〜〜〜オドラム・ブラウン・バンオープン参加について〜〜〜

 

7月27日から8月4日まで行われたこの大会に初参加した。若い選手が比較的多く出場する今大会への参加理由を、この週に行われているWTAがサンディエゴとバンクーバーしかないこと、この大会だと本選から出場でき、ITAの中では10万ドルと最高額で、ポイントも大きいこと、上手くいけば試合数もこなせ、その後に続く北米での試合に調整しやすいことをあげた。

 

 

若い選手が比較的多く出場する今大会での難しさというのはありますか。

「一つには世界トップレベルに行くために(若い選手が)ポイントを稼いでという大会であることは間違いないんですけれども、反対に私たちからすると確実にポイントを取れる場所でもあるということ。私より上のスーウェン(台湾)にしてもやはりWTAに行くと確実にポイントを稼げるという保証がないので、少しレベルを下げることによって、堅実にポイントを重ねていくということは、1年を通していくつか必要になってくるという意味合いがあります。だからといって、勝てる保証もないですけど。
10万ドルっていうのは年間通してもそれほど多くあるわけではないので、このアメリカシリーズの中で、私にとってはいいタイミングであった大会であることは間違いないです。若い選手たちがポイントを稼ごうと思っている大会の中で、やっぱり確実に勝つことの難しさっていうことはありますけれども、いい練習にはなってるかなって思っています」

 

まだ本調子じゃない、時間が空いていまひとつ調子がでないとブログに書いてありましたが?

「いや~、まだまだですね。ちょっと難しいところで。私の場合は自分の年齢的なことも考えたりすると、大きな大会の前に試合に出続けるというのも体力的に難しいし、キープするのが難しくなるし、大会数を減らそうとするとどうしても今度は感覚を失っていくので。大会に出続けると、精神的にも、体力的にも、キツイけれども、いい状態はある程度キープできるので、そこでのバランスというのが、今回はウインブルドン以来の久々の試合なので、まだちょっと感覚的には戻ってない状態が続いている中で(笑)、苦しい試合が続いていて。そういう試合をして、ふとよくなる時もあれば、やっぱりなかなか抜け出せない時もあって、今回はその抜け出せない状態が続いているというケースです」

 

〜〜〜年齢と現代テニスへの挑戦〜〜〜

 

年齢のことは必ず聞かれると思いますが、一度現役を退いて、復帰して、今、何を違いとして感じますか。

「テニス自体が90年代と今では、女子がパワーテニス、スピードテニスに変わってきているので、そこ自体が大きく変わっているというのもある中で、私自身がブランクと年齢的なことがあるっていうのは、最初は順応することもすごく簡単ではなかったですね。ただ、私の場合は90年代ですべてやるべきことはやってきているので、今はテニス自体が楽しめていることと、90年代できなかったツアーを楽しむことができていることと、今はいろんなことにチャレンジすることの楽しさっていうことを分かるようになったので、いろんな状況も環境もすべて受け入れて楽しめたらと思います」

 

ウインブルドン大会のウィリアムズ選手との試合を見ていた時に、解説者が伊達さんのフラットな90年代の打ち方にウィリアムズ選手が戸惑っているのではないかという解説をされていました。現代テニスをやっている選手と対戦していて、自分は自分のテニスをやっていくしかないっていう感じでやっているのでしょうか?

「もちろん、今から私のテニスを大きく変えるというのは難しいので、自分のできる、昔からの変わらないテニス、当然、今のテニスに対する順応するところは必要ですけれども、その中で、どこまでできるかっていうことしかできないです。特に欧米人と比べるとアジア人は体格的に恵まれているわけではないので、新しく何か、ここからパワーとパワーで向き合える筋力をつけるというのも不可能だし、それに向けたテニスに変えるという時間があるわけでもないし、それだけの体力があるわけでもないし、それを考えれば、なおさら自分のやってきたテニスっていうものが、反対にみんなが慣れてない分、生きてくる部分もあると思うので、それで、勝負することが一番自分には得策だと思います。それしかできないし、それだからどこまでできるのかというのも見てみたいし、それでいいんじゃないかなって思っています」

 

今年9月で43歳になるということで、いつまで現役を続けるのかとか聞かれると思うんですけど、自分の中ではどこが目途だと思っていますか?

「基本的な目途は過ぎていると思うんですけど(笑)。もともとこんなにやる予定でもなかったし、当然戦う場所もこんな世界のトップレベルとも思ってなかったので、目途は実はとっくの昔に過ぎ去っているはずなんです。まあ、年々、難しくはなってきているかとは思うんですけど。というのは、結局、当然やればやるだけ、自分のモチベーションも大きくなるし、強くなるし、いるポジションもみんなが目指す場所に出ているわけだし、状況的に考えれば、ほんとにまだまだ続けてもいい状況ではあるのかなっとは思うんですけれども。とはいっても、一方では家庭があり(笑)、旦那がいて、あともう少し子供を作るチャンスも残されているので、やっぱりそういうことを考えると今の状況を全てやり続けるのがいいのかというのはすごく難しい」

 

どこかで自分で納得してという時期が来るまで?

「それがくれば一番手っ取り早いんですけれども(笑)。テニスのことだけ考えると、行けるところまで行ってみたいっていう気持ちがないわけではないし。でも一方ではもう一つの生活のことを考えると本当に難しい」

 

〜〜〜バンクーバーの印象について〜〜〜

 

全然、話は変りますが、今回、バンクーバーも初めてですか?印象はどうですか?

「これまで、トロント、モントリオールは行ったことあったんですけれども、バンクーバーはなくて、初めてで。来る前に他の選手たちに、大会のことを聞いたりした時に、バンクーバーいいとこだよって、行った方がいいよって、何人かから言われて。実際来てみて、緑も多いし、山、木もあって、(夫が)アウトドア好きなので、スキーもしますし、だから、すごくいい街だなって思って。 トロント、モントリオールよりは、私的にはここがとても。日本からも近いし、彼に『バンクーバーに将来住むっていうのはないの?』って言ってるくらい。結構、想像できる街ですね」

 

日本人の読者に一言。

「でもこれ載るのは・・・」

 

来週以降なんです。

「もう(大会)終わってるんですよね(笑)」

 

知ったのが遅くてすいません・・・

「(笑)。そうですね、初めて来たバンクーバーはすごく素敵な街だし、すごく気に入ったところなので、来年なのか、テニスをやってない中でなのか、分からないんですけど(笑)、また訪れたいなって思うところであることは間違いないし、彼をどうにか説得して(笑)、旅行にだけでもせめて(笑)、訪れたいなとは思ってます。来たのが水曜日(7月24日)で、もう1週間以上はいて、ダウンタウンにも行ったりとか、空も行ったし(笑)、町を見渡したし、短い滞在の割には堪能できたかなと思っています」

 

 

インタビューした8月2日は雨で試合が中止となり、時間的に余裕があったせいか、リラックスした雰囲気で質問に答えてくれたクルム伊達選手。終始、テニスのことを楽しそうに話す笑顔が印象的だった。  今大会後には、トロントでのロジャーズカップ、シンシナティでのウエスタン&サウザンオープン、そして4大メジャーUSオープンと北米遠征が続く。まだまだ進化し続ける42歳にこれからも目が離せない。

 

(取材 三島直美)

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。