2019年11月14日 第46号

日本の内閣府が実施する「歩こうカナダ、語ろうニッポン」の訪問団を迎え、各界からの参加者約45人が交流するレセプションが10月28日バンクーバーのハイアットホテルで開催された。

 

羽鳥隆在バンクーバー日本国総領事が歓迎の挨拶を述べた

 

個々の交流を促したレセプション

 会は羽鳥隆在バンクーバー日本国総領事の挨拶に続いて、門司健次郎団長と4人の団員が各自の専門と今回の北米でのプレゼンテーションのテーマを簡単に紹介。その後、参加者と団員との交流となり、各自の関心をもとに話が深められた。

 ここでは各団員のプロフィールとこの日の昼食会でのプレゼンテーション内容の一部を紹介したい。

 

製造業における日本人の強み

 梯(かけはし)慶太さんは、ガラスメーカーである日本板硝子株式会社の執行役員として人事、人材育成に携わっている。同社では、売り上げもマーケットシェアも自社の2倍規模の英国のピルキントン社を2006年に買収。それをきっかけに同社はグローバル化に舵を切った。プレゼンテーションで梯さんは買収からの14年を振り返って明確になった日本人社員の育成課題と強みを語った。「それまで外国人の上司や部下を持つ経験がなかった日本人社員にとっては対人関係で大きな苦労がありました」と、育成課題を認識した一方、日本の製造業に浸透している「整理、整頓、清潔、清掃、しつけ」の通称「5S」、また安全、品質保証、生産管理、機械のメンテナンスへの取り組みに強みがあり、忍耐強さ、慎重さといった気質に日本人の利点があると再確認できた。こうした日本人の特性を理解することで、外国企業がよりよく日本と協調、連携してビジネスを発展できるだろうと期待を述べた。

 

分散型エネルギーの普及

 黒崎美穂さんは世界の金融経済情報を提供するブルームバーグ社のエネルギーリサーチ部門で、市場の自由化、再生可能エネルギーのコストと普及予測などの分析を進めるとともに、外務省の気候変動に関する有識者会合の委員としても活躍している。そうした知識を背景に、プレゼンテーションでは分散型エネルギーに焦点を当てた話を展開。2018年に北海道胆振東部地震が起こった際に「太陽光パネルと蓄電池を導入していた家庭が、停電の被害を受けず、近隣にも電力を分け与えたことが話題になりました」と語り、家庭や企業に太陽光や蓄電池の普及が進んでいることなどを紹介。気候変動による影響で災害の発生が増える中、小規模で各地に電気の供給源が存在する分散型のエネルギーシステムが他国でも広まっていくのではと展望を述べた。

 

東アジア外交への視点

 ジョナサン・バークシャー・ミラーさんは日本国際問題研究所を含め、4つのポジションで東アジアの安全保障問題の研究を続ける、この分野でのエキスパート。北朝鮮、アメリカとの関係を今年、来年は注視していかなくてはならないこと、「カナダは北朝鮮をアジアの問題として離れて見ているが、その考えは改めていくべきである」などの自身の意見をプレゼンテーションで述べた。

 

福井県に注目を

 松中咲樹(さき)さんは、福井大学で医学を学ぶ2年生で「地元である敦賀および福井のことを紹介したい」と、歩こうカナダ・語ろうニッポン事業に参加。プレゼンテーションの中で松中さんは、福井大学病院ではあらゆる救急患者を受け入れる態勢があることや、福井県敦賀市は、第二次大戦中に杉原千畝によって「命のビザ」を手にしたユダヤ人難民がたどり着いた地であり、そのビザにはカナダ人も含まれていたことなどを、人道行為を行った杉原にフォーカスして紹介した。

(取材 平野香利)

 

「歩こうカナダ、語ろうニッポン」の訪問団の皆さんを迎えて。(写真左から)Jonathan Berkshire Miller団員、松中咲樹団員、門司健次郎団長、羽鳥総領事、黒崎美穂団員、梯慶太団員

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。