三代目 林家菊丸師匠

大名跡襲名披露バンクーバー寄席開催

笑う門には福来る 11月1日、日系センターで『三代目林家菊丸師匠大名跡襲名披露バンクーバー寄席』が開催された。演目『動物園』と古典落語『やかんなめ』に場内は大爆笑。南京玉すだれの大道芸も披露され、約280人の観客が落語家による生の舞台と日本伝統文化の素晴らしさを満喫した。

 

 

三代目林家菊丸師匠  

 

会場が笑いの渦に

 開演前の合図でもある太鼓の音とともに壇上に上がった林家菊丸師匠は「ただいま、時差ボケの真最中でございます(笑)」と挨拶。観客約280人の中には落語を生で聞くのは初めてという人も多かったが『まくら』と呼ばれるイントロ・トークで場内はすっかりリラックスした雰囲気となった。

 さらに在バンクーバー日本国総領事岡田誠司氏が挨拶の中で「総領事の話とかけて何と解く。便秘薬と解く。その心は、どちらもつまらない」と結んだ。

 菊丸師匠は、落語とは扇子と手ぬぐいを持ち、声や所作を変えてひとりで何役もこなすなど、説明も加えた上で演目に入った。 

 

この日の演目は『動物園』と『やかんなめ』 

 

 

バンクーバー寄席に向けて

 日本から菊丸師匠と同行した綱分(つなわき)安理さんは、大阪で染弥時代の師匠と知り合い、地元福岡で仲間と組んで林屋染弥久山寄席を始めた。「東京と大阪は寄席の常設小屋があり市民は映画を見に行くように日常的に寄席に行かれますが、地方ではそうはいきません。4年目の今年はすっかり落語ファンができ、皆さん毎回楽しみにしてくれています」と話す。

 東京の噺家は全国放送される機会が多いが、大阪の噺家は関西のみで、超トップにならないと全国放送に出ることは少ない。そんな中、菊丸師匠は今年の正月番組『笑点東西対抗』に西方で出演した。 綱分さんの叔母にあたる斎藤亜弥さんは帰国中に福岡で公演があると聞きに行き、大阪の繁昌亭の寄席にも行くようになり菊丸師匠との付き合いが始まった。

「師匠の林家菊丸襲名披露が9月27日にあり、お目出た続きでバンクーバー総領事館開設125周年に開演できたらと、私が会員である女性起業家協会、特にリトンかおりさんと中山佳子さんの絶大なるご協力を得て準備にかかりました。バンクーバーでは落語は久しく公演されていませんので、皆さまに古典落語を楽しんでいただけたら幸いです」。

 今公演はバンクーバー落語寄席実行委員会主催、リステルホテル・バンクーバー、コスモス・セミナー協賛ほか、日系企業・日系団体の協力により開催された。

 

アンコールとして『南京玉すだれ』の大道芸も披露。歌いながら竹製のすだれを操り、最後には鯛の形を作って大きな拍手を浴びた 

 

 

林家菊丸師匠にインタビュー

演目はその日のお客さまを見てから決めることが多いそうですね。

「持ちネタは50〜60くらいあります。1本目はわかりやすいものをと思い『動物園』を、2本目は古典落語の『やかんなめ』にしました」。

落語との出会いは?

「小学校高学年のころ中学生の姉の影響でラジオの深夜放送を聞くようになり、落語に引き込まれていきました。録音して何度も繰り返し聞いて覚え、友達に聞かせるとみんなが笑ってくれて、それが病みつきというか快感になりました。高校生のころ、将来落語を仕事にできたらと思いましたが両親からも先生からも反対され、受験校だったので三重県から大阪の大学にまず進学しましたが、毎日どこかで落語を聞き、寄席めぐりをしていました」。

どのように弟子入りしましたか?

「林家染丸師匠の人柄がにじみ出るような芸風に引かれ、楽屋を訪ねました。まず親の承諾をもらってきなさいと言われ、親は反対していましたが半年後に入門しました。内弟子として2〜3年修行したあと初舞台を踏みました」。

落語は話の流れが大切で、音や動きで演者の気を崩すことは厳禁であると聞いていますが、バンクーバーのお客さんはどうでしたか?

「オー!というノリが、やはり外国だなあと感じました。終演後、楽しみにしていましたと声をかけていただきました。バンクーバーの皆さまに、落語を通じて古き良き日本の笑いと人情をお届けできたらと思っていましたので、落語の面白さを感じていただけたのなら良かったと思います」。

 

林家菊丸師匠(中央)と『三代目林家菊丸師匠大名跡襲名披露バンクーバー寄席』開催に協力した皆さん。協賛団体コスモス・セミナー主宰の大河内南穂子さん(後列右から6番目)が「本日は皆さまに1年分の笑いを取っていただけたのではないでしょうか」と終演の挨拶をした 

 

開演の挨拶をした在バンクーバー日本国総領事岡田誠二氏。隣は司会の大和奈緒美さん 

 

 林家菊丸(はやしや・きくまる)

落語家。三代目林家菊丸。1974年生まれ。三重県出身。大阪産業大学を中退し1994年四代目林家染丸に入門し、うめだ花月シアターにて初舞台。六代目桂文枝師匠に手ほどきを受けたことをきっかけに、創作落語にも意欲を燃やしている。平成16年なにわ芸術祭落語部門新人奨励賞、25年大阪文化祭奨励賞、26年繁昌亭奨励賞受賞。26(2014)年9月27日、上方林家の由緒ある名跡『林家菊丸』を三代目として約115年振りに襲名。 

 

 

 

(取材 ルイーズ阿久沢 / 撮影 斉藤光一) 


 

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