2017年8月31日 第35号

腹話術師のいっこく堂さんとマジシャン緒川集人(おがわしゅうと)さん、世界で活躍する豪華二大パフォーマーが9月29日、バンクーバーで驚嘆と笑いのステージを繰り広げる。

ものまねを腹話術で演じる「ものまね腹話術」、声と時間差で口を動かす腹話術など、笑いと驚きの離れ業を披露するいっこく堂さん。

観客の頭の中に「どうして?」を連発させる鮮やかなテクニック。芸術的マジックを繰り広げる緒川集人さん。

日本のテレビ番組に多数出演、そして日本と世界各地の公演で人気を博してきた二人に話を聞いた。

 

世界18カ国30都市でその国の言語での腹話術を披露してきたいっこく堂さん

 

ロサンゼルスを拠点にして、マジックの殿堂マジックキャッスルにレギュラー出演する緒川集人さん(提供 緒川集人さん)

 

「スーパー腹話術師」の名を持ついっこく堂さん

 今年芸能生活35周年のいっこく堂さんは、1963年生まれ。沖縄県出身。高校卒業後に上京。テレビ番組「笑ってる場合ですよ!」に出演し、ものまねグランドチャンピオンに。1986年、劇団民藝に入団して舞台俳優の道を歩み始めて6年後に休団(のちに退団)。独学で腹話術を習得し、“いっこく堂“として活動開始。1998年頃からテレビ出演が増え始め、これまでにない腹話術で注目される。2000年にラスベガスで公演したのをきっかけに、その後世界18カ国30都市でその国の言語での腹話術を披露し、聴衆の歓声を巻き起こしてきた。高い技術が評価されて、文化庁芸術祭演芸部門新人賞(1999年)をはじめ多数の受賞経験がある。

—ものまねで最初に人を笑わせたのはいつですか?
 高校1年生の時、先生のものまねがバカ受けしました。

—独学で腹話術を学んだそうですが、一番大変だったのはどんなことですか?  
 ま行、ば行、ぱ行。英語で言えば、B、V、M、Pの発声です。それは今でも簡単ではありません。

—最初に体得したものまねは?
 高校生の頃「ものまねのものまね」という感じで田中邦衛さんでした。

—時間差の腹話術などのアイディアは、どのように生まれますか?  
 常に「腹話術で何かできないか」を考えているので、突然ふと思い浮かぶことがあります。

—ものまねや腹話術の技術を磨いていく中での所感を聞かせてください。
 腹話術の技術はまだまだ向上できると思っています。毎日の練習は欠かせません。ものまねは特徴をつかむこと自体が難しいのですが、さらにそれを腹話術でやらなければならないので、いつも難しいなと感じながらがんばっています。

— 腹話術を演ずることにどんな思いを持っていますか?
 やり始めた頃、腹話術は世間からは相手にされませんでした。とにかく腹話術が素晴らしい芸だということを認めてほしという思いだけで始めました。

—腹話術を始めてから印象的だった出来事は?
 一番最初にやったパフォーマンスです。まったく受けなくて悔しい思いをしました。それがあったので頑張ってこられたと思っております。

—失敗談を聞かせてください。
 人形の仕掛け(目や口を動かす)の糸が本番中に切れてしまったことです。仕方なくお客さんの前で頭を開いて仕組みを見せて、直す様子もすべてショーの一部として進めていったら、逆にお客さんは大喜びでした。

—芸名「いっこく堂」への思い入れは?
 夢の中に出てきて付けた名前です。お告げだと思っていますので、とても大切で、いっこく堂にしてよかったと思います。

 

世界トップマジシャンの座を獲得の緒川集人さん

 12歳でマジシャン柳田昌宏さんに出会い、弟子入り。14歳でストリートマジックを開始。16歳頃には企業向けのパーティーなどに出演する本格的な活動に入った。アメリカ・セントルイスでのマジックの大会で17歳にしてグランプリを受賞。さらに同年、ロサンゼルスのマジックの殿堂マジックキャッスルで初演も果たす。2002年から活動拠点をロサンゼルスに移し、マジックキャッスルにレギュラーで出演する傍ら、世界40カ国以上でマジックを披露してきた。これまでアカデミー・オブ・マジック・アーツ から、その年に最も活躍したマジシャンに贈られる「マジシャン・オブ・ザ・イヤー」を2003年以来、5回受賞するなど受賞歴多数。

