2019年6月20日 第25号

リッチモンド市のスティーブストン仏教会で6月9日、同仏教会と日本語認知症サポート協会の共催で『もしものときに役立つノート〜エンディングノートworkshop〜』が実施され、85人が出席した。(メディアスポンサー:バンクーバー新報)

 

本講座とは別件であるが、4月21日にスティーブストン仏教会で開催された茂木健一郎氏講演会への寄付の一部が、この日、日本語認知症サポート協会に寄付された

 

終活に目を向けた二日間

 本講習会は、5月5日に同仏教会で開催されたイベントとともに、人生の最期をどう迎えるかを考えるイベントとして企画された。5月のイベントでは、ガンでの余命宣告を受け入れて終活に励む人物と、本人の意向を支援する家族のドキュメンタリー映画『エンディングノート』が上映され、そして同仏教会の生田開教使が「終活は“現活”」であると、現在を生きる視点の重要性を説く講演を行った。

 6月9日のイベントでは、シニアのメンタル分野で患者と家族のケアに当たるアンダーソン佐久間雅子さんが作成したエンディングノートが参加者全員に配られ、雅子さんによって書き方がわかりやすく解説された。

 印象的だったのは参加者の年齢層の広さ。参加の動機を尋ねると「認知症を発症した家族に終活への意識が乏しくてもどかしい」「子どもたちに負担をかけたくない」といった言葉が返ってきた。

 

代理人手続き「今日明日にでも取り組んで!」

 日加両方の視点を盛り込んだ特製エンディングノートには、公的証明書の情報(例・パスポートや免許証の番号、日本の本籍地や年金番号)、健康関連(入院歴、服用中の薬など)、カナダや日本で所有する財産情報ほかの項目が細かく設けられていた。それぞれの情報の必要性を紹介する雅子さんが、参加者へ即日取り組むように力説したのがEnduring Power of Attorney(財産金銭管理の任意代理人)とRepresentation Agreement (医療代理人同意書)の書類手続きだ。

 

Enduring Power of Attorney

 共同名義の銀行口座でない限り、カナダでは本人以外、口座から金銭を引き出すことはできない。また例えば携帯会社の解約といったことも、本人以外には対処できない契約である場合が多い。病に倒れて判断能力を失った患者の家族が金銭面で大変な状況に陥る場面を、雅子さんはケアの現場で何度も見てきた。

 こうした困った事態を避けるため、本人の判断能力があるうちにEnduring Power of Attorney(財産金銭管理の任意代理人)の書類を作成し、弁護士か司法書士(ノータリーパブリック)で法的効力を持つよう手続きすることが重要だ。

 

Representation Agreement

 医療代理人同意書は医療・看護・介護の判断のための代理人指定の文書。こちらは必要情報を書くだけで有効だが、少しでも記載内容にミスがあると無効となるため、弁護士か司法書士のもとで手続きすることが推奨された。

 

エンディングノートは誰のためか

 会の最後に雅子さんは、命が誕生する時に出産準備をするように、人生の締めくくりを迎える時にも、命に対する同じ価値観を持って準備することを勧めた後、「本人の思いが家族に伝わっていないと、見送った後の家族が『これでよかったのだろうか』と後悔をします。ぜひ周りの方のためにエンディングノートを作ってください」とメッセージを送った。

 参加者からは「自分では考えつかないことがたくさんあった」「講師の方が親身に考えてくださってありがたい」と声が聞かれた。

 ちなみに先述の代理人の書類は、その人の状況に応じて要不要、必要書類も違う。この書類に関して、日本語認知症サポート協会では、7月4日(木)、午後1時から司法書士の眞鍋恭子さんを講師にバンクーバーで「おれんじカフェ」を開く。リッチモンド市での休日開催も検討中だ。また同市で8月18日に最期の瞬間を思い描く「おれんじカフェde看取りーと」のイベントも計画している。

(取材 平野香利)

 

幅広い年代から関心が寄せられた

 

エンディングノートの作成と解説に当たったアンダーソン佐久間雅子さん

 

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