2018年10月4日 第40号

バンクーバーの街がすっかり秋色に染まった9月。そろそろおいしいフードと極上のお酒が恋しくなる季節。そんなバンクーバーの秋を彩るイベント「バンクーバー日本酒フェスティバル2018」が今年も開催された。

 

今年は100種類以上の日本酒が勢揃いしたバンクーバー日本酒フェスティバル2018

 

日本酒ファンをうならせる、バンクーバーで最大の日本酒イベント

 今年が第3回となるバンクーバーで最大の日本酒イベント。主催はBC日本酒協会(SABC)。今年は、日本、カナダ、アメリカから21の造り酒屋が参加し100銘柄以上を紹介。これだけの日本酒の銘柄が一堂に会するイベントはほかになく、バンクーバーの日本酒ファンにとってはたまらないイベントだ。昨年から知っていたファンは、きっと待っていたのだろう。チケットは発売して早い段階で完売したという。

 SABC会長パトリック・エリスさんは、「今年はチケット販売が開始されて早くに完売したほどの人気となった」と、うれしそうに話す。20年以上にわたってバンクーバーに日本酒を紹介してきたエリスさんは、バンクーバーで日本酒が浸透しブームとなりつつある気配に、「酒フェスタ」にとって今年が指標となる年だと思っていたと明かした。「第1回、第2回ときて、これから日本酒が伸びていくか、このままで終わるかの指標となるのが今年のイベントだと思っていました」と語る。そして結果は早々のチケット完売。「今回のイベントが成功してすごくうれしい」と笑顔を見せた。

 自身は今年、日本酒造青年協議会が定める、日本酒の素晴らしさを国内外に広める人に授賞する「酒サムライ」の称号をカナダ人で初めて受賞した。これからもバンクーバーで、カナダで、質の高い日本酒を紹介していきたいという。すでに目は来年に向いている。「今年チケットが購入できなかった人は、来年は早めにチェックしてください」と笑った。

 

「酒ウィーク」も開催 日本酒の楽しみ方からビジネスまで幅広く紹介

 会場となったダウンタウン東にあるインペリアルのシックな建物は、敷居が高くなりがちな日本酒をうまく演出していた。ずらりと並んだ各酒造自慢の銘柄に、日本酒ファンはこの日遅くまで酔いしれる絶好の機会となった。正直、全種類試飲したい!というのがファンの心情だろう。しかし日本から多く参加していた蔵元から直接話が聞ける貴重な機会でもあるため、話もお酒も楽しみたいというファンにはあっという間の3時間だったに違いない。

 そして今年は新しい試み「酒ウィーク」が開催された。9月24日から「日本酒の日」の10月1日まで、バンクーバーのレストランではフードと日本酒のペアリングを紹介したり、リカーショップでのスポットライト紹介が開催された。

 フェスタ当日には、バンクーバーで日本酒を扱う関係者用にセミナーが開催された。ここでは日本酒の楽しみ方の他に、日本酒ビジネスでのポイントなども紹介された。セミナー講師はララ・ビクトリアさん。世界最大のワイン教育機関WSET(Wine & Sprit Education Trust)の免許を持つビクトリアさんは日本酒にも精通し、日本酒の良さだけではなく、楽しみ方、マーケティング、ビジネスにあった日本酒の選び方などを紹介している。「日本酒はすごく奥が深い。そのまま飲むにしても温度によって楽しみ方が変わる。どのフードとの相性もよく、主役にも引き立て役にもなれる」それが最大の魅力という。最近バンクーバーでも日本酒の需要はかなり高くなってきていると語る。

 ビクトリアからわざわざ駆け付けたカナダ最大の日本酒の品揃えを誇るというE:ne Raw Food And Sake Barのアントン・イールさんも、このイベントを楽しみにしていたと蔵元との話に花を咲かせていた。日本酒は日本国内での需要が減り、生き残りをかけて海外へ目を向けるようになったと話すのは、15年前からバンクーバーで日本酒販売に力を入れてきた新潟吉乃川株式会社代表取締役会長川上眞司さん。吉乃川はバンクーバーでの先駆け的存在だ。

 ビクトリアさんによれば、バンクーバーでは日本酒が最も重要の伸びが大きいと話す。しかも質の高い日本酒を求める人が多くなり、伸びは消費量よりも消費額に表れているという。日本酒のことを知ればもっともっと人気は上がってくる。「日本酒の良さは、日本酒そのものが語ってくれる」とビクトリアさん。もっともっと紹介できる機会があるといいと笑った。

 

BC日本酒協会(SABC)
日本酒の普及活動をするブリティッシュ・コロンビア州の団体。2013年10月1日に設立、本部はバンクーバー。現在は、酒造と販売流通を手掛ける代理店の12社が参加。酒フェスタや日本酒普及のためのイベント参加などの活動を行っている。 www.sakebc.ca

(取材 三島直美)

 

試飲会に先立って開催された日本酒セミナー

 

日本酒セミナー講師ビクトリアさん

 

SABC副会長でArtisan Sake Maker社長の白木正孝さん(右)と夫人

 

大勢の参加者でにぎわう会場の様子

 

所狭しと並ぶ酒造のブース

 

バンクーバーの造り酒屋YK3 Sake Producer の日本酒各種

 

香川県から川鶴酒造常務取締役の越田洋子さん。すでにバンクーバー市内のレストランでも提供されている人気の銘柄を紹介

 

新潟県吉乃川の取締役川上将司さん(左端)、麻衣さん(左から2番目)姉弟の応援に会長で祖父の眞司さんと祖母の浩子さんが駆け付けた。右端はエリスさん

 

インターナショナル・ワイン・チャレンジで日本酒世界1位となった、あだたら吟醸(中央)を含む奥の松酒造の日本酒

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。