晴れ渡った青空が広がったエンパイア・フィールド。MLS 開幕セレモニーも盛大に行われた。(Photo / Sam Maruyama)

 

3月19日
バンクーバー・ホワイトキャップスFC 4-2 トロントFC (観客数22592)

先制点はキャップス。前半15分、FWハスリ(#29)が左隅にシュート。トロントGKフレイの横っ飛びの防衛も届かず、ボールはそのままゴールネットに突き刺さった。その5分後には同点に追いつかれたものの、26分、今度はMFダンフィールド(#7)が決め、再逆転した。
後半に入り、64分、FWハリス(#9)が得点してキャップス3-1とリード。さらに72分には再びハスリがゴールを決め、4-1とトロントを突き放し、試合を決めた。

「最高のスタートが切れた」

「MLSとしてこれ以上ない最高のスタートが切れた」と、試合後の記者会見でトウダーソン監督は開口一番そう語った。「多くのチャンスも作ったし、4点も入れた。もしかしたらもう少し得点できたかもしれないが、MLSデビュー戦を4-2で飾れたことは夢がかなったことに等しい。選手たちにも、チームにも満足している」と語った。
この日チームとしてMLS初得点、さらにダメ押し点と2点を挙げたハスリは、「最高だった。みんなにとって歴史的な日となった」と試合を振り返った。2点目を挙げたバンクーバー出身のダンフィールドは、「言葉にできないほどの最高の日だった」と会場に駆け付けた家族や友人、多くのスタンドのファンとともにこの日を喜んだ。

 

詰めかけたファン、開門前に長蛇の列

試合開始2時間前、エンパイア・フィールドのゲート前には、すでに長蛇の列ができ、開門を待っていた。
この日のファンは熱かった。ハスリが先制点を挙げると、大歓声が沸き起こった。それでも喜びを表現したりなかったのか、突然、どこからともなく白く丸いものがフィールドに投げ込まれた。この日各座席に用意されていた携帯ポンチョだ。まるで、金星を挙げた関取に座布団が投げられるような歓喜と興奮と祝辞のこもった、ファンの言葉にならない感情が爆発したポンチョの嵐だった。この日は4回もポンチョの嵐が吹いた。

 

25年ぶりのメジャー試合にナッシュも興奮

ファンはホワイトキャップスがメジャーに戻ってくるこの日を25年間待ち続けていた。キャップスが創設されたのは1974年。当時の北米メジャーリーグ、ノース・アメリカン・サッカー・リーグ(NASL)に所属し、79年には早くも優勝を果たしている。NASLはサッカーの神様と言われたペレがプレーするなど、一時は人気を博したが1984年を最後に閉鎖。以後、キャップスは、カナディアン・サッカー・リーグ、アメリカン・プロフェッショナル・サッカー・リーグ、ユナイテッド・サッカー・リーグなどに所属し、メジャーから離れていた。そして、2009年3月、メジャー・リーグ・サッカーへの昇格が発表され、遂にこの日を迎えた。
かつてメジャーで優勝したキャップスを記憶する往年のキャップスファンにとって、この日は格別だったに違いない。
詰めかけた満員のファンは、白地にネイビーブルーで「ホワイトキャップスFC」と書かれたスカーフを首から掛け、誇らしげにゲートをくぐっていた。
そしてチームもそんなファンに最大限の敬意と感謝を表し、関係者は口々に「今日まで支えてくれたファンと今日スタジアムで声を張り上げて応援してくれたファンに感謝したい」と述べた。
この日、NBAフェニックス・サンズに所属するカナダ人選手、スティーブ・ナッシュも応援に駆け付けた。前日には本拠地で試合を行ったばかり。それでもこの歴史的な日にここに駆けつけずにはいられなかったという。「満員のスタンドで青空の下で、ファンがうれしそうに飛び跳ねているのを見て夢のようだ」と語った。ナッシュ自身も子供の頃からのキャップスファン。新制キャップスの共同オーナーという顔も持ち合わせるが、この日ばかりは一ファンとして興奮した様子。「また北米トップリーグに戻ってこられたのがうれしい」とハーフタイムに記者の前に現れたナッシュの表情は終始笑顔だった。

東日本大震災への心遣い

この日のスタジアムでは、東北地方で起こった東日本大震災に対しての心遣いが見られた。ホワイトキャップス・ファンデーションとカナダ赤十字が協力して、この日、約20人のカナダ赤十字の人たちが募金箱を持って会場で募金活動を行った。スタジアムでは館内放送や巨大スクリーンで募金への協力が呼びかけられた。
また、後半開始早々、突然観客席に大きな日の丸が現れた。キャップス広報によると、これはこの日のためにファンが自分たちで作ったものだという。試合中にもかかわらず、観客たちの手によって大きな日の丸はスタンドを一周した。
キャップスには昨季まで、元日本代表の平野孝が3年間所属。日本、そして日系コミュニティとのつながりも深い。チームは、声高には震災への支援を主張していない。それでも、静かに日系コミュニティと被災地を思いやるキャップスとファンの思いが溢れていた。

(取材 三島直美)

今後のホーム試合予定(エンパイア・フィールド)

4月2日(土)4pm 対スポーティング・カンザスシティ
4月6日(水)7pm 対ニューイングランド・レボリューション

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