2019年3月14日 第11号

日本の魅力と活気を伝える「歩こうカナダ、語ろうニッポン」の一行と、バンクーバー地域の各界からの参加者約50人が交流するレセプションが3月5日、バンクーバーのハイアットホテルで開催された。

 

(左から)乾杯の音頭を取ったUBC日本研究センター所長イブ・ティベルギエン教授、団員の中條優子さん、酒井彩さん、八田良樹さん、三宅藤九郎さん、団長の石垣友明さん、羽鳥総領事

 

草の根の国際交流事業として

 スティーブ・シュバリエさん(JETプログラムコーディネーター)が進行役を務めたセレモニーの冒頭で羽鳥隆在バンクーバー日本国総領事が挨拶に立った。「歩こうカナダ、語ろうニッポン」は、魅力にあふれ活力のある現在の日本を紹介し、訪問地の人々との活発なコミュニケーションによって両国の相互理解を深めるための草の根の国際交流であると事業の概要を述べた。そして、石垣友明団長の「自分の役割は団員たちを紹介し、 交流の活発化を促すこと」という言葉に続き、団員たちはそれぞれの専門分野で各地で紹介してきた「日本の魅力と今」を手短かに語った。

 

伝えたい日本の魅力、日本の今

 団員一行は米国モンタナ州を訪れた後、当地のブリティッシュ・コロンビア大学でプレゼンテーションを実施。団員4名の発表内容と参加者の反応はどのようなものだったのか。

 団員の一人、中條優子さんは東京で外資系銀行に勤務しており、その経験と視点を生かして日本の企業文化や経済状況にフォーカスを当てた。日本の企業は終身雇用、年功序列といった雇用制度で高度経済成長を生み出し、宅配やコンビニなど細やかなサービス事業により市民の生活利便性を高めてきた。しかし現在の経済状況を鑑みて、これまでのワークスタイルやサービスのあり方などを見直す動きが始まっていることを中條さんは紹介した。このトピックには学生たちからの質問が多く集まり、日本企業への関心の高さが見られたという。

 星の構造を研究する八田良樹さんは、カナダでの「ブライトミッション」、日本での小惑星探査機「はやぶさ2」のミッションという、それぞれの国で進んでいる宇宙科学分野でのホットな話題を紹介。参加者からの質問で八田さんにとって印象的だったのは 「あなたがJAXAのトップだったら、どのようなプロジェクトを進めますか」という問いだった。

 酒井彩さんは教育学を専攻している学生。 日本の学校生活の特徴として「学校給食」を取り上げ、生徒同士が協力し合うこと、「いただきます」「ごちそうさま」と挨拶を通じて食べ物や調理者などに感謝すること、新しい食べ物に挑戦することなどの給食の意義を紹介した。 「給食費の払えない子供はどうするのか」といった質問に対し、酒井さんは「自分自身が教師として現場を経験して給食についてもっと深く語れるようになれれば」と思ったという。

 

日本の伝統芸能も披露

 団員の三宅藤九郎さんは狂言師であり、弟が現在和泉流二十世の宗家、姉が史上初の女性狂言師である。三宅さん自身、これまで海外13カ国で公演を行ったほか、米国の大学で狂言クラスの講師となり講師として招聘され、学生たちの狂言舞台を実施した経験の持ち主。57歳で他界した三宅さんの父(和泉流十九世宗家・九世藤九郎)の「狂言を世界に」という思いを着実に実現している。「日本古来のユーモアを伝えたい」と、この日のレセプションでも声や動作による狂言らしい表現方法を紹介した後、短い狂言の舞い祝言の狂言小舞を披露し、参加者から感激の拍手が送られた。

 レセプションの歓談時間には、参加者と団員たちの会話は切れ目なく続き、会は大いに盛り上がりを見せた。

(取材 平野香利)

 

和泉流十九世三宅藤九郎さんによる祝言の狂言小舞を鑑賞できる貴重な機会となった

 

「歩こうカナダ、語ろうニッポン」を紹介する羽鳥隆在バンクーバー日本国総領事

 

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