2019年3月21日 第12号

今年もカナダセブンズがバンクーバーで開催された。今年は2年ぶりに日本代表もコアチームとして参加。14位で大会を終えた。地元開催初優勝を狙うカナダは健闘したものの10位だった。 3月9日、10日の開催2日間での観客動員は73,819人。思い思いのコスチュームに身を包んだファンがBCプレースに詰め、街はラグビーとコスチューム姿でにぎわった。

 

3月10日カナダセブンズ優勝を決めた南アフリカ

 

日本代表、東京五輪に向けてさらなる強化を

 日本代表は1日目、プールDで3試合に臨んだ。アルゼンチン、イングランド、スコットランドとの対戦では1試合1トライしか奪えず、全敗で翌日のチャレンジトロフィトーナメント準々決勝に進んだ。

 1日目を終えた後、岩淵健輔ヘッドコーチは「少しずつ階段は上っているんですけど。今日も3つ、勝てるタイミングのゲームで勝負どころでトライを取れなくて」と厳しい表情を崩さず語った。課題の一つにペナルティの多さをあげた。7人制において前後半各7分でペナルティ2分は勝敗に直結する。「自分たちのペナルティで今日もリズムを崩して」と振り返った。

 2日目第1試合ウェールズとの準々決勝では1トライも奪えなかった。ウェールズは日本が来年もこの大会にコアチームとして残るために必ず勝っておきたいチームだった。小澤大キャプテンは「自分たちの規律の部分でリズムを崩してしまった部分があった」と反省した。短時間決戦だけにリズムをつかめないと、そのままあっという間に試合は終わってしまう。格段の実力差があるという訳ではない。

 13位決定トーナメントのケニア戦ではうまく噛み合った。「ケニアではみんなすごい規律よく、しぶとくディフェンスした結果が、この結果だと思う」と今大会初勝利を分析した。「欲を言えば、昨日、一発目から(こんな試合運びを)やりたかったですね」と、ようやく笑顔を見せた。

 この日の第3戦、13位決定戦ではスペインに敗れた。前日にはニュージーランドを破るという大金星をあげたスペイン。それでも、この日本戦では15-10。圧倒的な差があるように見えて、どのチームにもチャンスがあるのがセブンズだ。

 日本はカナダセブンズ14位に終わり、2ポイントを獲得。総合順位は15位と変わらず、残り4大会での順位上昇を目指す。  小澤キャプテンは「新しいメンバーがいて、経験が少ないメンバーがいる中で、こうして勝てるということは自信がついたと思う。1年でワールドシリーズを降格しては、オリンピックなんて程遠いと思うので、ワールドシリーズ降格しないよう、1戦1戦戦っていきたい」と前を向いた。その先には東京五輪がある。「来年のオリンピックの時は、前回リオ(デジャネイロ五輪)では4位だった結果を上回れるよう、そうするとやっぱりメダルだと思うので、メダルを取れるようにチーム一丸になって強化していきたいと思います」と語った。

 岩淵ヘッドコーチは、「今いるメンバーを中心にしながら、新しいメンバーが数人加わっていく形になると思います」と来年の自国開催五輪に向けてセブンズの強化を図っていくと語った。

 

カナダは10位、ヒラヤマ選手は途中離脱

 今年こそ地元開催優勝を目指して戦ったカナダ代表。1日目は第2試合で昨年今大会優勝のフィジーに勝利し、2勝1敗で1位サモア、2位フィジーと並んだものの、サモア戦での大敗が響き得失点差でプールB3位となり、チャレンジトロフィトーナメントへの進出が決定。優勝の夢は消えた。

 しかし2日目もスペイン、スコットランドに勝利し、チャレンジトロフィ決勝でオーストラリアと対戦。キャプテンであり、ポイントゲッターであるネイサン・ヒラヤマを欠きながらも健闘した。

 今大会4勝2敗だったにもかかわらず、10位に終わったカナダ。今季はどの大会でも昨季のような高順位を達成できていないため、総合で12位に沈んでいる。今大会の手ごたえを次にどう生かすか。来年の五輪出場に向け、カナダの挑戦はまだまだ続く。

 

