2019年7月25日 第30号

2015年に姉妹都市提携50周年を祝った北海道釧路市とブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市。その記念の年に釧路市からは蝦名大也市長をはじめとする使節団がバーナビー市を訪れ、レセプションやイベントが行われた。記者は今年6月22〜24日の日程で釧路市を訪れ、釧路市の使節団の一員として参加していた釧路公立大学事務局長(当時)の長谷川清志さんと、この度4年越しの再会を果たした。

 

くしろ湿原ノロッコ号。一緒に写真を撮る人がたくさんいた

 

いざ北の大地、北海道へ

 成田空港第3ターミナルから出発するLCCに乗って新千歳空港へ。到着時は本降りの雨だった。札幌と釧路を結ぶ特急スーパーおおぞらで約4時間、釧路に到着した。

 翌23日は終日曇り空であったものの、何とか雨はほとんど降らずにすんだ。空気は爽やかで湿度が低いためか、バンクーバー周辺と似たような気候と感じる。釧路駅から、くしろ湿原ノロッコ号という電車に乗車。広大な釧路湿原をのんびりと走るノロッコ号は人気の観光電車だ。この日も団体客を含めて多くの観光客が席を埋めていた。この電車の車窓から時には野生動物を見かけることもあるという。同じ車両に乗っている人が「あ、エゾシカ!」などと喜んでいる一方、記者は何も見つけられなかった。3つ目の釧路湿原駅で下車、長谷川さんと落ち合って細岡展望台まで歩いていく。展望台から目の前に広がる湿原を眺めるのは清々しい気分だ。そして北海道は広いなぁと思う。この後の車での移動中もひたすら直線道路が続いていたり、と北海道らしい景色をいくつも目にした。

 

釧路観光を楽しむ 

 釧路湿原の景色を楽しんだ後は、長谷川さんが車で記者たちを観光案内してくれた。まず向かったのは摩周湖。阿寒摩周国立公園にある摩周湖はロシアのバイカル湖に次いで世界で2番目に透明度が高い湖だ。湖に入り込んだり流れ込んだりする川がないため、プランクトンや土砂が入り込まないためだという。「霧の摩周湖」などとも言われており、霧が発生しやすいのは6〜9月とのことだが、記者たちが訪れた時には霧がかかっておらず、神秘的な青い湖の眺めを楽しめた。湖の周囲は急峻な絶壁になっており、湖面に下りることはできないというのも神秘的な雰囲気を助長しているようだ。展望台から覗き込むように眺める青い湖水は、吸い込まれるような美しさ。ここの展望台でエゾシマリスに遭遇、観光客から食べ物をもらっているらしく、人をあまり怖がらない。背中の縞模様が特徴のこのリスはカナダで見るグレーや黒いリスに比べるとずっと小さくてかわいらしい。

 次に硫黄山へ向かった。硫黄山は活火山であり噴煙と硫黄の臭気を上げている。ここでは、噴気孔のすぐ近くまで歩いていくことができ、黄色い硫黄の結晶を間近で見たり、勢いよく上がる噴気を見ることができる。神奈川県にある箱根山の大涌谷も噴気地帯であるが、ロープウェイから見下ろすだけであり、これほど近くで見ることができるのは驚きだった。子供たちは匂いにやや閉口していたが、温泉に慣れ親しんでいる記者は特に気にならない。

 最後に立ち寄ったのは、釧路市丹頂鶴自然公園。ここでは国の特別天然記念物に指定されている丹頂鶴を保護・増殖している。自然に近い環境で常時10羽ほどの鶴が飼育されており、一年中いつでも観察することができる。今年5月に産卵された卵が孵化しなかったとのことで、残念ながらヒナを見ることはできなかった。鶴たちが飼育されている場所を、スタッフの方が案内、説明してくれたので鶴の生体など興味深い話をたくさん聞くことができた。鶴はつがいになると一生連れ添うという。そして縄張り意識も強く、この公園でもそれぞれのつがいはフェンスで仕切られた広いケージ内で暮らしている。中でも特に縄張り意識の強い鶴がいて、人がケージの側に近づくと駆け寄ってきて威嚇する。そのためこの鶴のケージはフェンスが二重になっており、人が攻撃されないようにしているとのこと。飼育するスタッフでさえも中に入ることはできないというのだから、なかなかの猛者である。ケージには屋根がなく、以前は鶴たちも自由に飛んで行ったりすることができたそうなのだが、現在は鳥インフルエンザ対策として羽を切られているという。館内では四季折々の鶴の写真なども展示されており見ごたえのあるスポットだった。

 

釧路の魅力を垣間見た旅

 夜は釧路市街に戻り夕食を長谷川さんと共に楽しんだ。現在長谷川さんは、くしろ知域文化財団という団体に所属し、文化交流に関する仕事に携わっているという。4年前にバーナビー市でお会いして少し話をした程度だったのだが、この度の再会で丸一日観光案内していただいたりと大変お世話になった。長谷川さんがバーナビー市を訪れた際、そこで出会った人たちの優しさや思いやりがとても印象的だったという。今回の釧路訪問で記者が同じ思いを経験するということにつながった。4年前の釧路の使節団の方々との出会いから、いつか釧路市を訪れたいと考えていた記者はついにそれを実現、広大な土地と豊かな自然、そしてそこで出会った人たちの温かい歓迎に感動した。またぜひ訪れたいと思わせる素晴らしい魅力を持った場所であった。

(取材 大島多紀子)

 

とにかく広い釧路湿原。細岡展望台からの眺め

 

摩周ブルーといわれる美しい青い湖水が印象的な摩周湖

 

立ち上る噴煙、ところどころ噴出している硫黄や熱いお湯など迫力満点の硫黄山。近くにはその恩恵を受けた川湯温泉がある

 

釧路市丹頂鶴自然公園で飼育されている丹頂鶴のつがい。 オスとメスは鳴き声で見分けるのだとか

 

釧路のシンボルともいえる丹頂鶴は、マンホールの蓋などにあちこちにモチーフとして使われている

 

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