JリーグからMLSへ

キャップスへの移籍は今季からキャップスの監督に就任したレニー監督から「もう一度一緒にサッカーをしないか」と直接誘われたことがきっかけだった。日本でも他チームからの誘いもあったが、悩んだ末キャップスでプレーすることを決めた。
キャップスの印象は、「プレシーズンから一緒にプレーしてみて、素直にすごくクオリティの高い選手がしっかり集まっているなという感じ」と語る。「それを土台に監督がしっかり一つにまとめてやっていけたら面白いシーズンになるかなと個人的にはシーズン前から思っています」
その言葉通り、5月5日サンノゼ・シャークス戦に逆転勝利をおさめ9試合で5勝2敗2分、勝ち点を17に伸ばしMLS西カンファレンス4位につけている。
MLSについては、「しっかりした組織的なサッカーをするチームがいくつかあるなという感じ。個人的なスピードとか、パワーに任せた個人サッカーをする感じはしますね」という印象。ただサッカー自体のレベルを他のリーグと単純比較はできないという。国が違えばサッカースタイルも変わる。そんな中でMLS2年目のキャップスで自身がどれだけチームに貢献できるのか。彼の北米での挑戦は始まったばかりだ。


ディフェンシブMFとしてのチームでの役割

ポジションはディフェンシブミッドフィルダー。チームが果敢に最前線で総攻撃を展開していてもひとり最後列でディフェンスラインを守っている。キャップスではそんな役目を担っている。
レニー監督から声を掛けられた時、特にキャップスの中での自分の役割に対する説明はなかったという。「一昨年、一緒にやっているので、その時のプレーを僕の中から望んでいるのかなと思っていますし、自分の持っているものをそのままチームに出せれば評価されるかなと思っています」。
「どちらかというと3枚目のセンターバック」と自身のポジションを表現する。「サイドバックやオフェンシブな選手に、前で思いっきりやってもらって、ディフェンスになった時には自分がカバーするという気持ちでプレーしています」。それを監督も自分に期待しているだろうし、そういう点を信用してくれていると思うと言う。
今季開幕戦でディビッドソン選手は、試合で最も活躍した選手に贈られる“Man of the Match”に選ばれた。その時、彼について聞かれたレニー監督は、「ボール使いもうまいし、試合のリズムをコントロールできる選手。彼の実力が十分発揮されて自分としても嬉しい。(2年前一緒だったので)もちろん彼の能力は信用していたけれども。チームに良い影響を与えてくれる選手」と評価した。
自身も、「自分の落ち着きだったり、ポジショニングだったり、サッカーの運び方だったり、カバーリングだったりを評価してくれているのかなと思うので」と語っている。
ここまで9試合中8試合に先発出場。監督の信頼も厚く、選手との関係も良好だ。「今本当に楽しいです」。サッカーも、新生活もとにかく楽しいと顔をほころばせる。バンクーバーの印象を聞くと「僕は好きですね」という答え。自然やアウトドアが好きだし、多人種が入り混じる街の雰囲気も、日本食の多い点も気に入っているという。実はバンクーバーに来る前にすでに「すごいいいところだ」といろいろな人に吹き込まれて来たらしい。「その期待はいまだ裏切られてないですよ」と笑った。

今季キャップスは、「とにかく前向き」というレニー新監督体制の下、MLS2年目として新たな出発をした。そんな中で自分の役割を果たしながら、チームとして少しでも上に行きたいと話す。「新監督になって去年とは全然違う空気が流れていると思いますし、このままチームがうまくいけば、本当に今季はメジャーリーグの中でも面白い存在になれるのかなと思っています」と頼もしい言葉をファンに送ってくれた。

プロフィール

小3の時、東京でサッカーを始める。高校3年間はアメリカのサッカースクールで学び、その 後Jリーグに入団する。チームメイトからはマーカス、もしくはジュンと呼ばれているという。 1983年6月7日生まれ、東京都出身。

 

今週のホワイトキャップス
西カンファ首位サンノゼに逆転勝ちで3連勝


5月5日(BCプレース1万9271人)
ホワイトキャップス 2-1 サンノゼ・アースクエイクス

 

後半ロスタイム4分、オフサイドすれすれのからのFWハスリが放ったシュートはポールに当たりネットに吸い込まれた。劇的な幕切れは今季初の逆転勝ちとなった。

アースクエイクスは前回4月7日サンノゼでの対戦で、1点を先行したものの、後半立て続けに3失点し今季初失点初黒星を喫した相手。この日はホームで何としてもリベンジをそんな雰囲気が漂っていた。試合は序盤から激しい攻防。15分に前対戦で2得点を決められたFWワンドロウスキーに先制こそ許したものの、40分カミロからのフリーキックにゴール前の混戦でMFコフィが合わせて同点。前半終了間際の同点ゴールにチームが勢いに乗った。そして後半ロスタイム。途中出場のFWハスリが去年8月以来MLS今季初ゴールを決め、最高の形でリベンジを果たした。
「最後まであきらめないチームが理想とする形が現れた」とレニー監督。試合後マイクを向けられた選手全員が、「ファンが喜んでくれる最高の形だった」と嬉しそうに語った。
キャップスはこれで3連勝。5勝2敗2分勝ち点17で西カンファレンス4位。この勢いのまま上昇気流に乗れるか。次のホーム(19日2時開始)では現在3位シアトル・サウンダーズFCとの対戦にも期待したい。


(取材 三島直美)

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