2019年5月9日 第19号

日本式鍼灸の情報を伝える北米発の冊子「ノース・アメリカ・ジャーナル・オブ・オリエンタル・メディスン」(NAJOM)が創刊から25周年を迎え、世界各国から購読会員100人が集まり、4月27〜29日の三日間バンクーバー市内のホテルで記念イベントが開催された。

 

(写真左から)イベントのコーディネートや講師などで関わったシェリル・コウルさん、スティーブン・ブラウンさん、水谷潤治さん、船水隆弘さん、松峰理真さん

 

日英両語で情報発信

 1994年7月に創刊されたNAJOMは、日本と各国の鍼灸師がそれぞれの実践研究を世界に紹介する冊子である。一つの記事を日本語と英語で掲載しており、発行は年3回。最新号の2019年3月号では記事の執筆者が30人、購読者は500人を超え、購読者の在住国はアメリカ、イギリス、ドイツ、ニカラグア、イスラエル、トルコを含めた23カ国に及ぶ。今回の記念イベントでも日本、イギリス、オランダの第一線で活躍する鍼灸師が講師となり、日英両語の通訳入りで講習が行われた。NAJOM発行責任者であるバンクーバー在住の水谷潤治さんに話を聞いた。  

−創刊のきっかけは?

 私は日本で鍼灸の学校を卒業後、すぐにカナダにやってきたため、勉強する機会がほしくて仲間に声をかけました。そして皆が集まらずとも学べるようにと冊子を作ることにしたのです。  

−日本式の鍼灸の情報発信を中心に発信されているそうですが、その背景は?

 日本は海外からいろんなことを取り込み、それを日本人に合うようにアレンジしています。鍼灸も同じで、例えば今回の講師が指導する、刺さずに撫でるように使う鍉鍼(ていしん)の鍼は非常に精巧な作りで扱い方も繊細です。そしてこれが精神的な症状に特に効果を上げています。日本人は過敏症なタイプの人が多いため、こうした治療が合うのです。独自の特徴を持った日本式の鍼灸ですが、日本から海外に発信されている情報はほとんどありません。北米に暮らす者として、ぜひこうした日本発の鍼灸の情報を伝えていけたらと思っています。

 

アフリカ・ウガンダの人たちの結核治療に貢献

 このNAJOMから思いがけぬ展開を見せた事例を紹介しよう。水谷さん自身が日本式の「お灸」の実践法や効果をNAJOMに連載したところ、各国の読者が興味を示し、指導を求める声が相次いだ。そして水谷さんはこの20年ほどで、ニューヨークをはじめとするアメリカの主要都市、ドイツ、イギリス、スイス、スペイン、ポルトカル、オーストラリアほかから依頼され、各国で講習を開き指導に当たってきた。そうした中で、灸の結核患者への効果に注目したのがNAJOM会員でイギリス人のマーリン・ヤングさん。アフリカでは結核で1日に2000人の人が命を落とすといわれている。そこでヤングさんはイギリスのNPO「モクサアフリカ」を立ち上げ、ウガンダ共和国で灸の実践を開始。「足三里のツボ」に灸を据えただけでウガンダの結核患者の生存率が確実に高まった。この実践と成果を紹介しようと水谷さんとヤングさんは2016年に日本各地の大学を回った。そして、このモクサアフリカの実績は2019年3月25日放映のNHKのテレビ番組『東洋医学ホントのチカラ』で取り上げられている。ヤングさんは本イベントで登壇し、「この世界が人類にとって住みよい場所になるように」と研究成果を伝えた。こうした水谷さんの発起による地道で継続的な日本の鍼灸情報の発信は、世界を変える一歩につながっている。 

(取材 平野香利)

 

鍉鍼(ていしん)の紹介を行う船水隆弘さんの講習を真剣に聴き入る参加者

 

創刊号は10人だった執筆者が現在は30人に。日本式鍼灸が北米の人たち向けに改良されることを期待して、冊子の名前に「ノースアメリカン」を入れている

 

 

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