2019年7月18日 第29号
カナダ日系コミュニティーのシンボルとして求心的役割を果たしてきた日系文化センター・博物館。来年開館20周年を迎える記念の年を前に、7月20日、日系博物館が「カラサワ・ミュージアム」としてリニューアルオープンする。 14日には関係者を招いて一足早く新博物館を披露。多くの人が祝福に駆け付けた。
左から、羽鳥隆在バンクーバー日本国総領事、ロジャー・レミレー事務局長、連邦自由党アルダグ議員、NDPジュリアン議員、シェリー・カジワラ氏、唐沢良子氏、五明明子日系センター理事長、バーナビー市ハーリー市長、マクドネル市議、ワング市議
より広く、より深く、過去から未来へと続く日系博物館に
博物館キュレーターのシェリー・カジワラ氏は、今回の約3年をかけたリニューアル事業がこうしてオープンできたことに尽力してくれた全てのスタッフに感謝したいとあいさつした。
2000年にブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市にオープンして以来初めてとなる大規模なリニューアルは、奇しくもカナダ建国150周年の年に贈られた唐沢良子氏による100万ドルの寄付金をきっかけに本格的に動き出した。
以降、政府との交渉、アーカイブの整理、展示品の選択など、膨大な仕事量を一つひとつ丁寧にこなしこの日にこぎつけた。唐沢氏の貢献に感謝し「カラサワ・ミュージアム」と名付けられ、20日にはいよいよ一般公開となる。
カジワラ氏は、この日を迎えて「ホッとしています」と笑顔を見せた。展示品のほとんどが日系コミュニティーから寄付された品々で、この日が迎えられたのは皆さんのおかげですと感謝した。
しかしここは終着点ではなく始まりと言う。いろいろな角度から日系を知ってもらうために展示品を入れ替える計画で、「今回の展示のいくつかは今年12月まで展示し、来年にはまた違った展示品を披露する予定です」。
展示品は日系コミュニティーが最も苦しい時代の強制収容時代だけではなく、戦前の移民時代から、リドレス運動、戦後の新世代の移民、これからの日系コミュニティーを支える若者へのメッセージとなる、過去から未来へとつながる展示になっているという。2階にも常設展示場を設けている。それでも展示スペースには限りがあるため、充実した内容になっている日系博物館のオンライン展示もぜひ利用してほしいと語った。
現在はバーチャル・ミュージアム・オブ・カナダを手掛けている。日系の物語はまだまだこれから語られていく。
多くの人の努力と時間をかけて完成したミュージアムだから価値がある
唐沢氏は「これからの若者たちに、この『カラサワ・ミュージアム』が忘れてはならない過去の歴史を語りかける力になると信じています」と語った。過去から未来への原動力となるように願っていると祝福の言葉を贈った。
ミュージアムの完成を見て「ありがたいです」と感想を述べた。日系プレースを完成するまでに多くの人が関わり、オープンして20年近く多くの人の努力でここまで継続してきた。そして博物館のリニューアル。一人が資金をポンと出せば完成するものではない、「多くの人が努力と時間をかけて出来上がったミュージアムだからすごくありがたいです」と語った。
日系文化センター・博物館理事長五明明子氏はあいさつで、日系カナダ人の歴史を常設するという夢のようなプランを実現できたことに、唐沢氏の寄付に感謝し、多くのスタッフの3年近くの努力を労い、感謝の言葉を述べた。連邦新民主党(NDP)ピーター・ジュリアン議員(ニューウエストミンスター-バーナビー選挙区)からCertificate of Congratulationsを受け取ると満面の笑顔を見せた。
7月末で事務局長を退任するロジャー・レミレー氏は日系センターが担っている責任というのは非常に大きなもので、博物館の完成を見て、日系カナダ人だけではなく、在留邦人も合わせて広く日系コミュニティーとしての未来は明るいと思うと語った。
その未来を引き継ぐ8月から事務局長に就任するケーラ後新門フォスター氏は、今回の博物館のリニューアルは「未来に向けてのドアを開いたという感じです」と言う。多くの人にさまざまな「日系」を紹介することで、日系とは何かを問い、過去の記憶、遺産、文化を統合していける役割を担えればいいと思うと語った。
日系コミュニティーの奥深さを伝えるミュージアムに
この日の出席者から「カラサワ・ミュージアム」オープンを前に祝福の言葉を贈られた。
全カナダ日系人協会(NAJC)会長ロレーン・オイカワ氏は自身の家族が日系プレース設立に関わったこともあり個人的に思い入れがあると笑ったが、カナダの日系文化・歴史を代表する博物館は日系の物語を語る場所として、強制収容だけではなく、1800年代まで遡る移民の歴史と、戦後、そして現在の日系の素晴らしさを含めた奥の深い「日系」を伝えるミュージアムであることを願っていると語った。
バーナビー市マイク・ハーリー市長はバーナビー市に日系センターがあることを誇りに思う、多様性がバーナビー市の力であり、「今日、この式典に出席できたことをうれしく思っています。おめでとうございます」と語った。
連邦自由党からはカナダ民族遺産・多文化主義省パブロ・ロドリゲス大臣に代わってジョン・アルダグ議員(クローバーデール-ラングレー選挙区)が出席、日系コミュニティーの存在は多様性と寛容力と豊かな多文化主義、コミュニティー遺産がカナダを強くする証明と述べた。連邦政府はカナダ文化スペース基金から50万ドルを提供している。
ブリティッシュ・コロンビア州政府からは雇用・貿易・技術省ブルース・ラルストン大臣が出席。日系コミュニティーが守ってきた遺産を「カナダの宝」と称え、過去を忘れるものは必ず同じ過ちを犯すという言葉が示すように歴史の記憶というのは重要なものと語った。歴史というのは決して閉じられることはなく、その過程を進化させていくものであり、新博物館もその役割を果たすと期待すると語った。
在バンクーバー日本国総領事館羽鳥隆総領事は、博物館を見学した感想を初期の移民者が持参した虚無僧の衣装の展示に「日本を忘れないように日本のものを持って来たということが印象的でした」と語った。「日系とは」という説明にも興味を持ったという。バンクーバーは日系カナダ人と在留邦人が一緒になって日系コミュニティーを築いている稀な地域。これからもカナダの人々と日本をつなぐ活動を一緒にしていきたいと語った。
日系文化センター・博物館
6688 Southoaks Crescent, Burnaby BC V5E 4M7 https://centre.nikkeiplace.org/
カラサワ・ミュージアム
7月20日(土)1:30〜5pm グランドオープニング
この日に限り入場料無料(通常は5ドル、NNMCCメンバーは無料)
開館時間:火-土: 9:30 AM - 5:00 PM
(取材 三島直美)
スピーチで笑顔を見せる唐沢氏
連邦議会を代表してジュリアン議員からCertificate of Congratulationsを手渡される五明理事長
博物館オープンの祝福に駆け付けたNAJCオイカワ氏(左)とBC州政府ラルストン貿易大臣(中央)、博物館のカジワラ氏
新事務局長フォスター氏(左)と7月末で任期を終えるレミレー事務局長
100万ドルを寄付した唐沢氏への感謝を込め「カラサワ・ミュージアム」と命名される
博物館内バンクーバー朝日関連展示品前で。2017年日系強制収容レガシープロジェクト実行委員会委員長サイモト氏(左)とタシメ博物館館長エラン氏
リドレス運動に関する展示
博物館にあるギフトショップ