日系社会の歴史を見つめた『窓』ーそして、今後は未来を見つめて
バンクーバー日本語学校並びに日系人会館は、1906年に設立され、2度目の現在の建物が建築されたのが1928年。元日本人街であったこの地にあるこの建物は、第2次世界大戦時カナダ政府が没収した資産の中で、戦後、日系人に返還された唯一の記念的建造物。
その建築当初の窓は、日系人社会のさまざまな変遷の歴史を見つめた『窓』として象徴的な存在であることから、今回、移設保存されることになった。
セレモニーのメインイベントは、戦前卒業の大先輩たちと、「こどものくに」の児童によるお祝いの儀式。記念すべき移設の窓の前で喜び合う姿は、過去と未来をつなぐ感動的なシーンであった。
しゃれた帽子をかぶり、ユーモアを混ぜながら在バンクーバー日本国総領事伊藤秀樹氏から「日本語教育、日本文化振興の拠点として、ますますの拡充を心強く思う」旨の祝辞があった。
本間真理校長が「ここが、卒業生にとっては懐かしい場所として、また、子供たちにはいつまでも思い出に残る場所になってほしい」と語るように、今回の改築を機にさまざまな目標を設定し、取り組んでいる。

さらなる飛躍を目指して目標設定
バンクーバー日本語学校及び日系人会館は、1906年の創立以来、教育、文化、コミュニティへの貢献を理念としているが、改築を機に、さらなる飛躍を目指した目標を設定している。
その目標のひとつである、幼児教育部門「こどもの国」は、BC州認可の日本語プリスクール、デイケアとなり、2012年9月にリニューアルオープンすることとなった。改築によって保育施設用のスペースが拡充し、新たに65人分の入所定員枠を拡大することができた。プリスクール、デイケアの施設不足の昨今、地域社会への貢献度が評価される。
また、ソーラーパネルの設置など環境にやさしい施設を設置。エコ、緑の教育観念で将来活躍する人材を育てる。
さらに、改築後は所有する多くの歴史的記録を展示し、日系人、日系コミュニティの果たした役割などを後世に伝える施設となっていく予定。
こうした具体的な目標を設定し、改築設計デザインを建築家のジェームズ・バートンさんに依頼(氏は、歴史的建造物保持、修復建築家として著名)。
改築工事もいよいよ仕上げの段階となり、バンクーバー・ダウンタウンのイーストサイドに、画期的な保育施設が実現しようとしている。

 

(取材 笹川守)

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