シートゥスカイの世界一の魅力を語る
バンクーバーから北に、スコーミッシュ、ウィスラー、さらにペンバートンへ。 そこには、マウンテンバイク愛好者が喜ぶ、数多くの良質なトレイルがある。 ここ数年、マウンテンバイクは世界的にうなぎ上りの大人気で、バンクーバーに住む者もそう感じていることだろう。しかし、自分の住むエリアが世界でも最高峰のMTBの聖地であることは意外に知られていないようだ。 ウィスラーへ自身のプロデュースするMTBツアーでやって来た高橋大喜さんに、その魅力について尋ねた。
Q 以前、高橋さんは、「シートゥスカイには最高の良いトレイルがある」と語っていましたが、改めてその魅力を教えてくれませんか?
A マウンテンバイカーにとって、シートゥースカイの沿線上はまさに、MTB天国といえます。ノースバンクーバー、スコーミッシュ、ウィスラー、ペンバートンはMTBライダーにとって特に外せない町で、それぞれの町にはとても魅力的な極上のバイクトレイルが存在します。
ノースバンクーバーにはマウントシーモア、マウントフロム、マウントサイプレスにバイクトレイルがこれでもかというほどたくさん存在し、スコーミッシュは、MTBビデオのフィルミングが頻繁に行なわれるほどの多彩なバイクトレイルが数多くあり、ウィスラーには世界で一番有名なバイクパークがあります。そこでは世界で一番のMTBイベントであるクランクワークスが毎年夏に開催され、世界中から多くのライダーが集まります。またペンバートンにはマウントカーリーを望む広大で魅力的なバイクトレイル群が存在します。
それだけマウンテンバイク文化が凝縮された地域というのは世界的にも本当に珍しく、有名ライダーや名作ビデオも数多く排出され、多くのメーカーの新商品のテストフィールドにもなっているほどです。シートゥースカイはマウンテンバイカーなら誰でも一度は永住してMTBを満喫したいと思う地域なのではないでしょうか。
Q なるほど。私たちが住んでいるエリアは最高のマウンテンバイクのエリアなんですね。 そこで初歩的な質問で恐縮ですが、マウンテンバイクを買いに行くと、大手チェーンストアでは500ドル以内でバイクが購入できる一方、ウィスラーのレンタル屋のお兄さんのなかには、「1000ドル以下のバイクはバイクじゃない!」とたんかを切る専門家もいますよね。私たち一般人が、マウンテンバイクを購入するには、どんなものが良いのでしょうか?
A そうですね〜、まずMTBでどんな乗り方をするかを考えてから買うことが重要ですね。それによって買う物と値段が全然変わってきてしまいます。
たとえば町乗りしかしないのなら500〜1000ドルくらいのものでも十分ですが、本格的に山を走りたいのなら少なくとも1000ドル以上は出さないと安全に楽しめません。もっと細かく言えば近所のトレイルを軽く走るだけとか、ダートジャンプだけを楽しむモデルなら1000〜2000ドルくらいのモデルが最適で、ウィスラーなどのバイクパークでガッツリとダウンヒルを楽しむならば3000ドル以上は予算がほしいところです。
MTBは用途によって値段がピンキリなので、何をするかで価格帯がガクンと変わってしまうのが大きな特徴なんです。それをわからないと何でこんなに値段差があるの!?ってなっちゃうんです。
日本人は移動の足としての日本特有のママチャリ文化に馴染みがあるので、それと比較してしまうと、こっちで楽しまれているスポーツとしてのMTBの価格は高価過ぎて理解しがたいものがあるかもしれません。
ちなみに大手チェーンストアで売られている500ドル以下のMTBは外見上はMTBですが、東南アジアなどで低価格で生産され、粗悪な品質で強度が不足しているものが多く、オフロード走行には全く向いていません。それを知らないでバイクパークに走りに行ったら深刻な怪我を負う恐れさえあるので注意が必要です。オススメできません。フレームに小さく張ってあるステッカーの文章をよくよく見てみると、「強度が不十分なため悪路を走れません」と書いてあったりします。まあホントにママチャリ感覚で近所の買い物の足としてだけに使う分には問題はないと思いますけどね。
Q 多くの方が大手チェーンストアで購入したMTBででも、オフロードに行けると思ってしまうものですが、用途に合っていないバイクは危険なんですね。勉強になります。まさに、その人の用途に合わせて、考えていけばいいのですね。
A MTBを単純な移動の手段として考えるか、はたまた趣味としてのスポーツ機材として考えるか。それがとても重要です。もし趣味として始めるのなら、どんな遊び方をしたいかで価格帯を決めて行くと後悔しない良い物に巡り会えると思いますよ。
そうなると専門的な知識が必要なので、ウィスラーのレンタル屋のお兄ちゃんの言うことは案外間違っていないかもしれないですね(笑)。
Q 先にシートゥスカイは、無数に魅力的なトレイルがあると教えていただきましたが、そう聞いてもやはり素人はどこから手を付けていいのかわからないです。そこで、何かコース例や、もしくは各エリアのオススメのコースを紹介していただけませんか?
