2017年2月16日 第7号

ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市の日系文化センター・博物館において、シンディ望月さんによる個展「Rock, Paper, Scissors/石、紙、鋏」のオープニングレセプションが2月4日に行われた。2014年にシンディさんが鳥取県米子市を訪れた時に得たアイデアをもとにした作品で、1900年代から2100年を米子市とブリティッシュ・コロンビア州をタイムトラベルしていく。その中で、初期日系移民がたどった歴史を、石炭、木材、鉄といった、日系移民が従事することの多かった産業を通して感じ取ることができるようになっている。オープニングレセプションでは作品にも出てくる、かき揚げとシジミ汁がインスタレーションの一環として特別に提供され、用意された50食は完売。雪が降るなか足を運んだ来場者は見て感じるだけではなく、味わって、作品を体験することができた。展示は4月30日まで行われる。

 

シンディ望月さん(左)と日系文化センター・博物館キュレーターのシェリー・カジワラさん

 

 絵画・彫刻・映像・写真などと並ぶ現代美術における表現手法・ジャンルの1つである「インスタレーション」は、場所や空間全体を作品として体験させる芸術。今回シンディさんは、ラジオドラマ、ビデオ(アニメーション)、そして立体物を組み合わせたインスタレーションで時間と空間をタイムトラベルする不思議な世界を創り上げた。作品は3つの物語からなり、それぞれの物語がRock/石、Paper/紙、Scissors/鋏、をキーワードに過去・現在・未来と進んで、それがじゃんけん(Rock, Paper, Scissors)をするように、ぐるぐると回っていく。

 2014年、アートを通して地域の発展をめざす団体「AIR(Artist In Residence:意味は『よなご』)475」のキュレーター原万希子さんとともに、シンディさんは鳥取県の米子市を訪れた。その時に乗った船の船頭さんが何気なく、中海(鳥取県米子市、境港市、島根県安来市に接する湖)に浮かぶ無人島「萱島」を指さして、その島にはかつて『たつみ』という料亭があったという話をしてくれた。シンディさんは、この話からプロジェクトのアイデアを得て、その後も何度か米子市に足を運び、徐々に3つの作品が出来上がってきた。また、米子市や境港市からも多くの日本人が新天地を求めてブリティッシュ・コロンビア州へ移住してきたという事実もシンディさんの創作意欲をかき立てた。

 1976年、バンクーバーで生まれたシンディ望月さんは、インスタレーション、アニメーションやパフォーマンスといった多岐にわたる表現方法を使って、インタビューや記録資料を通し、歴史や家族をテーマにしたフィクションやドキュメンタリーを作成するアーティスト。特に近年は、強制収容とその影響についての作品に力を入れている。レセプションの挨拶が終わった後、作品について、そして自身について聞いた。

 

この作品の動機

 「自身のバックグラウンドにある日本とカナダの要素を使って、自分の美的意識や新しい創作スタイルを作り上げたかったことがあります。米子に行っても、カナダの足跡を見つけることができて、それがとても印象に残りました。だからカナダと日本がどのようにつながっているかをもっと掘り下げてみたかったのです」

 

日系文化センター・博物館で開催されることの意義

 「ここはギャラリーではなく博物館なので、この作品を観たお客さんが例えば『日系移民の炭鉱夫について知りたい』と思ったら、すぐ文献を調べられます。このように見に来たお客さんが日系センターの活用方法を変えてくれることも期待しています」

 

観客に伝えたいメッセージ

 「いかに私たちが過去を忘れてしまっているか、そしてその過去は何らかのかたちで現在につながっていることを知ってほしい。または、詳しく歴史をみてみるきっかけになればうれしいです」

 

芸術家になったきっかけ

 「子供のころから、アートにとても興味があり言葉ではなくて絵で意思を伝えるというタイプだったので、その道に進みました。芸術は言葉ではなくて伝えたいメッセージや問題を、違う角度から見せてくれるところにすごく惹かれます」

 

芸術家として活動を続けるのに難しいこと

 「ありますね(笑)。作品を作るだけではなくてBC州アートカウンセルに助成金を申請したりといった、プロデューサーの仕事もこなさないといけないですから」

 

今後の予定

 「3月にはバンクーバー島のビクトリアで、今度は祖母のいちご畑が政府によって没収された話をもとにしたパフォーマンスを予定しています。日系カナダ人の歴史を扱うのは辛いこともありますが、大切なことなので、1つの作品では収まらないですね」

 今年はカナダ建国150周年、そして日系人の強制収容から75年にあたる。シンディさんの作品を通して、埋もれゆく過去・歴史について思いを巡らしてみてはどうだろう。

 

個展の詳細はwww.rockpaperscissors-project.comにて。
日系文化センター・博物館では、「Rock, Paper, Scissors/石、紙、鋏」に関連した以下のイベントも予定されている。

アーティストトーク 2月18日 14時
キツラノウォーキングツアー 3月4日 10時
シンディ望月さんと原万希子さんによる対談 4月1日 14時
日曜、家族コーナー 2月26日、3月26日 4月23日 12時〜16時

(取材 福安 恵子)

 

作品の中に登場するキャラクターは日系文化センター・博物館の2階にも展示されている

 

炭鉱の様子を表すアニメーション

 

Rock/石

 

Paper/紙

 

Scissors/鋏

 

 

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