2018年9月20日 第38号

9月13日、ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市内のマイケルJフォックス・シアターで宝塚歌劇団OG公演『World of Dreams』(メディアスポンサー:バンクーバー新報)が開催された。

出演は宝塚歌劇団現役引退後もディナーショーや舞台で活躍中の毬穂(まりほ)えりな、綺華(あやか)れい、紫峰七海(しほうななみ)、珠(たま)まゆらの4人。美しい衣装で歌とダンスを存分に披露し、客席に降りて握手やハイ・ファイブ!

約400人の観客を夢の世界へ導いた。

 

出演した宝塚OGのみなさん(左から)紫峰七海、毬穂えりな、綺華れい、珠まゆら

 

観客とハイ・ファイブ!

 宝塚のヒット作品『ベルサイユのばら』の男装の麗人オスカルの衣装にきりりとした立ち振る舞いの男役、綺華れいと紫峰七海。キラキラ光るピンクのプリンセス・ドレスにロングヘアーの娘役、毬穂えりなと珠まゆら。『ベルサイユのばら』より『青きドナウの岸辺〜愛あればこそ』を皮切りに『ばらベルサイユ』『すみれの花咲く頃』『ザ・レビュー』と続いた。

 このショーのプロデューサーで米国シアトル在住のフラワー咲子さんが冒頭の挨拶をし「昨年12月のシアトル公演では会場からの反応がすごかったのですが、カナダの皆さんはおとなしいですね」と観客を刺激。この直後に綺華れいが赤い衣装でさっそうと現れると、場内から歓声が沸きあがった。

 4人が歌いながらステージから会場に下りてきて、階段や通路で観客と握手やハイ・ファイブ。手を握って離さない人や、両手で受け止めて感謝のキスをした人、ひゅーひゅーと声援を送る人、目と目が合ってときめいた人など場内は興奮の嵐。劇場全体を使って観客と一体になって盛り上げる演出で、エンターテイナーとしての存在感をアピールした。

 

『男役』の魅力

 宝塚の見所はなんといっても女性が男性を演じる『男役』。ダンディーな立ち居振る舞い、低い声、娘役を持ち上げながら踊る力強さ。ロマンチックなデュエットや、娘役を抱き寄せる包容力。

 終演後に「男はこうあるべきだと思いました。正直言って負けました」と女性の友人と観に来た尾崎尚人さん(44)が興奮ぎみに語った。

 海外にはアニメファンも多いことからアニメ『美少女戦士セーラームーン』より『ムーンライト伝説』がプログラムに加わり、シルクハットをかぶった紫峰七海を囲み、娘役ふたりが軽快なテンポのリズムに乗って歌った。

 

魅せるステージ

 プリンセス・ドレスから短いドレスに変身したり髪型を変えたり、マントを脱いで黒いスーツ姿になったり、衣装替えは常に観客の目を楽しませてくれた。海外公演に合わせて、着物姿で『さくら さくら』も披露。

 演目の間には宝塚の歴史や作品を紹介する映像がスクリーンに映し出され、大劇場での迫力あるレビューや、背中に大きな羽のついた衣装、お芝居の様子などを紹介した。

 毬穂えりなと綺華れいとがペアで『コパカバーナ』、珠まゆらがディズニー映画『リトルマーメイド』の挿入歌を可憐に歌ったあと、綺華れいと『ロミオとジュリエット』を。毬穂えりなが『Time to say Good bye』を熱唱。往年の人気作品の名シーンや名曲を抜粋した2時間のショーは、夢見心地の中『明日へのエナジー』で幕を閉じた。

 アンコールは『この愛よ永遠に(TAKARAZUKA FOREVER)』で会場から手拍子。続いて『すみれの花咲く頃』のロック・バージョン。盛大な拍手とスタンディングオベーションで終了した。

 

宝塚よ、ありがとう

 台風による関西空港の被害により、急きょ成田空港から出発。それぞれが衣装と小道具でいっぱいのスーツケース2つを持ってバンクーバー空港に降り立った。その足でメディアスポンサーの弊社を表敬訪問。翌日には『コスモス・セミナー』に出向き、会員と記念撮影した。夜は、日本からやってきたファンも加わり、約20人と交流会。その合間にキャピラノのつり橋に行ったり、グランビル・アイランド散策を楽しんだ。

 終演後のインタビューで4人は、日本では公演中は静かに観るという規定があるので、観客席からの歓声を新鮮に感じたこと、舞台設定を学ぶ学生たちがボランティアで音響や照明の細かな調整に熱心に対応してくれたことに涙が出るほどうれしかったこと、米国オレゴン州から8時間運転してきてくれたファンがいたこと、そして何よりも今回カナダで宝塚を紹介できたことをうれしく思うと答えてくれた。

 1959年、宝塚歌劇団がアメリカの都市を巡演した際には、当地のクイーン・エリザベス劇場のこけら落としのひとつとして寿美花代、加茂さくら、浜木綿子ら当時のスターが舞台を踏んだ。それから59年。今回宝塚OGバンクーバー公演を終えた元タカラジェンヌたちは、翌日モントリオール公演(16日)に向けて出発した。

 

 フラワーさんが太鼓判を押した通り、期待を裏切らずたっぷりと楽しませてくれたショー。「今度日本へ行ったら、本場で宝塚を観てみたい」という声が多く聞かれたように、バンクーバーに新しく宝塚ファンが誕生したことは言うまでもない。

(取材 ルイーズ阿久沢 / 撮影 那須則子)

 

 

豪華なレビューで観客を魅了

 

それぞれのポーズ、指先、目線に注目

 

りりしい男役、紫峰七海(左)と綺華れい(右)

 

歌唱力抜群の毬穂えりな(左)と紫峰七海(右)が赤い衣装で情熱的なダンス

 

珠まゆら(左)と紫峰七海(右)がロマンチックにはじめての恋。男の包容力を感じさせるシーン

 

娘役の珠まゆら(右)をリードして踊り、最後に抱きしめる綺華れい(左)。男役の魅力たっぷり

 

アニメ『美少女戦士セーラームーン』の主題歌も。(左から)珠まゆら、紫峰七海、毬穂えりな

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。