 —マジシャン柳田昌宏さんからどのように学んできましたか?
 高校時代は、学校と師匠の事務所の往復で、夜遅くまでマジックショーを行う生活を送りました。師匠がテレビ番組や仕事に行くときは、荷物持ちとして現場に行き、師匠がどのようにカメラに向かい、どのようにディレクターやプロデューサー、そしてテレビのタレントさんと対応するのか、どのように時間を使って準備するのか、マジックに関連するしないに関わらず、すべてを一緒に過ごすことで学びました。

—マジックを習得するうえで一番大変だったことは?
 我慢すること。マジックと関係ないことで叱られたり、責任を取らされたり、自分が得意でないことをどれぐらい我慢しながら続けられるかというのが課題であり、大変だったことです。それができたおかげで現在の自分がいると信じています。

—辛い時にも継続する力になっていたものは?
 「マジックが好き」の一言だと思います。何が起ころうとも、挫折しようとも、その気持ちだけは変えられませんでした。考え、練習し、作り上げる行程、そして演じる楽しみは、どれをとっても面白すぎてやめられません。

—世界中で公演を行ってきて、どんな感慨を抱いていますか? 
 文化や人をゆっくりと肌で感じる時間を持てなかったことは、後悔しています。ただ、それでも世界を知れば知るほど自分が小さいことに気がつき、そんな中で自分に何ができるのかと考えることが多いです。

—マジックの指導も行っているとのことですが、自分での演技と違っての苦労や喜びは?
 自分は眠いかお腹が空く以外はずっと練習していてもそんなに苦ではないんですが、人には通じないですね。自分の物差しでは教えるのが難しいです。

—マジックを習い始める人へのアドバイスを聞かせてください。
 憧れるマジックを簡単なバージョンで習うか、またはチョットしたネタを誰かに見せて、マジックの力を実感するのが大切だと思います。価値がわからないのに練習はなかなかできないですよね。わくわくしないと練習が苦痛に変わってしまいます。

—これまでどんなマジックを開発しましたか?
 何でも作りますが、そんなに才能がある訳ではないので、面白いことと知っているトリックを合わせる感じで作ります。特にこの10年くらいは、自分が感動した出来事や話、映画のシーンなどを観察、研究し、どのように人の心を動かすマジックを作るかということに集中しています。何気ないものでも、見た人の人生の1ページにマジックが記されると信じて、真剣に考えてマジックを作り、演じています。

—これまでの失敗談を聞かせてください。
 冬にフィンランドに行った時に、道具の入ったスーツケースが現地に到着せずに、イベントが終わるまでジャケット1枚で過ごし、現地で買い集めた物だけでショーを行ったのが印象的でした。トランプやコイン、ありとあらゆるものを周りから集めて、考えて演じましたが、さすがに道具がないと、力が70パーセントくらいしか出ませんね。あれは大変でした。

—今回のバンクーバーのステージで、特に注目の技はどんなものでしょうか。
 個人的にはお客さんと絡む演技が好きなので、お客さんとのやり取りを見てほしいですが、芸術とマジックを合わせた演技や、ストーリーとマジックを合わせた演技など、道具の種類だけでなく、パフォーマンスのタイプも豊富なので、その辺も感じてもらえるとうれしいです。

—読者の人たちに一言お願いします。
いっこく堂さん「ぜひ生のステージを観にきてください。緒川集人さんとのショーはエンターテイメントとして最高峰のものにになるでしょう」。
緒川さん「僕は『マジックは芸術です』と心の中で思っていますが、見る側からすると、そう考えたら疲れてしまうので、気楽にショーを見にきてほしいです。僕の演技はファミリーフレンドリーな演技で、コメディも豊富です。その中に少しずつ、芸術の要素を混ぜていきますので、ショーを見て楽しんだ後、家に帰る頃に、またはショーの翌日にふと何かに『気づく』ような不思議な経験を皆さんにお届けしたいと思います。楽しみにしていてください」。

(取材 平野 香利)

 

読者プレゼントのお知らせ!!
いっこく堂 (スーパー腹話術師)& 緒 川集人(マジシャン・オブ・ザ・イヤー5回獲得)公演 ペアチケットを抽選で3名様にプレゼント!
9月29日(金) 
開場18:30 開演19:00
Coast Coal Harbour Hotel : 1180 W Hastings St.

詳細はパート1、5ページをご覧ください。

 

「毎日の練習は欠かせません」と語るいっこく堂さん

 

「マジックは芸術」と緒川集人さん

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。