まさしく琴線をゆさぶる大正琴の調べ
「琴」といえば、あの長尺の古典和楽器を思い浮かべるが、大正琴は鍵盤(キー)を左手で抑え、ピックで弦をはじいて演奏する仕組み。弦は金属製で、2~12本弦のタイプものがあるが、6本弦が一般的。長さ約80センチ余り。その名の通り、大正時代に名古屋の森田五郎氏が誰もが気軽に楽しめるように、と考案した弦楽器。今では日本全国に100万人以上の愛好者がいるといわれる。
今回来加の「琴生流」は、5大流派のひとつで、日本全国に2万人の会員がいる(本部は名古屋)。これまで、国内各地ではもちろん、ヨーロッパ各地、オーストラリア、中国、ニューヨークのカーネギーホールでの演奏会を開催。カナダでは初公演。「琴生流」設立30周年を記念してのことであった。
懐かしの抒情曲、演歌、ポピュラー、ラテン音楽まで14曲を独特の音色で演奏。音色はマンドリンに近いが、それ以上に心を震わせる。
『オーカナダ』の演奏の時、誰からともなく起立して口ずさむ人々、そして『日本の子守唄』『ふるさと』の曲に目頭を押さえる人・・・大正琴の旋律が聴くものの琴線を奏でたのだろうか。

音楽教育、さらに生涯学習にもうってつけ
大正琴に用いる楽譜は、数字で表した「数字譜」。キーにも数字が記されていて、数字譜に書かれた数字のキーを左手で押し、弦をはじくだけ。誰もが簡単にメロディを奏でることができる。この取り組みやすさから、中学校の音楽教育にも多く取り入れられている。また、数字を合わせて遊びながら楽しめるとあって幼児の音感教育にも適しているという。
さらに、世代を超えた生涯学習にもうってつけ。単音だから誰もが簡単になじむことができるが、やがて情感をも表現しようとやみつきになる。そんな奥深い楽器なのである。
今、日本全国に広がる中、今後は海外にも・・・。家元の加藤昭代氏は「ここバンクバーでもぜひ大正琴に親しんでいただきたいものですね」と意欲を語っていた。

 

(取材 笹川 守)

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