2018年7月5日 第27号

例年、建国記念日である7月1日のカナダデーには、バンクーバーのダウンタウンでパレードが行われてきたが、今年は、グランビルアイランドで実施された。参加グループは23と規模は縮小したが、祭り好きの心意気は、今年も盛大であった。なかでも日本人グループは、他を圧倒。舞踏家の平野弥生さんが率いるYTM(YAYOI THEATRE MOVEMENT)グループが23人、沖縄太鼓のグループが5人、清野健二さんが率いるお神輿(みこし)グループ晩香坡櫻會(バンクーバーさくらかい)が、担ぎ手とサポーターをあわせて80人が参加。パレードが出発した午後1時半には祭りの歓声が、朝からの曇り空を吹き飛ばし、真夏の空に。

 

YTM メンバー全員集合(前列右から5人目が舞踏家の平野弥生さん)

 

平安時代から現代まできものの歴史絵巻パレード

 舞踏家の平野弥生さんが率いたYTMグループ23人の衣装は、これまで、平野さんが使用した舞台衣裳や花嫁衣裳、舞楽衣裳、きものを用いて、平安時代から現代のきものまで、歴史絵巻となっていた。ヘアもメイクもプロのアーティストが行った艶やかな一団で、沿道の観客も興味しんしん。よほどの専門家でなければ、日本の平安時代の衣裳などを見る機会はなく、圧倒的な数のカメラや、スマホを向けられていた。

 平野さんが付けていた能面は、"白般若面(しろはんにゃづら)"と呼ばれるもので、嫉妬に狂った女性の形相をあらわすという。初めて目の当たりにする人も多く、パフォーマンスをしながら歩く姿に、沿道の観客らが「こわい!」「ファンタスティック!」といいながらじっと見つめる姿が印象的。この能面は、彼女が自ら彫り、彩色したもの。そうした工程を『面を打つ』というが、すでに18面を制作し、自身の公演に使用したり、依頼を受けて作ったという。

 

大小さまざまのグループが練り歩いた

 二人だけのグループや、沖縄太鼓のチーム、子供たちの自転車隊、ブラジルのサンバチームのパレード、中国の武舞団による獅子舞のグループなど大小23のグループが、それぞれ民族衣装をまとい、楽器を鳴らし、パフォーマンスをしながら、練り歩いた。グランビルアイランド一周、約40分かけ、炎天下のもとを練り歩く汗だくのパレードだ。また、パレードとは別にジャズ・フェスティバルのステージや、路上ライブがあり、曲芸のステージ、ドッグラン競争、子供対象のピエロのお兄さんお姉さんによる風船アートなどなど盛りだくさん。グランビルアイランド全体がお祭り騒ぎに盛り上がっていた。

 

日本の祭りの真骨頂を見せた『バンクーバー神輿』

 海外では、ここバンクーバーが唯一となる湘南神輿を多文化混合の肩で担ぎ、神輿に取り付けられた鐶を鳴らして音頭を取りながら、『よい、よいと!』と掛け声とともに甚句を歌いながら揃いの半纏姿で、練り歩く姿に、サポーターばかりではなく沿道の観客も混じって盛り上がる。このシーンは、もう、日本の各地で見られるお祭り風景そのものだ。さらに、神奈川県茅ヶ崎地方の甚句と、それを"オー・カナダ"に替え歌にした甚句を歌いながら練り歩いたとき、カナダの人々は、「あ、これは、オラが街のお祭りだ!」と思ったに違いない。そんな愛着のまなざしで見つめ、万雷の手拍子と拍手喝采で共鳴していた。

 このシーンこそが、『晩香坡櫻會』代表の清野健二さんが希求してやまなかったことではないだろうか。「日本の文化を伝えたい、それを多文化の人々と、いっしょに楽しみたい」との思いから、お神輿を作りたいと願った。そんな熱い思いに共鳴したのが、友人でもある神奈川県茅ヶ崎に住む神輿職人の中里康則さんであった。総額で、高級乗用車1台分にもなるという神輿を魂込めて製作し、ポン!と寄付してくれた。その行為について決して多くを語らず、「車なら5、6年もすればダメになるけど、お神輿は永遠だからね」と粋で、きっぷの良さは、祭りの真骨頂だ。

 カナダデーの前日、6月30日にはバンクーバーのサンセットビーチ・パークで、禊神事(みそぎしんじ)を行ってのパレード参加であった。晩香坡櫻會は、清野代表を中心に中里康則さん、生田目謙さん、Ivan Hongさんが運営し、多文化の多数のボランティアが参加しているが、笑顔を絶やさず、事が整然と進行する。清野代表が矜持する『礼儀』、つまり日本文化の真髄は、多文化の人々の心情にも通じることの証ではないだろうか。

(取材 笹川 守)

 

般若の面を付け、舞いながらパレードをする平野弥生さん

 

きもの歴史絵巻のスターたち

 

きもの歴史絵巻のスターたち

 

きもの歴史絵巻のスターたち

 

きもの歴史絵巻のスターたち

 

きもの歴史絵巻のスターたち

 

沖縄太鼓のメンバーたち

 

愛用の自転車パレードに参加した子どもたち

 

サンバチームの艶姿

 

とにかく目立つ南米のチーム

 

中国の武舞団による獅子舞のグループ

 

バンクーバーのホッケーチーム

 

カナダのブラスバンドチーム

 

ジャズ・フェスティバルのステージ

 

かに、禊神事を

 

禊を終えた神輿の前で(左から生田目謙さん、清野健二代表、中里康則さん、Ivan Hongさん)

 

カナダ・デー当日グランビルアイランドのセメント工場前の広場での練習風景

 

櫻會のハッピデザインは、バンクーバーの海のイメージ

 

サポーターたちも笑顔で、元気に!

 

神輿の鐶を鳴らし、音頭取り

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。