毎日2時間、週末も練習
軽快に始まったカーペンターズのメドレー。前列に座る生徒がフルート、オーボエ、クラリネットを奏でる中、後方から高らかなトランペットが鳴り響き、ティンパニーとシンバルが弾みをつける。すでにノース・バンクーバーの学校やバンクーバー仏教会で演奏し、このコンサートがカナダに来てから6回め。開演前、同校音楽教員の佐藤淳先生が「緊張や時差も取れ、脂が乗っていい感じだと思います」と話していた通り、素晴らしいステージを展開した。
高校から楽器を始めた生徒も多数だそうで、チューバを吹いていた生徒は唇の状態が悪くなり4カ月前にコントラバスに転向したばかり。『白鳥の湖』でソロを吹いた生徒はオーボエを始めて1年10カ月。だが練習量は半端ではない。司会者が「月曜から金曜まで放課後2時間。土・日は6時間練習しているそうです」と紹介すると、客席から驚きの声がどよめいた。

お互いから学ぶこと
「カナダの生徒は素晴らしいとかつまらないとか、ハートをよりストレートに伝えてくれますね。そういうのがパフォーマンスする側にとても刺激になります」と佐藤先生。一方、旭川の生徒が週末も練習しているのはカナダの生徒には信じられないことだが、そこから日本人の勤勉さ、努力する姿が伝わっているのではと話す。「音楽に国境はないと言いますけど、お互いのいいところが一緒になったらもっと素敵な人になれるんじゃないかな。そのために(生徒を)連れてきているんです」
同校では演奏会用に基金を設定し、卒業生の協力も得てこうした遠征が成り立っている。吹奏楽部のキャプテン佐々木麻央さんも「ただの旅行に終わらせず、私たちが体験したことを日本に戻ってみんなに伝えていきたいです」と話す。

溢れるコミュニティー感覚
ノースバンクーバー教育委員会の企画・主催で旭川商業高校が最初に来加したのは1999年。前回の来加は2007年で、2006年にはサザランド高校が旭川を訪れている。
コーディネーターの須藤ゆみさんによると、部員らはカナダに着いた直後にサザランド高校で1100人の生徒を前に演奏し、スタンディング・オベーションにより緊張がほぐれた様子。演奏後には教室に入り授業も体験したという。
この日のコンサートではノースバンクーバー在住の作曲家マイケル・コンウェー・ベイカー氏が加わり自作2曲を部員と一緒にピアノ演奏し、地元のバレエ学校生徒が曲に合わせて踊った。
生徒たちは全員がホームステイを体験。「最初は緊張したみたいだけど、もう今はパパ、ママと呼んでハグしてますよ(笑)」と佐藤先生。ホストファミリーが見守る中、サザランド高校のブラスバンド部も一緒に演奏するなど、コミュニティー・スピリットいっぱいのコンサートは後半の踊りを含めた演奏で盛り上がり、スタンディング・オベーションで幕を閉じた。

(取材 ルイーズ阿久沢)

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