日系の野球少年、沖縄へ
計画したのはコーディ君の父で、ダンバー・リトルリーグ、ストングズ・ミーツのマネージャーを努めるサミー高橋さん。「昨年の夏、バンクーバー内の複数チームから選抜されたメンバーで、アメリカのサンディエゴへ遠征試合に行ってきました。子供たちはアメリカのチームから大きな刺激を受けましたので、さらに日本での練習体験をと考えました。いずれは日本とカナダのチームで交流試合をというビジョンもあります」。高橋さんは日本のあちこちにコンタクトし、カナダの少年たちが中学生の野球チームの練習に参加したい旨を伝えた。返事が来たのは2カ所から。その一つが沖縄の月刊誌『おきなわ野球大好き』だった。同誌を通じて浦添ボーイズの練習に参加することが現実となった。


沖縄のボーイズリーグチームの練習に参加
学校の春休みが早く始まったショー君が一足先に那覇イーストボーイズ(代表・宮豊(みや・ゆたか)さん)の練習に参加。その後、コーディ君が加わって二人は浦添ボーイズ(代表・与那嶺尊さん、監督・親富祖弘也さん)の好意を受けて練習に合流することになった。浦添ボーイズは、屋内施設の浦添市民球場とピッチングマシーンを供えた屋外練習場の二つの練習場を持つ。浦添市民球場は、ヤクルトスワローズが練習に使うというだけあって、施設の充実度はピカ一だ。そこに集まる浦添ボーイズ36人。練習開始は5時だが、いつも15分前には到着する真面目な子供たちだ。練習は走りこみから。「さあ行こう!」と毎回声をかけつつノックをするのはボランティアコーチの金城さん。荒い言葉は使わず、敬語で接しているのが高橋さんにとって印象的だった。
バッティングマシーンを使う際は、担当の少年がボールを入れる都度「一つ、 二つ…」と数えあげる。担当になったコーディ君の自信なげな様子を見て「英語で言っていいぞ」とコーチ。ほっとして「ワン、トゥ、スリー」と数え始めたコーディ君の隣で、もう一つの機械にボールを入れていた少年も英語で数え始めた。「…ファイブ、シックス、ナイン!!」一同が笑いに包まれた。マシーンから繰り出される110キロの速球で日頃練習している彼ら。体験期間中に行われた他チームとの練習試合の際、浦添ボーイズメンバーの三振は2試合でわずか2回。必ずというほど相手の球にバットを当てていくのだ。ワンバウンドの球を打つ練習も打撃力につながることもわかった。


年上のメンバーたちの中での練習を終えて
慣れない環境での練習に挑んだショー君とコーディ君。チームメンバーたちに可愛がられ、コーチからの個別指導も受けられて、緊張しつつも充実した日々となった。彼らの姿を見て、浦添ボーイズキャプテンで中学3年の添盛空(そえもり・そら)君と、天久泰成(あめく・やすなり)君は「(二人は)とてもテキパキ動いている。野球に対する姿勢がとてもよい」とコメントを聞かせてくれた。
帰国後、バンクーバーで試合に出てショートを守ったコーディ君は、一塁への送球がピシッと決まり、周囲から「さすが日本で特訓してきた成果だね」とコメントされた。「日本の練習方法のいいところを学べたらという気持ちで臨み、5日間と短い期間ながら大いに刺激を受けました。今度は沖縄からバンクーバーへ中学生を二人招きたいと思っています」と語る高橋さんから、少年野球を通じた日加親善交流の一歩を踏み出した充実感が伝わってきた。


(取材 平野香利)

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。