2019年6月13日 第24号
今回の旅行中、どこへ行ってもギリシャ料理を堪能した。オリーブ油を使う料理が多いが、それほどしつこさがなく、程よくハーブや香辛料が使われ、また素材が新鮮で、料理の種類も豊富だった。メニューを見ると一見値段が高そうだが、税金もサービス料も込みなので、かえってありがたい。それに、たいていのレストランでは、メインの料理を食べ終わった後、デザートとリキュールをサービスで出してくれたのも嬉しい。そういう習慣のようだ。
ロードス市旧市街城塞
さて、最後の訪問地はロードス島。クレタ島からはアテネ経由で飛行機を乗り継がなければならなかった。地図で見ると、この島はトルコにほど近いところに位置している。最も近いトルコの半島とは、20キロメートル足らずの距離で、ロードスの空港からもその半島をくっきりと望むことができる。
今回の旅行に出かける前に、何年も前に読んだ「ロードス島攻防記」(塩野七生著)を読み返した。16世紀のロードス島は、聖ヨハネ騎士団が占領していた。フランス、スペイン、イタリア、イギリス、ドイツなどの十字軍国家の騎士(実際は修道士)からなるこの騎士団は、トルコのオスマン帝国の攻撃からこの島を守るため、堅固な城塞を築きあげた。しかし、スレイマン1世の大軍に包囲され、ついに陥落した。
ロードス市の旧市街には、今でもこの城塞がとても良い状態で残っていて、高さ10メートルの城壁が半円形に4キロメートルにわたっているのをみることができる。その一部、また城壁の外堀は歩くことができ、当時の攻防戦に想いを馳せながら城壁の厚さや見張り塔を見るのは興味深い。
旧市街には聖ヨハネ騎士団が残した建物や町並み、港があり、1日かけてゆっくり見て回った。ブーゲンビリアやハイビスカスの花が色鮮やかに街を飾っている。また、港から見る海は、水が透きとおり、光によってさまざまな碧色を見せ、とても美しい。
ロードス市からバスで1時間半のところにある町、リンドスに向かった。ここには古代ギリシャのアクロポリスがあり、バスがリンドスに近づくと、アクロポリスとその丘の下に広がる白壁の街並みが目に飛び込んできた。アクロポリスへは徒歩、またはロバで上がる。私はロバを利用することにした。乗り心地は良いとは言えないが、息を切らせずに済み、助かった。
アクロポリスでは、神殿や柱廊など、紀元前の遺跡が見られる。個人的にはアテネやロードス市にあるアクロポリスより興味深かった。そして、この丘からの景色は絶景だ。街並みがすべて見渡せるほか、近くにある2つのビーチや、遠くに広がるエーゲ海の美しさは言葉にできないほどだ。
リンドスに行く場合は、ここに一泊することをお勧めしたい。アクロポリスの美しい夜景が見られるからだ。ライトアップされた丘は、町のどこからでも見ることができ、まさに幻想的。長い歴史の中でこの丘が見てきたものを想像しながら眺めていると、時代をタイムスリップするようだ。
最後にギリシャの人たちについて。言葉の違いもあるせいか、街で出会う人たちはそれほど愛想が良くなかった。レストランやお土産店の人は別だが。しかし、ちょっとギリシャ語で挨拶すると、表情が一変してにこやかになることがしばしばあった。一度はクレタ島の村で、通りかかった家の前で声をかけると、庭まで案内してくれ、レモンの木からもぎ取った新鮮なレモンを私のバックパックに入れてくれた。また、一度はロードス島で丘の上にある修道院まで坂道を上がっている時、下りてきた人に話しかけると、道で摘んで持っていたきれいな黄色い花を、私に半分差し出してくれた。楽しい旅の思い出は、やはりその土地の人たちとの触れ合いだと実感する。
(投稿 西島美智子)
ロードス島リンドス
前菜のオリーブ、タラモサラダ、 タコのカルパッチョ