A これからMTBを始めたい人や体験してみたい人には、ウィスラーがオススメです。スコーミッシュやペンバートンにも素晴らしいトレイルがたくさんありますが、ガイドしてくれる経験者がいないと厳しいかもしれません。トレイルが網の目のように広がっているので迷子になりかねません。知らず知らずの内に山奥に入ってしまったり、間違って難易度の高いトレイルに入ってしまい、怪我をしてしまう可能性だってあります。
その点、ロストレイク周辺のトレイルは標高差も少なく良く整備されていて、レンタルバイクでMTBを楽しんでいる家族連れをよく見かけます。町からすぐの場所にあるので手軽に楽しむには最適ですね。
さらにビレッジ内の専門店にはレンタルバイクが充実していて、これから始める方にピッタリなグレードのバイクから高級レンタルバイクまで取り揃えてあり、購入前の試乗にも最適だと思いますよ。
体力に自信がなくて登りは全くやりたくないという人には、リフトやゴンドラで上がれるウィスラーバイクパークもあるし、MTBのいろいろなライディングスタイルを楽しむことができるのも魅力の一つです。
まずはウィスラーのロストレイクで体験してみて、趣味として始めようと考え出して自分のMTBを購入したら、スコーミッシュやペンバートンのトレイルやウィスラーバイクパークに挑戦してみるのが良いのではないでしょうか。
Q なるほど、参考になります。 高橋さんは、長い間、MTBのプロとして活躍されていますが、プロでいて良かったなあ、と思うことは何ですか?
A MTBを通していろいろなところに行けることですかね。日本国内の各地はもちろん、カナダを含めアメリカ、ニュージーランドなどMTBの盛んな国でその土地の文化や風土を体験しつつライドできることが、大きな魅力の一つです。
僕は日本では海外のMTB文化を日本に広める活動、MTBパークプロデュース、ライディングクリニック開催、ウィスラーMTBキャンプをしていますが、自分の活動がシーンを動かしているということが実感できたときは、本当にやりがいを感じます。
また自分が無我夢中になって人生を掛けているMTBと言うスポーツを仕事にできていて、自分の走りや活動を支持してくれるファンの方がいることも何よりも幸せに感じることですね。
Q 自分が大好きな仕事をできるって幸せですね。 ズバリ!MTBの魅力とは?
A MTBの魅力はたくさんあります。1つめは大自然の中で楽しめること。2つめはジャンプやターンをしたり、根っこや岩のある地形をクリアするバイクをコントロールする楽しさ。3つめは自分のイメージ通りの走りができたときの達成感。そして最後に、1人でも大人数でも楽しめるスポーツであって生涯スポーツであること。
僕はスキーやスノーボードも大好きなのですが、これらって実はスキーやスノーボードに共通することなのかもしれません。なので、ウィンタースポーツやアウトドアスポーツが好きな方にはMTBは特にオススメなんです。アクションスポーツなので怪我が付き物でもありますが、まずは一度体験してもらえたら嬉しいですね。
Q 今日は、MTBの魅力や、初心者でもわかりやすいMTBのノウハウを教えていただいて、ありがとうございました。 最後に高橋さんの今後の活動、そして夢を教えていただけませんか?
A 今後の活動としては国内でのMTBパークプロデュースとライディングクリニックを中心に、夏のウィスラーキャンプを引き続き行なっていきたいです。
またシーンを発展させていくためにも、後に続く若手の育成も行なっていきたいと考えています。
夢は、日本にもカナダのような子供から大人までがMTBを楽しめる環境を作っていけたらと考えています。そのために僕は、日本にもカナダのようなMTBを気軽に乗れるフィールドが必要だと考えていて、それが今の活動であるパークプロデュース業というわけなんです。具体的な目標としては今プロデュースに携わっている「ふじてんリゾート」を「ウィスラー・バイク・パーク」のようにすることです。
ぜひ、日本の方にもカナダのような素晴らしいMTB文化を知っていただけるように、これからも頑張ります!
(取材 飯田房貴)
高橋大喜さんプロフィール
プロMTBライダー。DAIKIFREERIDE MTB LOGIC代表。
コースプロデューサー、コースデザイナー、RockyMountaincycles契約ライダー。現在では日本人として唯一のFMBA(Freeride Mountainbike Association)プロライセンスを持つライダーとして活動している。 2013年にはアジア人として初めてFMB(Freeride Mountain Bike Association)ワールドツアーのスロープスタイルのプロカテゴリーに参戦し世界ランカーとなる。 MTBフリーライドの第一人者としてフィルミングや雑誌出演、パークプロデュース業、ライディングクリニックコーチとしてもMTB普及のために活動している。
所属:A&F ROCKY MOUNTAIN CYCLES
スポンサー:ROCKYMOUNTAIN, TROY LEE DESIGNS, SDG, CHRISKING, FOX RACING SHOX, IRC TIRE, CHROMAG, INDUSTRY NINE, Guava jelly, 77DESIGNZ
公式ブログ http://www.daikifreeride.com
DAIKIFREERIDE MTB LOGICページ http://www.joyridemtbpark.com
Facebookページ https://www.facebook.com/daiki.takahashi.58 https://www.facebook.com/joyridemtblogic
photo1
photo2
この夏、ウィスラーに訪れた時のツアー参加者との記念撮影。こうした地道な活動が日本のMTB文化を支えている(写真提供 高橋大喜さん)
クランクワークスで外国人のトップ選手と記念撮影。MTBを通して、様々な国の人とも交流している (写真提供 高橋大喜さん)
高橋大喜さん