2019年1月1日 新年号

—バンクーバーおよび日系コミュニティーの印象

 「冬は雨が多いと聞いてましたが、着任後、意外と晴れている日が多かったですね。バンクーバーはきれいな街で、いいところに来たなと思っています。前にもお話したことがありますが、バンクーバーの人たちは親切で温かいなとも思いました。

 

羽鳥隆在バンクーバー日本国総領事

 

 日系コミュニティーといっても、日本から移住してきて永住権を取られた方や、駐在員としてビジネスに携わっている方、第2次世界大戦の前から移民してきた方たち、そしてその子孫である2世、3世の方たちなど、さまざまです。同じ日系といっても、それぞれバックグラウンドが違うので、日本との関わりについても感じ方が少し違うでしょう。そういったお話をこれから伺って理解を深めていきたいと思っています。

 着任して間もない11月13日、日系諸団体の方たちに私たち夫婦の歓迎会をしていただき、そこで日系の団体の代表者の方とお話する機会がありました。また、11月11日のリメンバランスデーには、日系カナダ人の戦没者の追悼式に出席し、そこでもいろいろなお話を伺いました。アメリカの日系人とは別の意味でカナダの日系人はご苦労があったと聞いています。例えば、戦時中は強制収容され、戦後もなかなかバンクーバーの方へは戻ってこられなかった。アメリカでは日系人でも軍隊に入れたのとは違って、カナダでは、当初、軍隊に入れないというような政策もあったと聞いています」

—これまでの活動について

 「バンクーバーにはいろいろな国の総領事が30人ほど駐在しておられます。皆さんを個別に訪問し、総領事としての先輩たちからいろいろな話を聞いているところです。

 JETROカナダのトロント事務所が日加修好90周年記念イベントとして、バンクーバーで開催した『イノベーション・パートナーシップ・フォーラム』に出席したり、日加協会主催の講演会にも出席しました。総領事館としてはこうしたことを通して、これからも日加間のビジネス関係の拡大に貢献していきたいと考えています。

 学術的な面ですと、拓殖大学の学生がランガラカレッジで英語研修をするプログラムが40周年を迎えたとのことで、その式典に出席したり、ブリティッシュ・コロンビア大学と立命館大学の研究分野における協力の署名式に出席しました。

 そして今は、BC州政府の閣僚や自治体の市長などとの懇談を申し込んでいるところです」

—カナダにおけるマリファナの合法化について

 「カナダの政府の判断ですので、それが適切かどうかといったことは我々が申し上げるようなことはないのですが。日本の法律ではマリファナなど薬物を所持することは一切禁止されています。日本国外であってもマリファナの所持等に関しては、日本の法律が適用されます。なにより、マリファナに関係する犯罪やトラブルなどに巻き込まれたりする可能性があるという点において、注意を促したいと思っています。総領事館でも注意喚起のお知らせを出しています。また、日本からの旅行者の皆さんには、カナダ滞在を安全に楽しんでいただきたいので、マリファナに手を出さないで下さいという注意喚起も続けていきたいと思います」

—2019年の展望

 「(BC州やユーコン準州に)滞在している日本の方に対し、何かあった時にサポートをするということが総領事館の基本的な在り方です。また、日本企業と外国企業間の新しいビジネスチャンスがあればサポートしていきます。たとえば、何かしらの規制があるということであれば、カナダ連邦政府や州政府に働きかけて規制緩和を促すなどです。日加間が経済的にもさらに友好関係を深めていくように尽力したいです。こうした考えを軸において、それに対して何ができるかということから考えていきたいと思っています。

 日系コミュニティーに関していうと、先にもお話したように、日本人、日系人とは背景が違うので、それぞれとの関わり方も全く同じ対応でいいというわけではないと思います。皆さんとお話をしていく中で、日加間の交流を盛んにするにはどういうことをしていったらいいかなど、いろいろと考えていきたいです。

 2019年は日本でG20サミットが開催されます。天皇陛下のご退位と皇太子殿下のご即位もありますので、外国からの来賓も多く迎えることとなります。そうした行事の中で、カナダやバンクーバーと日本との交流に役立てることがあれば取り組みたいと思います。

 また、日本の魅力をカナダの人たちに紹介し、理解していただくための文化的な行事などを、総領事館独自で開催することもあるでしょうし、コミュニティーの団体などが行う行事に参加するといったこともやっていきたいと思います。日本の地方自治体や民間企業で、それぞれの活動をBC州においてアピールされたいということであれば、そのお手伝いもしていきたいという考えです」

—総領事館設立130周年の記念イベントや企画について

 「日本とカナダの関係について、カナダの皆さんにもっと関心を持ってもらえるような企画ができればいいと思います。記念イベントをすることありきではなく、日本とBC州の友好関係が130年という長きにわたって継続しているというところに興味を持っていただけるような企画を立てたいと思います。2018年は日本とカナダの修好90周年でしたが、バンクーバーの総領事館の歴史はそれよりも古いということになりますね。

 カナダから日本へは農作物、木材、資源などの輸出が主ですが、最近では先端のIT技術などといった潜在的なビジネスチャンスを持った分野も出てきています。(2018年11月に)バンクーバーに富士通がAIの新会社を設立しました。これは、世界的に展開する上での司令塔のような会社ということです。こうしたIT分野も含めて、可能性を秘めたビジネスチャンスがいくつかあるのではないかと考えています。これからはそういった分野に関しても、連邦政府や州政府から支援を引き出すなどのサポートをしていけたらと思います」

 羽鳥総領事は2018年11月8日付で在バンクーバー日本国総領事に就任した。このインタビューは11月末に行われており、着任から約3週間経過したところで、この先、日系コミュニティー各団体の代表者や、BC州政府閣僚や各自治体の長などとの懇談を順次行っていくということだった。今後の活動に先立って、まずは「いろいろな人とお会いして、BC州やバンクーバーのこと、日加関係、日本人や日系人の皆さんの活動などについて勉強することが先決だと思っています」と話した。

(取材 大島多紀子)

 

 

天皇誕生日祝賀レセプションの際、スピーチを行う羽鳥隆総領事。右側はデービッド・ビング在ビクトリア日本国名誉総領事(写真 斉藤光一)

 

天皇誕生日祝賀レセプションで、出席者と言葉を交わす羽鳥隆総領事と、ユジュ夫人(写真 斉藤光一)

 

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