カナダの学生と日本企業とを結ぶ、20年余にわたる取り組み

ブリティッシュコロンビア大学に事務局を置く同プログラムは、今年で22年目を迎える。今までに870人以上の理工系の学生を日本の大手企業の研修に送り出してきた。研修期間はその内容により、短いもので4カ月、長いもので8カ月となっている。
研修先の業種は、情報通信(NTTなど)、研究開発(株式会社ホンダ・リサーチ・インスティチュート、独立行政法人物質・材料研究機構など)、製造業(JFEスチール株式会社、福井鋲螺株式会社など)ほか、多岐にわたる。

 

活気づいてきた日本に向けて出発

当日の壮行会はまず、同プログラムのジェニー・レイリー最高責任者の挨拶で始まった。チャレンジ精神旺盛で優秀な学生たちをこうやって送り出せることが、このプログラムに携わるものとして最も誇りに思うことであり、このプログラムを通じてみなさんが貴重な社会経験と異文化経験を得られることを信じて疑わないと語った。

続いて各生徒が日本語で自己紹介を行った後、岡田誠司在バンクーバー日本国総領事が挨拶。今回の日本滞在では、アベノミクス効果や、日加間の経済活動を刺激する日・カナダ経済連携協定交渉が昨年11月から開始されたことなどを受け、活気づいてきた日本を体験できるだろうと述べた。

最後に、元BC州日加協会会長のラッセル・マーク氏が挨拶。同プログラムをサポートする岡田総領事への感謝の意を述べ、乾杯の音頭をとった。

 

グローバル人材育成に貢献

同プログラムのプログラムアシスタント根本優子氏は、このプログラムは学生と受け入れ先企業の双方に大きなメリットをもたらしていると話す。学生側から見れば、最先端技術を備えた企業環境で研修を受け、さらに異文化の企業文化も体験できることは、卒業後のキャリアを考える上で大きなプラス材料となる。また企業側としては、学生とは言え最先端の知識を学んでいる、チャレンジ精神旺盛な人材が部署に配属されることにより、その部署全体のモチベーションアップや異文化とのコミュニケーションスキルアップが期待できる。
さらに、海外からの学生受け入れを考えている企業から見れば、このプログラムの事務局を通してカナダ全土から学生を募集することができるため、各大学と個別に連絡を取るなどの煩雑な手続きから開放されるメリットも大きい。グローバル人材の育成が話題となっている今日、このプログラムを多くの日本企業に知ってもらえるよう、事務局は日本でのセミナーを開くなど努力を続けている。「こうやって、在バンクーバー総領事館が私たちのプログラムを応援してくださることは、とても心強いものになっています」と根本氏。

 

大きな期待を胸に

今回出発する学生に、日本への渡航経験はと尋ねると、ほとんどが無いと答えた。それでも、日本の最先端技術の現場に参加できるチャンスは、何ものにも替えがたいと語る。またそれ以外にも、日本文化に一度は接してみたいという意見も多く聞かれた。両親がかつて日本で事業を行っていたという学生は「技術力だけでなく、とにかく日本はすごい国だ。絶対に行って自分で見てこい」と言われた、自分も今、とてもわくわくしていると心境を語ってくれた。

 

取材 平野直樹

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