誰にも必ず訪れる最後のとき。それはわかっていても、その準備には、誰もが正面から触れるのを臆するところがあり、残された家族があわてふためく、というのが現実なのではないだろうか。自分らしい最後とするためにも、どんな葬儀にしたいのか、遺産明細、遺言、訃報の文言、知らせたい人の名などを記した「エンディングノート」を準備しておこうという人が増えてきたという。ことに、日本で『エンディングノート』というドキュメンタリー映画がヒット後、その関心はたかまっている。
エンディングノートの重要性、そして、カナダでの葬儀や墓地、墓石についても、まずは情報収集し、備えておくべき、と説く葬儀・墓地コーディネーターの奥山清太さんを招いて隣組シニアライフセミナーが、3月13日、開催された。
■エンディングノートの活用を
結婚式であれば準備期間がとれますが、葬式はたいていの場合、突然で、何より悲しみの感情に打ちひしがれ、冷静には考えられないもの。また、結婚式なら、2度、3度とあるかもしれませんが、葬儀は、人生一度の最後のセレモニーなのです。人生の最後を自分らしく閉じ、また、残された家族を混乱させることのないようにしておくのも愛情のひとつの形ではないでしょうか。
事前準備の第一歩は、自分の身に何かが起きたとき、周囲の人に知っていてほしいことをノート形式でまとめておく、それが、「エンディングノート」です。いま、日本でも話題になっているようですが、ご本人に書き残していてほしかった事柄は、ざっと数えても100項目を超えます。最近は、誰でも記入しやすいように工夫されたエンディングノートも用意されていますので、ぜひ活用していただきたいものです。
■カナダのお葬式の流れ
ご臨終→ご遺体の搬送→安置→葬儀の打ち合わせ→納棺(防腐、化粧)→通夜(ビューイング)→葬儀→火葬→精進落し(レセプション)
防腐、化粧など納棺はすべて葬儀社が行います。ビューイングは、日本での通夜に相当するものですが、午後6時から10時ぐらいまでの2~4時間、葬儀社のビューイングルームで行うのが一般的です。カナダの葬式は葬儀と告別式の区別がなく、祭壇もなく、焼香もなく、暦(六曜)にもさほどとらわれません。火葬場で骨を拾うこともありません。骨は粉末状にされて、骨壷に密閉されたものが渡されます。日本の精進落しに相当するレセプションは、人生最後のお祝いという考え方で行います。
■お墓・墓石の種類
お墓のタイプには大別して「土地型」「壁型」「ガーデン納骨」の3タイプが一般的です。「土地型」は、一定区画の土地をプライベートに占有したプライベートエステートがあり、お棺の場合4人分、骨壷の場合8人分まで納めることができます。また、芝生上の墓地、「芝型クリプト」タイプにはお棺の場合は2人、骨壷の場合は4人分まで納めることができます。墓石は直立型と平面型があります。そのデザインはさまざまに好みによってオーダーできます。なお、カナダでは「○○家の墓」という概念は薄く、夫婦単位、もしくは個人名を刻むのが一般的です。
「壁型」は、壁面に骨壷を納めるもの。日本の納骨堂と同じ考え方のもので、屋内タイプや屋外タイプなどがありますが、そのデザインも御影石のものからガラスのものと多彩です。
「ガーデン納骨」は、近年、日本でも注目浴びている樹木葬に近いもので、花に囲まれた指定のガーデンの中に納骨できるタイプです。
■備えあれば憂いなし
人は万一に備えてさまざまな保険に入りますが、「必ず来る」自分の最後についての備えは案外おろそかなものです。残された家族の悲しみや戸惑いを少しでも和らげてあげるためにも備えをしっかりしておきましょう。ご自身が元気なうちに、冷静な判断のできるうちに手当てをしておきましょう。例えば、お墓と葬儀費用は、年々値上がり傾向にあります。事前準備をすることにより費用の凍結が可能な上、さまざまな購入ローンや葬儀保険も葬儀社は提供しています。そうした現実を直視して、備えあれば憂いなし、です。
*3月13日の隣組シニアライフセミナーの概要をまとめました。
(取材 笹川 守)
*隣組では、毎月第2火曜日のセミナーで実際にエンディングノートの作成を行っていく予定。(詳細はコミュニティカレンダーを参照)