先人たちの偉業を後世に残す記念として

ギャリー・ポイント・パークには、明治期にスティーブストンの日本人コミュニティ創設に大きな役割を果たした、和歌山県三尾村(現美浜町三尾)出身の工野儀兵衛の功績を称える「工野庭園」が工野氏渡加100周年記念事業として1988年にBC州和歌山県人会によって造園され、翌年リッチモンド市に寄贈された。
また殺風景だった同庭園のまわりに桜を植えようという声が会員の間からあがり、今回の表彰の対象となった、毎年秋に桜を植樹するプロジェクトが同県人会創立35周年と新世紀記念として2000年から始まった。いつも海風にさらされる同公園の環境に耐えられるよう、品種には寒さに強いアケボノが選ばれた。
プロジェクトの最後となった今年の2月には公園北東部に50本が植えられ、プロジェクト開始から合計で255本となった。庭園の周りだけではなく、公園全体の景色をより美しいものに変えたこのアケボノ桜の木は、リッチモンド市に寄贈された。

 

スティーブストンの歴史とともに歩み、貢献を続けてきたBC州和歌山県人会
リッチモンド市長代理として表彰式で挨拶した市議会議員ビル・マクナルティ氏は、和歌山県からの移住者が同市の開拓に非常に大きな役割を果たしたことに触れるとともに、現在のBC州和歌山県人会がコミュニティの一員として、今回の植樹プロジェクトのように、常に貢献していることに感謝の意を述べた。そして参加者が見守る中、表彰状が田中氏に手渡された。
このあと、スティーブストンコミュニティセンター内の日系文化館にて公園課主催の昼食会が催された。挨拶に立ったジム田中氏は、ギャリー・ポイント・パーク内の桜の植樹プロジェクトが、こうやって成功裏に終了することができたのはリッチモンド市、特に公園管理課からの手厚い協力と支援、そして県人会会員はじめコミュニティの人々からの支援金があったからこそと、感謝の意を述べた。この意義ある「桜庭園」の255本の桜の木は、和歌山県出身の開拓先駆者、そして日系人の多大な貢献と功績の証と誇りある和歌山県人会の足跡を残せる遺産でもあり、毎年、桜の満開の時期にこの公園を訪れる人々に楽しまれ、喜んでいただければ幸いですと述べた。
また伊藤総領事も、桜をこよなく愛する日本人の文化伝統を、スティーブストンの人々と分かち合う機会にもなるこのプロジェクトの成功を記念する今日の式典に参加できて光栄だと挨拶。最後に和田会長が、この13年間、植樹に関わってきた公園管理課職員及び参加者に感謝の意を述べ、食事となった。
田中氏によれば、スティーブストンでの桜の植樹プロジェクトを引き続き行っていく構想があるとのこと。100年を超える日系移民とスティーブストンの歴史。その脈々と流れる有形無形の足跡を、コミュニティが協力して次世代に残していかなければと、青空に映える満開の桜を見ながら思った。


(取材 平野直樹)

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。