2018年11月1日 第44号
ホワイトキャップスの2018年最終戦は、デイビーズへのはなむけ試合となった。チームは前週ロサンゼルスでのLAフットボールクラブと引き分け、プレーオフ争いから脱落した。 しかし、ホーム最終戦は超満員のファンで埋まった。この日はMFデイビーズ(#67)にとってホワイトキャップスとして最後の試合。チームメートもファンも全力で送りだした。
MFデイビーズ、ホーム最後の試合。10月28日ティンバーズ戦(Photo by Preston Yip)
10月28日 (BCプレース:25348)
バンクーバー・ホワイトキャップスFC 2―1 ポートランド・ティンバーズ
シーズン最終戦はデイビーズの2ゴールで白星つかむ
この日は、ライバルであり今季プレーオフ進出を決めているポートランド・ティンバーズとの試合だった。
序盤からホワイトキャップスが攻める展開で28分、DFナーウィンスキー(#28)からパスを受けたMFデイビーズが、そのままドリブルでゴール前まで持ち込みシュート。最終戦を自ら飾るゴールで決めた。
しかし、これだけでは終わらなかった。その3分後、またもMFデイビーズ。相手ディフェンダーのクリアミスから、そのままボールを奪うと体勢を崩しながらもシュート。立て続けに2ゴールを決め、会場は興奮の渦に包まれた。
そして、86分にMFコライン(#54)と交代。17歳のデイビーズが16歳のコラインにバトンを渡した。
試合は後半に1点を返されたものの2-1で勝利。ドイツへ旅立つ自身のサヨナラ試合に自ら祝砲を放った。
67分に会場のファンからスタンディングオベーション
BCプレースの大画面に映し出された時計が66分になる頃から、会場がざわめき始めた。試合は何の変化もなく淡々と続けられている。徐々に会場の拍手が大きくなり、ファンが立ち始めた。
そして、67分に拍手と声援は最高潮に。大画面にはデイビーズの表情が大映しとなった。この日詰めかけた25000人が総立ちし、スタンディングオベーションは約1分間続いた。
これは、デイビーズの背番号67にちなんだ演出。この日は#FarewellPhonezieのテーマで、ファンと思い出をつくるためのさまざまな企画が用意されていた。
17歳デイビーズがドイツへ旅立ち
デイビーズは15歳でホワイトキャップスデビューし、今季で3年目。昨季も先発出場が増えるなど徐々に頭角を現していた。
しかし、その秘めた才能が開花したのは今季。オフに移籍してきたFWカマラ(#23)をキャンプの時から兄のように慕い、コンビネーションを覚えることで、ゴール数も、アシスト数も増えた。
今季のデイビーズは、この日の2ゴールを含め、8ゴール、11アシスト。ゴール数ではFWカマラの14に次いで2番目、アシストではMFレイナ(#29)と並び、間違いなくチームトップクラスの成績を残した。
そんなデイビーズは現在17歳。11月の誕生日で18歳となる。今季、あまり成績が振るわなかったチームの中で、明るいニュースといえばデイビーズの活躍だった。そして今年7月。ビッグニュースが飛び込んできた。
ドイツ・ブンデスリーガの名門バイエルン・ミュンヘンとの契約が成立したのだ。移籍金はMLS史上最高の2200万米ドル。プロデビューが18歳以上という規則により今年のドイツデビューがないデイビーズは、契約時に、今季をホワイトキャップスとして終えることで合意していた。
そして迎えた最終戦。この日が来ることがわかっていた選手、チームスタッフ、ファンは、17歳のホワイトキャップが巣立つのを寂しくも誇らしく思いながら見送る一戦となった。
試合後の会見でのデイビーズは終始笑顔。「15歳でデビューして、ファンはいつもサポートしてくれた。契約が決まって数試合チームを離れた後バンクーバーに戻ってきたときにも、ファンがサポートしてくれた」とファンに感謝。「バンクーバーでの選手生活が終わるのは寂しい。すごくたくさんのことを学んだので」と語りながらも、ドイツでプレーできることを楽しみにしていると笑顔を見せた。
今後はこの日バンクーバーに駆け付けた家族が暮らすエドモントンに帰って家族との時間を過ごした後、チームカナダに合流し、その後ドイツへと向かう予定と語った。
チームメートのMFテイバート(#31)は「チームメートとしてすごく誇りに思う」と笑顔を見せ、試合前にデイビーズが円陣の真ん中でチームメートに何を語ったかと聞かれたが、恥ずかしそうに「正直何を言ったのか全く覚えていない」と笑った。
今季プレーオフを逃したホワイトキャップスは、デイビーズも抜け、監督も交代。今オフは来季に向け再編が迫られることになりそうだ。
(取材 三島直美)
2018年シーズンの成績
34試合 13勝13敗8分、勝ち点47、 西カンファレンス8位