2018年11月8日 第45号

佐藤勇大さん

 

10月5日からロサンゼルスで第1回パンアメリカン将棋大会が開かれ、アメリカ、メキシコ、ブラジル、ペルー、日本、カナダの6カ国から大人約50人、子ども約30人が出場し、3日間の決勝トーナメントに臨んだ。その中で、バンクーバーから出場した佐藤勇大さん(30)が3位入賞を果たした。

 

佐藤勇大(さとう・ゆうた):岡山県出身。2016年に永住権を取得してカナダに移住。妻とふたり暮らし。将棋四段。趣味は将棋。日系センター将棋クラス講師(毎週土曜日10時から13時)。カナダ将棋クラブ https://canada-shogi.com

 

いつから将棋を始めたのですか?

 将棋を覚えたのは小学5年生の時で、親戚のおじさんに教えてもらったのがきっかけです。高校に入って、久しぶりにやってみようかと思い将棋部に入部して、それから夢中になりました。以来、約15年間続けています。日本の将棋道場ではアマチュア四段を認定されています。

将棋の楽しさや難しい点を教えてください。

 将棋は運に左右されにくいゲームなので、正々堂々とした頭脳勝負を楽しめるのが魅力だと思います。

 苦しい局面で勝ち目がないとわかっていながら、それでも1%の逆転の可能性を信じて考え続けるのは、心が折れそうになります。そういう意味では、将棋を続けていると忍耐力が鍛えられますね。

練習はどのようにしていますか?

 基本的には家でひとりで勉強することが多いです。本を読むこと、オンラインでの対局が主な勉強方法です。

 最近ではインターネットで情報が簡単に手に入るので、海外にいても将棋が強くなる環境は整っているように思います。

あこがれの棋士はいますか?

 羽生善治先生です。ほかには、永瀬拓矢先生の将棋は勝負術がとても勉強になるので、参考にさせてもらっています。

パンアメリカン将棋大会について教えてください。

 ロサンゼルスのフレッド・ハッセ・ジュニア・コミュニティーパーク(Fred Hesse Jr. Community Park)というところで10月5日から3日間行われました。初日の5日が国別交流戦、6日が将棋大会スイス式トーナメント、7日が将棋大会決勝トーナメントで、私は5日から4日間滞在しました。

体調を整えるためにしたことはありますか?

 2カ月前から大会に向けて準備を始めました。具体的にはどのような戦略で戦うか決めたり、大会と同じ持ち時間で対局したりしました。

勝負の前にいつもすることはありますか?

 大会の朝には、やさしい問題集を解いてウォーミングアップをします。長時間頭を使うので、飴などの糖分、そして飲み物は多めに準備します。

何人の人と対局しましたか?

 3日間で約10人と対局しました。アメリカ・メキシコ・ブラジルといった北中南米のさまざまな国の人と戦うことができ、勉強になりました。

 将棋以外にも、それぞれの国や地域での生活についての話なども聞くことができ、とても貴重な経験になりました。

勝負中は、どんなことを考えていますか?

 将棋は頭脳勝負ですが、対局の最初から最後までずっと集中力を保つのはむずかしいです。なので要所ではしっかりと考え、それ以外のところで適度にリフレッシュすることを心がけています。

勝負はどのくらい時間がかかりましたか?

 一局(一試合)の将棋で約45分かかったでしょうか。

 6日のスイス式トーナメントでは朝の9時に第1試合が始まり、最終の第6試合が終わったのは夕方5時でした。

日本人以外の棋士について、何か違いや特徴はありますか?

 将棋では相手から取った駒を使うことができます。カナダではチェスをする人が多く、そういった人は土台はできているので、将棋を教えると基本的なルールは割とすぐに覚えます。しかし、取った駒を使うという点については慣れるまでに時間がかかるようで、そこは興味深いと思います。

カナダでも将棋を教えているのですか?

 今年の7月から日系センターで将棋クラスをスタートし、講師を務めています。まだ少人数ですが、今後はより多くの人が将棋を楽しめる場にしていきたいと思っています。11月17日(土)に日系センターのクラフトフェア開催中10時から13時まで、一般向けに将棋のデモンストレーションをします。

今後の予定は?

 今よりもっと実力をつけて国際大会で優勝すること、そして将棋の普及に努め、カナダの将棋人口を増やすこと。この2つが今後の目標です。

(取材 ルイーズ阿久沢 / 写真提供 佐藤勇大さん)

 

第1回パンアメリカン将棋大会表彰式(左から中井広恵女流六段、佐藤勇大さん、カロリーナ・ステチェンスカ女流1級、大野正俊全米将棋支部連合会長)(Photo by Kyoichi Ichimura, Ocean Photo Studio/WANANN, Inc)

 

第1回パンアメリカン将棋大会出場者・関係者のみなさん(後ろから2列め、右から3人めが佐藤勇大さん。その斜め右前が妻の池田晴香さん)(Photo by Kyoichi Ichimura, Ocean Photo Studio/WANANN, Inc)

 

第1回パンアメリカン将棋大会・準決勝

 

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