ろくろデモンストレーションを行うひでさん


形や色の違う抹茶碗

 

こだわりのうつわ

HiDeアートスタジオにはやわらかい太陽の光がさしていて雰囲気も明るい。この日もジャズ音楽が軽く流れていて、ふと行きつけのカフェに来たような気分にしてくれた。アトリエの壁には、ひでさんのオリジナル作品が並んでいる。彼が開発した独自のアートでトレードマークでもある、ポーセライトという透ける白いランプや置物、真っ赤な抹茶碗、個性的な急須、湯飲み、ぐい飲みなどについ見入ってしまう。一つ一つにそれぞれの思いがこめられているような作品ばかりだ。

自分だけの日本酒セット


個性的な茶器

 

ひでさんは何を考えながらこれらの作品を作っているのだろうか。まずうつわは「中味がよく見えること」が基本だそうだ。観賞に重点をおく彫刻と違い、うつわは食べ物や飲み物が入ってはじめて完成品になるという。私たちはつい外見で選ぼうとするが、外より内側が特に大事、とひでさんは指摘する。一般的に内側が大きく見えるうつわが良いとされる理由として、見た目より軽い、見込みライン(茶碗の内部の底のあたりのカーブ)が広くきれいに見えることなどが挙げられるそうだ。

抹茶碗を作るには、まず規定の形に従う必要がある。茶碗なのでお作法に則ってお茶をたてて飲めることが、大切な条件だ。さらに、お茶を注いだときの上からみた美しさや、お茶を飲み干して見た内側の美しさも必要とされる。ひでさんはそういった制約の中で高台(茶碗の底につけられた輪状の足の部分)を削ったり、見込みラインを変えたりして独自の形を見いだしていく。例えばシークレットハートという湯飲みは、お茶を注いだ時にはじめて中がハートの形だと気がつくように作られている。また、ぐい飲みは持ったときの感触に、湯飲み茶碗は飲みやすさと触れたときに熱すぎない、など「使えるアート」としてのこだわりも欠かせない。

湯飲み「シークレットハート」


体験レッスンでできあがったどんぶり

 

土と触れ合う時間を大切に

陶芸レッスンは土の空気抜きから始まる。HiDeアートスタジオではゆったりと音楽を聞きながら気分をリフレッシュしてほしい。何かを作らなければいけないということではなく、一日のひとときを楽しく過ごすような思いで来てほしいという。一回の体験レッスンでは実際に土に触れてろくろまで体験する。ろくろデモンストレーション、特にひでさんの「手」は必見である。また、ぐい飲みなど小さくて軽いうつわは意外と難しいため、初心者には多少重さのある中ぐらいのどんぶりやマグカップから始まる。個人差はあるが、一回でどんぶりを作るのが目標となる。「手で『くわがた』を作って」というような指導のもと、つい夢中になり時間の経つのも早い。さらに続けたい人には、ろくろでの形成の次の段階として好みの釉薬(うわぐすり)を選び、約4、5回でうつわを完成させるレギュラーコースがおススメ。教室は他にも陶芸パーティーから本格的に習いたい人のコースまであり、朝、昼、夜と時間も選べるのが魅力的だ。

 

ろくろデモンストレーション

 

陶芸には土と自分が一つになり、オリジナルの作品ができあがるという楽しみがある。 土に触れ、自己と向き合うだけで癒されることがあるそうだ。ストレスの多い生活の中で、言葉のいらない、心に優しい陶芸体験は貴重かもしれない。

(取材:ジェナ・パーク 写真:松永真奈美)

 

釉薬を選ぶ楽しみ

 

 

ひでさんの最新作、
教室情報が見られる。

問い合わせ先
HiDe Ceramic Works Inc.
2368 Alberta St., Vancouver
778-863-1335
www.hideart.com

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。