優勝は南アフリカ、3度目の正直

 南アフリカがようやくバンクーバーで優勝を飾った。2016年第1回バンクーバー大会はニュージーランドに、2017年第2回はイングランドに決勝で敗れた。

 今年の決勝はフランスとの対戦となった。フランスが、このシリーズ総合優勝のアメリカを下すという大番狂わせで決勝に進出。南アフリカはフィジーを破って勝ち上がった。

 決勝では格下フランスが健闘し意外にも接戦に。しかし、最後は21-12で南アフリカがカナダセブンズ初優勝を決めた。

 

セブンズシリーズ、バンクーバー大会4年延長決定

 世界10都市を回る7人制ラグビーの世界大会ワールド・ラグビー・セブンズシリーズ。シーズンは12月の第1回ドバイ大会からアフリカ、オセアニア、北米、アジアを巡り6月のヨーロッパ大会でシーズンを終了する。

 バンクーバー開催は北米大会の2都市目で、第1回は2016年、今年が4回目の開催。そして大会直前に、あと4年バンクーバーで開催されることが決定した。

 今年見逃した人はぜひ来年をチェック。来年のセブンズシリーズは2020年東京五輪直前大会になるため、このシリーズでは最もエキサイティングな年となることは間違いない。

 

セブンズシリーズ女子、カナダは五輪に向け順調

 セブンズシリーズは女子大会も開催されている。世界6都市で開催され、今年が五輪予選を兼ねている。現在カナダは総合で3位タイ。上位4チームが出場権を得るため、この調子でいけば2016年リオデジャネイロに次いで出場権を獲得できそうだ。

 今大会では、2018年にキャプテンを務めたジズリーン・ランドリー選手が会場に姿を見せ、女子セブンズの存在をアピールした。

 大会前日の3月8日は国際女性デーでもあり、大会スポンサーHSBCがランドリー選手のラグビーに懸ける生い立ちをビデオ(https://www.youtube.com/watch?v=taZ2KX4q9_E)で紹介。アスリートとしては小柄でラグビーには向かないと言われたが、情熱と努力でカナダ代表となり、現在は最多得点を更新し続けている。

 「体が小さいということは決してラグビー選手として不利なわけではない。ポジションによって向く体格があり、誰でも挑戦できるスポーツ」と語った。さらに女子に向かないスポーツはないと言う。女子だからラグビーは向かないということはない、女子がもっとスポーツで活躍できる環境を支援していきたいとも語った。

 セブンズシリーズ女子の次大会は4月19、20日福岡県北九州市で、5月11、12日にはブリティッシュ・コロンビア(BC)州ラングフォード(ビクトリア市の近く)で開催。地元ラングフォードで五輪出場権を決められるか注目される。

 

試合結果

日本代表
3月9日プールD
日本 7-24 アルゼンチン
日本 7-19 イングランド
日本 7-29 スコットランド
3月10日 チャレンジトロフィトーナメント準々決勝:
日本 0-35 ウェールズ
13位決定トーナメント:
日本 22-14 ケニア
13位決定戦:
日本 10-15 スペイン

カナダ代表
3月9日プールB
カナダ 7-38 サモア
カナダ 26-19 フィジー
カナダ 36-21 ケニア
3月10日 チャレンジトロフィトーナメント準々決勝:
カナダ 33-7 スペイン
準決勝:
カナダ 19-14 スコットランド
決勝:
カナダ 21-35 オーストラリア

(取材 三島直美/写真 斉藤光一)

 

3月9日第3戦スコットランド戦、中澤選手

 

3月9日第2戦イングランド戦

 

3月10日ウェールズ戦 大石選手

 

3月10日ケニア戦 ダメ押しのトライを決める小澤選手

 

3月10日ケニア戦 小山選手と野口選手(後方)

 

3月10日スペイン戦 本村選手と副島選手(後方)

 

3月10日この大会初勝利したケニア戦のあとインタビューに応える小澤選手

 

3月10日カナダ対スコットランド

 

3月10日スペンイン戦を終えた後にファンに手を振る日本代表

 

3月10日カナダ対オーストラリア

 

3月9日インタビューの後に、ランドリー選手。BCプレース内で(写真 三島直美)

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。