井出千智さん バレエダンサー
いでちさと:静岡県出身。5 歳より伊藤美智子バレエ・スタジオでバレエを習い始め、スタジオ在籍中に埼玉や東京のバレエ・コンクールに参加。日本在住時にバンクーバーのアーツ・アンブレラのダンスプログラムの芸術監督と出会い、渡加の決心をする。バンクーバーでの同プログラムでのトレーニングを経て、2011-2012 シーズンよりバレエBC の研修生となる。
バンクーバーのアーツ・アンブレラのダンスプログラムに参加した経緯は?
海外のバレエ指導法に興味を持ち始めて数年経った頃、日本で5 日間の集中バレエセミナーに参加しました。そこでアーツ・アンブレラ(以下AU)の芸術監督に出会い、彼女のトレーニング法に感激しました。セミナー最終日に彼女と直接お話をして、AU のダンスプログラムへお誘いを頂き、渡加する決心をしました。
バレエBC に研修生として入団した経緯は?
3 年間のAU 在籍時から、バンクーバーにあるバレエBCというダンスカンパニーのことがずっと気になっていました。そして、Emily Molnar が同団の芸術監督に就任したこともあり、私の心の中には、「いつかバレエBC の一団員として舞台に立ちたい」という思いが生まれていました。AUでの最終学年の卒業間近の昨年5 月、芸術監督に直接お会いした時に「研修生として来シーズンからバレエBCに来ませんか?」という申し出があり感無量でした。
現在はどのような毎日を送られているのですか?
週5 日、9:30am 〜11:00am バレエクラスを受け、その後6:15pm までカンパニーのリハーサルがあります。朝は、確実に早目にスタジオへ行き、自己流のウォームアップをひと通りして一日の始まりの準備ができてからクラスを受けるようにしています。毎日同じ事の繰り返しですが、ダンサーにとって、この朝のバレエクラスは欠かせない大切なものなのです。カンパニーのリハーサルでは、ゲストの振付家による作品の振付を行ったり、芸術監督による指導があります。私は研修生なので、まだ公演の出番は少ないです。それでも、いつチャンスがあるか分からないので、団員全員分の振付を覚えることを目標に自分の役以外のパートのリハーサルにも率先して出るようにしています。リハーサルの後は必ずクールダウンとストレッチをしてから家に帰ります。体を酷使するので、毎日のケアがとても大切です。
バレエダンサーとしての抱負は?
カナダに来てからいろいろなことに気付かさ れました。中でも大きかったのは、私が日本人であるということでした。バレエは西洋の踊りですし、当然、白人は舞台栄えもするのですが、我々日本人にしかできない踊りもあるのではないかと思うようになりました。ずっと容姿や内向的な性格にコンプレックスに感じていましたが、今は、人種は関係なく、“私にしかできない踊りをもっと深く追求したい”と思うようになってきました。
ダンサーとしても一人の人間としても、まだまだ未熟ですが、将来は、自分らしさをしっかり持ち、洗練された踊りのできるバレエダンサーになりたいです。そのためにも、自分に与えられたチャンスを最大限に活用して、自分の糧にしていきたいです。どんなに小さなチャンスでも、こちらの受け止め方次第で、とても大きなチャンスへと変えられるはずだと信じています。そして、人との出会いを大切にし、自分が今、どれだけ多くのすばらしい人々に支えられているかを忘れず、常に感謝の気持ちと共に自分の道を突き進みたいです。
バンクーバーの皆さんに一言
コンテンポラリー・バレエというジャンルの舞台を見に来たことがないという方も多いと思いますが、是非一度、バレエBCの公演へ足を運んで頂けたら嬉しいです。3 月の公演では、ヨーロッパで活躍している振付家の作品を含め、まったく異なる3作品が上演されます。今までダンスを見る機会がなかった方にもきっと楽しんで頂ける公演になると思います。
(取材 北風かんな)
バレエBC公演
『ウォーキング・マッド&2作の新作』
会期:3 月8 日(木)〜10 日(土)8:00 pm 開演
会場:市内クィーン・エリザベス・シアター
チケット:Ticketmaster :1-855-985-2787
*千智さんはAszure Barton 振付の作品に出演予定
2012年2月23日 第8号 掲載