2019年3月21日 第12号
日本と北米をつなぎ若者たちの交流を促す「カケハシ・プロジェクト」。2018年度参加者の報告会が3月14日、在バンクーバー日本国総領事公邸で行われた。
同プロジェクトでブリティッシュ・コロンビア州から日本滞在を経験したのは、リッチモンド市H.J.キャンビー・セカンダリー・スクールの15人、ジャパンボウルメトロバンクーバー大会優勝者2人、サイモンフレーザー大学(SFU)の17人、BC日本語弁論大会優勝者。日本からは大阪大学の13人がバンクーバーに滞在した。
報告会では写真や映像を用いて参加者がそれぞれに体験談を紹介。日本の習慣や食べ物、歴史、先端テクノロジーに驚いた経験やホームステイ先での楽しかった思い出を披露した。なかには流ちょうな日本語で紹介する大学生もいて、日本への関心の高さをのぞかせた。
ジャパンボウル優勝者ジェシカ・ユンさん(左端)とBC日本語弁論大会優勝者ロン・ガオさん(右端)。羽鳥隆総領事と一緒に
一番の思い出はホームステイ先での触れ合い
滞在中の一番の思い出では、ホームステイ先で経験した人との触れ合いをあげた学生が多かった。
今回初めて日本を訪問した高校生エリオット・エバンズさんは、ホームステイ先の家族と一緒に和太鼓を山の上で演奏したのが一番の思い出と語った。練習のために駐車場のような場所で叩いたのだという。「音がかなり大きいから近所迷惑にならないようにということだったと思う。でもその時の家族の人のうれしそうな表情が印象的だった」と語った。家族の出身地南米のチリには行くことがあるが、「アジア、特に日本は敷居が高く手の届かない遠いところという印象で、こんなチャンスはないと思って参加することにしました」と笑顔を見せた。
SFUのローザ・アセロさんは、日本の文化や言葉が好きで、日本語も10年くらい学習している。すでに二度ほど日本に行ったことがあったが今回は特別な経験だったと語った。思い出に残っているのはやはりホームステイ。「豆腐作りに挑戦したんです。私は料理があまり得意じゃないので、お母さんは喜んでくれていると思いますよ」と笑う。今回の経験は「自分が育った環境とは全く異なる文化の中で過ごして、自分の国で当たり前と思っていたことが違って見える経験でした」。豆腐の味は「すごくおいしかった」と笑った。
バンクーバーに滞在中だった大阪大学の学生は、4日間を過ごし日程の半分を終了したところだった。福谷咲奈さんが応募したきっかけは、アイヌ民族に興味があることから、カナダで差別されてきた歴史を持つ先住民族への関心と比較だったと語った。滞在中はBC州都ビクトリアの州議事堂、ロイヤルBC博物館、リッチモンド市ムラカミハウスなどを訪れ、BC州の歴史に触れた。滞在後半はSFUの学生らと交流する予定と学生同士の交流を楽しみにしていた。
カケハシ・プロジェクト
羽鳥隆在バンクーバー日本国総領事は、日本で経験したことをバンクーバーに帰って来て友達や周りの人に話してくれるのが、若者の日本への理解が進む近道だと思うと語った。そしてホームステイの人気ぶりに「ほとんどの皆さんがホームステイが良かったって言ってますからね」と驚いた様子。外務省にはこのプログラムを続けてほしいし、もっとカナダからの人数を増やしてほしい、そして「ぜひともホームステイは受け入れてほしい」と報告したいと語った。
カケハシ・プロジェクトは2012年から開始。日本と北米の若者の交流促進のため外務省が実施している。滞在は8日間で、政治、文化、経済、人々との交流を中心にプログラムが組まれている。日本では日本国際協力センター(JICE)が、カナダではアジア・パシフィック・ファンデーション(APFC)が協力している。
APFCトロントの中村クリスティンさんによると、2018年度にカナダから日本を訪問したのは114人。この日報告した高校生、SFU学生らも今年1月から2月にかけて訪問した。
中村さんはカナダに滞在する学生には、カナダが誇りとするチャリティ精神や日系カナダ人の歴史を垣間見られるプログラムを組み込んでいるという。両方向に若者の理解が促進されることは両国にとって非常に有意義なことと語った。
高校生たちの滞在経験はインスタグラムでシェアされている。@cambiexkakehashi
(取材 三島直美)
サイモンフレーザー大学から
リッチモンド市H.J.キャンビー・セカンダリー・スクールから
大阪大学の学生たち