haleemさん(右)とAbrar Al-obaidiさん(左)

 

長野県観光プロモーションイベントの様子。赤い忍者服を着装し、参加者に長野県をアピールする軽井沢観光協会の新宅弘惠さん(左)

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。