姑の立場の人たちからの共感の声が寄せられたのは意外な反響?
―どのようにして出版が実現したのですか?
「いずれは本を出版したい」と仕事仲間に話していたら、ブログを書き始めた方がいいと助言されたのですが、これがなかなか大変で……。助言してくださった方自身も進めたいプロジェクトをお持ちだったので、お互い「翌週会う時までに、ブログを立ち上げること」など約束しあい、それができなかったら相手にランチをおごるといった具合にプッシュしあっていったんです。
―それはいつ頃のことですか?
2010年ですね。そして出版経験者の方たちから話を伺って、その後出版のエージェントに話を持っていった結果、角川書店から出版が進められることになりました。
―製作はどんな形で進められましたか?
イラストレーターのなとみみわさん、角川の担当の方と私の三人が何時間もスカイプ(コンピューター上で行える通話サービス)で話をして、どのネタを使って、どんな展開にするかなど詳しく決めていきました。笑いの絶えないスカイプミーティングでした。ベテランのお二人にいろいろと教えていただいて、とても勉強になりました。
―マコさんが思っている人物像と、コミックで描かれた登場人物のイメージの間にずれはありませんでしたか?
原作者と漫画家が同一人物ではないので、登場人物のイメージに何らかのギャップができるのは当然だと、このプロジェクトを始める前から思っていました。私の場合は、イメージとちょっと違うけど、そっちのほうが良い……ということが多かったです。意見が分かれる場合は、3人で話し合って決めるといった感じですね。あくまで、この本は私の本ではなく、私となとみさんとの共同制作の本だと認識しています。
―マコさん自身のキャラクターについてはどうですか?
なとみさんのお力のお陰で、私を知る人たちからは、「本物と違ってコミックのマコはむっちゃいい子や」って言われています。近頃ではどうやら「ミニお義母さん化」してきているらしく、家族の男性軍(舅を含む)からは、ああならないように、気をつけるように言われています(笑)
―家族を描くことに問題はありませんでしたか?
私の中では家族の迷惑にならないようにということが大前提でした。でもコミックエッセイということで、フィクションとノンフィクションの境目のような感じですし、そもそも姑はあの性格ですから、まったく問題がなく、姑自身から「こんなネタはどう?」と提案されたくらいなんです。
―さすが豪快な姑さんですね。おしゃれに気を配る女性として描かれていますが、実際はどうですか?
お義母さんは毎月ヘアサロンに行き、ファッション雑誌は随時チェックして今年の流行を取り入れたりと、女性であることを楽しんでいますね。こうやって自分を大切にしているところは、見習いたいといつも思っています。
―ところで読者からの反応は?
意外と!なのか、やはり!なのかはわかりませんが姑層の女性から共感の声がありましたね。特に、姑が1歳にもならないザンちゃん(孫)にチョコレートマフィンを密かに食べさせていたエピソードは、「私も嫁が見ていないときに同じことをしちゃったわよ(笑)。姑なんてどこの国でも一緒なのよね」なんて言われることが多かったです。あとは、『親しき仲にも礼儀あり』というエピソードで、姑に子供の世話をしてもらうのを当然だと思わず、感謝の気持ちを時々プレゼントに託すのもいいのではないでしょうか、と書いたら「うちの娘(嫁)にこの箇所を見せます」なんて言われました。
―コミックの中にはカナダの紹介が盛り込まれていますね。これはマコさんの提案ですか?
いえ、なとみさんと角川の担当者からのアイディアです。こちらの日常の話をしている時に、お二人から「それは面白い!」と言われまして。私自身はもう何が日本とカナダの違いなのかもわからなくなってきています。
―作中のマコさんからは近頃の日本の流行語が頻繁に飛び出していますが、よく知っていましたね。
この本を読んでくれた友人たちからも絶対言われることなのですが……あれはなとみさんです。彼女は本当に愉快な方で、普段のメールのやりとりでも結構流行語が登場するんです。私の方はといえば、そのメールの言葉をインターネットで調べるほどなんですよ。
―ではレギンスの上に短パンという今風の服装も?
そうですね、こちらに13年も住んでいますので、日本の流行のファッションには非常に鈍感です。だから「今」の流行がふんだんに組み込まれた漫画原稿を最初に見たときには、大丈夫なのかな?と一瞬頭をよぎったんですが、よく考えてみると、漫画ってある意味歴史書でもあるのかなと。10年、20年後の読者が「この時代にはこんな服装をしてこんな話し方をしていた」とわかるものになっていたら、そのほうが有意義かと。
―なるほど。今もコミックになりそうなネタはたくさん生まれていますか?
はい、常に書いていますね。
―このコミックのように、日頃憤慨してしまうことも面白いネタにしてしまうと、いい形で昇華できるように思います。
物は取りようですよね。相手を変えることはできないけれど自分の見方を変えることはできますよね。
以前は、相手に何かされるとすぐ反応してしまい、後になって反省することも多かったのですが、怒ると余計なエネルギーを使いますよね。それに相手のすることに「なんてことを!」と思って切れてしまったら、その人との関係はネガティブなものになりますけど、面白いと思えば、みんなハッピーでいられますし。
―それでは夫婦の喧嘩もなさそうですね。
いや、ありますよ。でも次の日まで持ち越さないことにしているんです。夫に「『ごめんなさい』って言って」ってお願いして、「そしたら許してあげるから」と……。
―やっぱり実際のマコさんは強いですね。(笑)ところで外国人との嫁姑関係について何か思うところはありますか?
よく周りから「西洋の人が姑さんだとあっさりしていて問題がないんじゃないの?」と言われるんですけど、国籍に関係なく個人個人ですよね。実際、「日本人の嫁姑の間でもこんなことってありますよね」と読者からの感想がありました。でもそれが「外国人らしさ」を思い描いていた読者にとっては、「あれっ?」と感じたようですね。
―「外国人は〇〇」というステレオタイプな考え通りに描かれてほしかったと……。
そうなんです。でも国や人種にかかわらず、人間同士いろいろあるさという私の思いは伝わったのかなと思います。
―マコさんの家庭と仕事のやりくりについても聞かせてください。1歳児と3歳児の子育てをしながらどのように仕事をこなしているのですか?
うちには「スケジュール」というものがありまして……。7時に子供たちが起きて朝食をとった後、9時から12時まではしっかり遊ばせます。1時から3時は「クワイエットタイム」と言って、下の子はお昼寝しますし、上の子には休憩を込めて静かに一人で遊んでもらっています。その間私は仕事をしているんです。3時から5時は買い物に一緒に行ったり夕飯を作ったりして、そして二人とも8時には寝かしつけます。
―きちんと寝てくれるのですか?
寝ますよ。それで8時からは自分の時間ができるので、そこから11時までは仕事をするんです。スケジュールがあることで子供たちは次に何をするかわかって行動できているようですし、私自身も自分の時間ができるのでストレス溜め込むことなく仕事と育児を両立することができます。
―最後に読者の方にメッセージをお願いします。
私自身、子育てコミックで気分転換ができて助けられたので、ぜひこの本の笑いを息抜きに活用していただけたらうれしいです。
どうもありがとうございました。
「このコミックが出版できたのはサポートしてくれた人たちのおかげ」と原作者のマコさん |
(取材 平野香利)