コースト・セイリッシュ族を象徴するイエルトン・メモリアルポール


伝統的なトーテムポール

スタンレーパークのトーテムポール広場の入り口に色のない11メートルほどの一本のトーテムポールがある。これは「イエルトン・メモリアルポール」と呼ばれ、バンクーバーやビクトリア出身のコースト・セイリッシュ族による作品。作者はロバート・イエルトン氏で、現在のスタンレーパークに当る場所で生まれた母親のために作ったといわれる。象徴しているのは上から、サンダーバード、鳥の羽の間に男性の顔(家の主)、レイブン、オオカミ、オオカミに捕えられているキラーウェール(シャチ)、Guessing Game(物あてゲーム)に使う骨を持った女性である。

 

さらに広場に向かうと真ん中あたりに3メートルほどのカラフルなポールが見える。現在はレプリカが置かれている。これは「サンダーバード・ハウスポスト」で作者はクワキウトル族のチャーリー・ジェームス氏。上からサンダーバード、人間を持ったグリズリーベアー。
同じくカラフルな「エレン・ニール・ポール」はチャーリー・ジェームス氏の孫娘にあたるエレン・ニールさんの作品。高さは8.5メートルで、上からサンダーバード、シーベア、シーベアに捕まったキラーウェール、カエルを持った人間、森の女ジャイアント、レイブン。クワキウトル族のトーテムポールは一番上にあるサンダーバードの彫刻とカラフルな色使いが特徴である。

カラフルなクワキウトル族の
サンダーバード・ハウスポスト


女性彫刻家による
エレン・ニール・ポール

 

トーテムポールにどんな動物が彫られているかを知ることは、トーテムポールを理解する第一ステップと言えるだろう。動物の特徴だが、クマは耳があり、丸い鼻の穴、大きな口に歯か舌がついて、大きな手で人間等をつかんでいる。オオカミは細長い鼻、牙のある口、とがった耳、そして長く丸まった尻尾がついている。レイブンはまっすぐな強そうなくちばしに何か丸いもの(太陽)を口にくわえている。イーグルはレイブンより短いくちばしの先が下に曲がっている。サンダーバードは大きな羽、足にクジラなどをつかみ、くちばしの先が下がっていて内側にカーブしている。クジラは丸い鼻、大きい口、背中やサイドにひれがついて、額に水の出る穴がある。動物を人間と同様に大きく表現しているのは、自然界に従い、全ての生き物に対しオープンでスピリチュアルを信じる発想からである。

 

一方、トーテムポールの人間の彫刻は髪の毛、顔、体、首飾り、帽子などが特徴である。代表的な「ファミリー・トーテムポール」はスタンレーパークのミニチュア・トレインのすぐ近くにある。作者はトーテムポールの町といわれる「ダンカン」(Duncan)出身、現在バンクーバー島に住むコースト・セイリッシュ族のフランシス・ホーン氏。バンクーバー港と横浜港の姉妹港提携から10周年の記念として、横浜の帆船がある日本丸メモリアルパークに、ホーン氏の作品が送られたというエピソードもある。この「ファミリー・トーテムポール」は、上が双子の赤ちゃんを持った母親と娘、下が息子と父親。家の主である父親が下なのは、下の位置だとその目線が見る人と同じ位置になるからだそうだ。1991年に世界の子どものために設立されたらしく、作者の思いが伝わってくるようなほのぼのとした作品である。

 

 

世界中の子どものために作られたファミリー・トーテムポール

 

最近のモダンなアート

最近では、ネイティブアートも伝統アートからモダンになってきている。色使いや形もトラディショナルから離れた作品も見られるようになってきた。グランビルアイランドや町中のアートギャラリーでも最近のネイティブアートが見られる。コースト・セイリッシュ族のレスリー(lessLIE)さんは現在ビクトリア大学院で勉強している学生。彼の「ハートと二つの顔」では、バレンタインのような赤いハートと中の顔が柔らかく調和している。ベントウッド・ボックス(Bentwood boxes)は、箱が好きな人がほしくなるような高級品。ひとつひとつ時間をかけて丁寧に彫刻されたボックスは美術的で一見の価値がある。

 

ハッピーな笑顔のベントウッド・ボックス

 

バンクーバーを始めBC各地では、この他にもUBCの人類学博物館、ロイヤルBC博物館やバンクーバー国際空港、ショッピングモールなどいたる所でネイティブアートが見られる。特別なおみやげを探したり、アートを習ってみるのも楽しいかもしれない。

 

動物の種類が豊富でカラフルなしおりは
おみやげ用


レスリーさんの作品
ハートと二つの顔

 

(取材:ジェナ・パーク) 
(資料提供:スタンレーパーク、コースタルピープルス・ファインアートギャラリー、バンクーバー・ライブラリー)

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。