肉体を酷使する森林関係の現地での調査や研究。カナダで専門教育を受け、実地の森林調査を経験して専門職に就いた美貴さん。その軌跡を尋ねてみた。
カナダに来たきっかけは何でしたか?
私は高山市の村の出身で、村立中学校へ通っていました。その村がBC 州のペンバートンと姉妹都市提携をしていて、中3の修学旅行で10 日間の研修にカナダを訪ねました。その内の1 週間はペンバートンでホームステイでした。この時にカナダが気に入ってしまい、必ずカナダに戻ってこようと決心しました。
高校卒業後の経緯を教えて下さい。
友人のように日本での進学は全く考えていませんでした。カナダで学べることを考え、環境や森林の分野に興味を持っていました。そこで、本科への入学資格が得られるESL に通おうと、高校を卒業した年の5 月にバンクーバー島のナナイモにあるVIU の英語学校に入りました。1年間ほど英語の勉強して一番上のレベルのクラスを無事に修了し、翌年の9 月より2年制のディプロマが取れる本科コースに入学することになりました。
短大ではどのようなことを学びましたか?
この科はサイエンス&テクノロジー・プログラムスの中にあり、実際に外へ行って仕事をするための教育をするところでした。少数のクラスで20 人が入学。仕事をした経験のある年配の人も多く、クラスの中で女性は5 人だけでした。しかも、留学生は私だけ。「あなたはこのコース始まって以来2人目の留学生よ」と言われました。どんな天候でも一日中外に出て作業をし、心身共にだいぶ鍛えられました。女性だからといって庇ってもらえることはありませんでした。厳しいコースだったので脱落者も出て、最終的に2 年間のコースを修了したのは15 人でした。
どのような仕事に就きましたか?
短大時代の夏休みを利用して、BCハイドロのパワーラインの下の植物の調査の仕事をしました。そして、短大卒業後は、同じ会社に就職し、主に伐採のための下準備の仕事(伐採のための立木の価値の評価、伐採用の区画整理、生態系の調査など)をしました。遠隔地での泊まり込みの仕事が続きました。現場へは頻繁にヘリコプター/ボートで乗り付け、蛍光ベスト、ヘルメット、無線,そして、斧を片手に1日10 時間も森林の中で過ごす生活でした。自分のテントを張って10 日間山に籠もるという状況下での仕事も何度か経験しました。小さな船に仕事仲間と7人乗り込んで10 日間も過ごしたこともありました。BC州沿岸は林道が少ないのでヘリやボートでしかアクセスがない場所も多く、斜面が急で、木のサイズが大きいのです。他の地域の森林管理と比べると状況が厳しく、そして、スケールも大きい世界でした。
僻地に出向いて森林調査や測量をする現地の仕事は面白かったのですが、自分は立っている木より、横たわっている丸太(材木)に惹かれることに気付きました。実家は製材所を営んでいますが、育った過程では気付いていませんでした。肉体を酷使する仕事は長く続けることは厳しいという思いもあり、在庫管理、データ算出、伐採・出来高の管理などの内勤の仕事への希望を出しました。そして、1年半前にバンクーバー島からBC 州内陸にあるサーモンアームに移ってきました。
これからの抱負をお聞かせ下さい。
就職して1年後に移民権の申請をして晴れて移民となりました。この森林関係の分野にはR.F.T. : レジスタード・フォレスト・テクノロジスト、R.P.F. : レジスタード・プロフェッショナル・フォレスターズなど、より高い資格があります。カナダでの自分の将来を考えながら、仕事をしながら、まず、R.F.T. を修得するために勉強をしていこうと思っています。また、材木のマーケティング、セールスの分野にも興味がありますので、実務を通して学んでいきたいです。
カナダで自らの決めた目標を次々と達成してきている美貴さんのこれからが楽しみである。
(取材 北風かんな)
2012年3月15日 第11号 掲載