2019年2月14日 第7号

歴史の重みを感じさせるシルビアホテルのラウンジに懐かしのジャズナンバーが流れる。Noriko Jazz Bandの2月5日のステージは、艶っぽいボイスにくつろぎ、スイングで心躍るひとときだった。

 

シルビアホテルでは『サマータイム』ほか20数曲を歌唱した

 

 「Norikoさんの歌い方は穏やかで人を魅了しますね。聴き手を喜ばせるコミュニケーションも素敵です」と、この夜のステージを目当てにして訪れた客が語った。情感を多彩に表現する歌声、こなれたダンス、場のグルーブを生み出す巧みな演奏、Noriko Jazz Bandからはプロとしての実力が感じられる。そのうえラウンジの客たちと波長のしっくり合っている理由は、Norikoさんの話でわかった。「ジャズの魅力はその場の雰囲気に応じて自由にアレンジが利くところですね」。そのジャズにのめり込むきっかけは、大好きな振り付け師ボブ・ホッシーにあるという。ダンスは歌とともに、Norikoさんの人生を形作ってきた。

 Noriko Jazz Bandの活動開始は2016年だが、Norikoさん自身は幼少の頃からピアノや歌、モダンダンスを習い、プロのダンサーとして東京の舞台を踏んできている。2005年に渡加後も、医療関係の仕事の傍ら、バンクーバーのナイトクラブで踊りと歌を続けてきた。そのNorikoさんの音楽活動に対する気持ちが、今かつてないほど高まっているのには理由がある。

 2017年にけがで脳振とうを起こしてからしばらくの間、体調だけでなく、感情を保つこともままならなかった。仕事もダンスもできず、気持ちを持ち上げてくれたのは歌うことだけだった。その頃、Norikoさんはドキュメンタリー映画『アライブ・インサイド』のことを思い出す。音楽によってアルツハイマー病の患者にポジティブな反応をもたらしたストーリーだ。5年前に他界した母も若年性のアルツハイマー病だった。「母にももっと音楽に触れさせたらよかったな」。同じ立場にいる人たちに音楽を届けられたら、そして自分自身が生き生きとするためにとNoriko Jazz Bandを立ち上げた。すご腕のプロミュージシャンたちとつながり、カナダジャズ界の重鎮マイルズ・ブラックとの交流も生まれたのは期待を上回る喜びとなっている。

 立ち上げ期には、医療関係のチャリティーイベントへの出演が続いた。中には200人を超す会もあったが、観客からの確かな手応えを感じ、さらに前進する力になった。こうしたコンサートへ出演の度に「次はいつどこで聴けますか?」と聞かれてきたNoriko Jazz Band。次の目標は定期的なコンサートで観客を魅了すること。さらなる目標は東京ブルーノート。そして「脳の病気の予防にも私たちの音楽を役立ててもらえたら」とNorikoさんはシニア向けのコンサートの依頼も積極的に引き受ける意欲を見せている。

norikojazz.com
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(取材 平野香利)

 

母の形見の黒留袖でのステージも好評 

 

Lions Gate Hospital Foundation主催のパーティーにも出演

 

映画007シリーズの曲を歌うジェームズ・ボンド・トリビュート・バンドとしても活動を開始している

 

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