2018年11月15日 第46号

 今月5日、平昌冬季五輪カーリング日本代表の平田洸介選手(株式会社アイエンター)が、バンクーバー日本語学校を訪れ、「夢のかなえかた」と題して講演した。

 

平田洸介選手(株式会社アイエンター)

 

 平田選手はSC軽井沢クラブを離れ、今年7月、臼井慎吾選手(JAきたみらい)、 十鳥聡太選手(北見工業大学)、三浦善也選手(北見信用金庫)と共に、出身地北海道北見市を拠点とするカーリングクラブ「KiT CURLING CLUB」を立ち上げた。今回の渡加は、2022年北京冬季五輪出場へ向け始動した新チームでの初の海外遠征だ。

 平田選手は12歳の時父親の影響でカーリングを始めたが、最初の9年間は成績が振わなかった。6年前北見工業大学在学中に恩師に出会い、夢について具体的な目標設定を行ったことが、平昌冬季五輪出場の鍵となった。自身が役立てた夢を叶える目標設定の方法をバンクーバーの子供たちにも体験してもらおうと、平田選手はワークシートを用意して講演に臨んだ。

 子供向けに作られたワークシートでは、まず「じんせいのもくひょう」「学校でのもくひょう」の2つの大きな目標を決め、それぞれについて「夢のようなもくひょう」「こうはんのもくひょう」「まんなかのもくひょう」「ぜんはんのもくひょう」というように達成する過程を考える工夫がされていた。

 平田選手は、目標設定とは「やりたいこと、やるべきことを確認すること」で、 それには「困ったことがあっても諦めない」「夢を達成する日付を決める」ことが大切と説明した。また、「今何をすべきか期限を決めて実行すると達成する確率が高くなる」と目標設定作りのルールなどアドバイスした。

 ワークシートに沿って目標設定を試みたニブリンク・ノア君(17)は、「スポーツ関係の通訳になる目標のために東京五輪でボランティアをしてみたい」と発表した。チームで一番若手の十鳥選手も「2年後の大学4年時、ユニバーシアードのカーリング予選で優勝して日本代表になりたい」と目標を定めていた。

 会場では平田選手が実際に使用しているカーリングシューズやブラシを手にとって見ることができた。フォードケルシー・ジェームズ君(10)の、「スウィーピングにはどんな効果があるの?」という質問に、平田選手は、「摩擦を利用して石のカーブを調節したり、距離を伸ばしたりできるよ」とわかりやすく答えていた。

 KiT CURLING CLUBは、カナダ遠征中、カムループスで臨んだ試合でベスト4という好成績を残した。4人のうち2人はカナダでのプレーは初めて。対戦相手の層の厚さはもちろん、それぞれのリンクで異なる製氷に対応するなど多くを学んだカナダ遠征だった。

 チームが本拠地を置く北海道北見市は、平昌冬季五輪カーリング女子銅メダルのロコ・ソラーレなど日本代表選手を輩出するカーリングの町として知られる。平田選手が北見市で新チームをつくるため、所属先の株式会社アイエンターはサテライトオフィスの開設など体制を整えた。所属の違う4人だが、今回3週間の遠征でもそれぞれの所属先が支援している。 講演では、タマネギが特産であること、毎年2月には氷点下20度の屋外で焼肉を食べるイベントがあることなど、北見市の紹介もされた。平田選手はカナダ遠征でも現地の方の協力を受けたと、周囲のサポートに感謝していた。

 チーム名“KiT”には「きっとオリンピックで金メダル!」という気持ちが込められている。後援したJALTA日本語教育振興会の本間真理副会長は、「子供達の夢を叶えるためにとても役立つことを教えていただいた。授業にも生かしたい」と話していた。

(取材 大倉野昌子)

 

左から十鳥選手、バンクーバー日本語学校の北野悠太先生、ニブリンク・ノア君、フォードケルシー・ジェームズ君、平田選手

 

左から 三浦善也選手(北見信用金庫)と、十鳥聡太(北見工業大学)選手、臼井慎吾選手(JA きたみらい)、平田選手

 

カーリングブラシとシューズ

 

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